現代怪異資料館MODERN KAIKI ARCHIVE
奇怪千万現代怪異資料館山の牧場
FILE 30 / 雑誌・ネット

山の牧場

やまのぼくじょう

山中に残る用途不明の建物群

1982年の夏、大学生だった中山市朗は、仲間と自主映画を撮るため兵庫県の山へ入った。ロケ地を探す途中で道に迷い、山頂近くの開けた場所へ出る。そこには牛舎のような建物が並んでいたが、牛の姿も、人が暮らした跡もなかった。牧場なら当然あるはずのものが、ひとつずつ欠けていた。

雲の低い高原で道が窓のないコンクリート建物へ途切れる山の牧場
雲の低い高原で道が窓のないコンクリート建物へ途切れる山の牧場

映画のロケ地を探して

中山たちは大学の卒業制作に使う場所を探していた。舗装されていない山道を進むうち、車は見覚えのない高原へ出た。建物の並びから牧場だと思ったものの、柵の中に家畜はいない。牛舎らしい棟にも飼料や糞の臭いがなく、水飲み場や放牧の設備も見当たらなかった。

母屋らしい建物へ入ると、外観に比べて内部の造りはひどくちぐはぐだった。窓の位置と部屋が合わず、階段の先が壁で塞がれている。二階には畳を敷き詰めた大部屋があり、壁には数を数えたような印が残っていた。人を住まわせる家にも、牛を育てる施設にも見えなかった。

山霧の中に窓のない畜舎と内側を向く柵が並び、用途不明の塔だけが傾く山の牧場の場面
山霧の中に窓のない畜舎と内側を向く柵が並び、用途不明の塔だけが傾く山の牧場の場面

語りの移り変わり

  1. 1982年夏中山市朗らが自主映画のロケ地探しで、兵庫県の山中にある無人の施設へ迷い込む。
  2. 1988年5月中山と北野誠らが施設を再訪する。
  3. 1999年6月『新耳袋 第四夜』に体験記が収録される。
  4. 2023年コミック版『怪談狩り 山の牧場』が刊行される。

空のサイロと赤い屋根

一行は敷地を歩き、サイロや作業小屋を調べた。どの建物も使われている様子が薄いのに、一部は妙に新しい。人の声は聞こえず、管理者を呼んでも返事がなかった。撮影場所には向かないと判断し、学生たちは山を下りた。

この時、超常的なものが現れたわけではない。中山自身も、幽霊やUFO、宇宙人を見た話ではないと繰り返している。残ったのは、誰が何のために建てたのか分からない施設と、普通の牧場として説明しにくい間取りだった。

山頂へ迷い込んだ映画撮影の学生たちが、牛のいない牛舎と不自然な建物群から成る山の牧場を見る
山頂へ迷い込んだ映画撮影の学生たちが、牛のいない牛舎と不自然な建物群から成る山の牧場を見る

六年後の再訪

1988年5月、中山は北野誠らと現地を再訪した。学生時代の記憶を頼りに山道を探し、同じ建物へたどり着く。最初の訪問後に聞き集めた情報と現場の様子を照らし合わせたが、施設の目的を確定できる資料や管理者は見つからなかった。

再訪した人の顔ぶれや、建物の変化は後の語りに加わった。番組や取材で場所を探す動きも続いたが、所在地は公表されていない。私有地への侵入を避けるためでもあり、現在ネット上で示される座標が同じ場所だという保証はない。

学生たちが、使用跡のない牛舎、逆さに転がるトラクター、半球状にへこんだ屋根を見て回る
学生たちが、使用跡のない牛舎、逆さに転がるトラクター、半球状にへこんだ屋根を見て回る

『新耳袋』に収められた記録

1999年6月、木原浩勝と中山市朗の『新耳袋 第四夜』に体験が収録された。短い怪談が並ぶシリーズの中でも、山の施設を何度も訪ね、関係者の話を集める長い記録となった。題名の『山の牧場』もこの本を通じて定着する。

その後、中山は『怪談狩り 禍々しい家』などで新たに得た証言を書き足した。2023年にはコミック版『怪談狩り 山の牧場』も刊行されている。最初の体験だけで終わらず、再訪のたびに建物や周囲の情報が積み重なったため、版によって語られる範囲が異なる。

階段のない建物の二階へ斜面から入ると、和室の壁一面に札が貼られ、多数の人形が転がっている
階段のない建物の二階へ斜面から入ると、和室の壁一面に札が貼られ、多数の人形が転がっている
学生たちが山を下りた後、同じ道を探しても牧場へ続く分岐を見つけられず立ち尽くす
学生たちが山を下りた後、同じ道を探しても牧場へ続く分岐を見つけられず立ち尽くす
SOURCES

主な参考資料