板で塞がれた家
話の舞台は、山に囲まれた田舎町である。語り手の少年は、同年代のA、B、Cと、姉妹のD、Eを合わせた六人でよく遊んでいた。大人たちは町外れの古い家を避け、子どもが近づくと厳しく叱った。理由を尋ねても教えてくれない。その秘密めいた扱いから、六人は家を『パンドラ』と呼ぶようになった。
夏休みのある日、好奇心に負けた子どもたちは家へ向かう。玄関も窓も塞がれていたが、裏へ回ると板の外れた窓が見つかった。中は空き家というより、最初から人を住まわせるつもりのない建物に見えた。広い部屋には家具がなく、壁際には鏡があり、その前へ髪を巻いた細長い棒が立てられていた。

語りの移り変わり
- 2009年2月ごろ怪談投稿サイト『ホラーテラー』に、六人の子どもが空き家へ入る体験談が掲載される。
- 2010年3月ごろ少女を選ぶ儀式と家の由来を記した後半部分が掲載される。
- 2011年12月2ちゃんねるへの転載を通じ、前後をつないだ長編怪談として広く読まれる。
三階の箪笥
同じような鏡と棒は二階にもあった。六人はさらに階段を上がり、三階で古い箪笥を見つける。引き出しには、切った爪や抜けた歯、束ねた髪が分けて収められていた。そばにあった紙には『禁后』と読める二文字が記されていた。気味悪がる仲間をよそに、Dだけは引き出しの中を確かめ続けた。
家を出てから、Dは口数が減った。やがて自分の髪を噛み、周囲の声に反応しなくなる。家族はDを連れて町を離れ、残された子どもたちも『パンドラ』の話を禁じられた。何年か後、語り手の母親のもとへDの家族から手紙が届く。そこには、あの家へ入った日のことを今も忘れていないという趣旨の言葉があった。

あとから加わった土地の話
現在まとめて読まれる『パンドラ』には、家へ入った体験の後に、土地の古老から聞いたという由来が続く。昔、この土地では一人の少女を選び、十歳で爪、十三歳で歯、十六歳で髪を納める儀式が行われた。少女の本名は家族以外に伏せられ、鏡の前で何年も準備を重ねたという。
ただし、この後半は前半と同時に出た一続きの投稿ではない。調査記事によれば、子ども時代の体験を一人称で語る部分は2009年2月ごろ、儀式の来歴を伝える部分は2010年3月ごろに掲載され、書き手が同じだったかも確認できない。後の転載では両方が連結され、一篇の長い怪談として読まれるようになった。

『禁后』という題名
話の中では、『禁后』の読みを知る人物はいない。転載サイトでは『きんご』『きんこう』などの読みが添えられ、家そのものを指す名として使われることもある。一方、『パンドラ』は子どもたちが勝手につけた呼び名で、土地に昔から伝わる固有名ではない。
二つの題名は、開けてはいけない家と、開けてしまった箪笥を結びつけた。掲載元が閉鎖された後も、話は掲示板へ転載され、朗読動画や怪談まとめへ移っていった。その間に少女のその後や儀式の目的を補う版が生まれ、2009年の前半にはなかった場面も一続きの話として語られている。





