話を聞いた夜から期限が始まる
カシマさんの話は、聞いただけで終わりません。三日以内に本人が現れる、今夜の夢に出る、夜中の電話で質問される。期限を告げられた聞き手は、自分が次の登場人物になります。
現れる場所は寝室、学校のトイレ、帰り道です。下半身のない女が腕だけで進む版では、逃げても高速で追いつかれます。電話の版では姿を見せず、切っても繰り返しかかってきます。質問に答えられなければ、カシマさんと同じように手足を奪われるとされました。

語りの移り変わり
- 昭和後期手足を失った者が夜に現れ、身体の在りかを尋ねる噂が学校や地域で語られる。
- 1990年代カシマレイコの名、鉄道事故の由来、テケテケに近い姿が怪談集で結びつく。
- 2004年松山ひろし『カシマさんを追う―呪いの都市伝説』が刊行される。
- 2000年代以降映像作品とネット再話で問答の文句や名前の漢字表記が整理される。
手と脚と名前を答える
よく知られた問答では「私の手はどこ」「私の脚はどこ」「私の名前は何」と順に尋ねられます。手には「手名市」、脚には「足名市」など、音を合わせた答えを返し、最後に「カシマレイコ」と名を呼ぶ。答えの語句や順番は再話ごとに変わります。
名前を「仮死魔霊子」と書き、仮は仮面、死は死体、魔は悪魔のように一字ずつ意味を説明する版もあります。別の話では「カは仮面、シは死人、マは魔物」と唱えれば消えます。漢字の説明が一致しないところも、口頭で聞いた音へ後から字を当てた痕跡として残っています。

鉄道事故、空襲、学校事故の異なる過去
カシマさんの生前を、列車に轢かれて両脚を失った女とする話があります。北海道の踏切、戦時中の空襲、学校でいじめを受けた少女など、場所と時代は一定しません。旧日本軍の傷痍兵が「脚を返せ」と現れる話から変化したとする説もあります。
都市伝説収集家の松山ひろしは、2004年刊『カシマさんを追う』で、手足のない少女、ケロイド状の女性、自殺したバレリーナなど姿の違う例を追っています。国立国会図書館の書誌要約にも、その三つが調査対象として挙げられています。特定の一件から全国の話が始まったと確定できる記録はなく、似た名前と身体欠損の噂が結びつきました。

テケテケと同じ女になる
列車事故で下半身を失い、腕で地面を這って人を追う姿はテケテケに重なります。北海道で起きた事故の犠牲者をカシマレイコと名づける再話もあり、二つの怪談を同じ話として紹介する本やサイトが現れました。
一方、テケテケには話を聞いた三日後の問答がない版が多く、カシマさんは姿を見せず電話だけで来ることもあります。名前、出現場所、質問の有無を比べると、すべての話が最初から一組だったわけではありません。

2004年の追跡調査とその後
『カシマさんを追う』は、噂の異なる姿と名前の由来を一冊で調べた資料です。刊行後、カシマさんは口裂け女と対決する映像作品や怪談集にも登場し、カシマレイコという人名風の呼び方が広く使われました。
ネット上では、質問へ返す文句が一続きの呪文として整理されています。学校で短く聞いた版には、手足の在りかを一度尋ねられるだけのものもありました。長い回答表は後から集めた複数の型を一つにした場合があるため、地域の採録と同じ本文としては扱えません。




