映画のロケ地を探して
中山たちは大学の卒業制作に使う場所を探していた。舗装されていない山道を進むうち、車は見覚えのない高原へ出た。建物の並びから牧場だと思ったものの、柵の中に家畜はいない。牛舎らしい棟にも飼料や糞の臭いがなく、水飲み場や放牧の設備も見当たらなかった。
母屋らしい建物へ入ると、外観に比べて内部の造りはひどくちぐはぐだった。窓の位置と部屋が合わず、階段の先が壁で塞がれている。二階には畳を敷き詰めた大部屋があり、壁には数を数えたような印が残っていた。人を住まわせる家にも、牛を育てる施設にも見えなかった。

語りの移り変わり
- 1982年夏中山市朗らが自主映画のロケ地探しで、兵庫県の山中にある無人の施設へ迷い込む。
- 1988年5月中山と北野誠らが施設を再訪する。
- 1999年6月『新耳袋 第四夜』に体験記が収録される。
- 2023年コミック版『怪談狩り 山の牧場』が刊行される。
空のサイロと赤い屋根
一行は敷地を歩き、サイロや作業小屋を調べた。どの建物も使われている様子が薄いのに、一部は妙に新しい。人の声は聞こえず、管理者を呼んでも返事がなかった。撮影場所には向かないと判断し、学生たちは山を下りた。
この時、超常的なものが現れたわけではない。中山自身も、幽霊やUFO、宇宙人を見た話ではないと繰り返している。残ったのは、誰が何のために建てたのか分からない施設と、普通の牧場として説明しにくい間取りだった。

六年後の再訪
1988年5月、中山は北野誠らと現地を再訪した。学生時代の記憶を頼りに山道を探し、同じ建物へたどり着く。最初の訪問後に聞き集めた情報と現場の様子を照らし合わせたが、施設の目的を確定できる資料や管理者は見つからなかった。
再訪した人の顔ぶれや、建物の変化は後の語りに加わった。番組や取材で場所を探す動きも続いたが、所在地は公表されていない。私有地への侵入を避けるためでもあり、現在ネット上で示される座標が同じ場所だという保証はない。

『新耳袋』に収められた記録
1999年6月、木原浩勝と中山市朗の『新耳袋 第四夜』に体験が収録された。短い怪談が並ぶシリーズの中でも、山の施設を何度も訪ね、関係者の話を集める長い記録となった。題名の『山の牧場』もこの本を通じて定着する。
その後、中山は『怪談狩り 禍々しい家』などで新たに得た証言を書き足した。2023年にはコミック版『怪談狩り 山の牧場』も刊行されている。最初の体験だけで終わらず、再訪のたびに建物や周囲の情報が積み重なったため、版によって語られる範囲が異なる。





