バックミラーに老婆が映る
運転手が最初に気づくのは、道路脇に立つ老婆です。こんな夜中に危ないと思って通り過ぎると、バックミラーの中で老婆が走り始めます。車との距離はすぐ縮まり、後部座席の窓、助手席の窓へ並びました。
顔を横へ向けると、老婆は笑いながら走っています。窓ガラスを叩く版では、車内の若者が声を上げると前へ回り込み、急停車させます。何もせず追い抜くだけの版では、次の出口やトンネルの先で姿が消えました。

語りの移り変わり
- 1980年代から1990年代夜の道路で老婆が車と並走する噂が若者の間で語られる。
- 1996年現代伝説集『走るお婆さん―日本の現代伝説』が白水社から刊行される。
- 1997年ゲーム『デビルサマナー ソウルハッカーズ』に怪異として登場する。
- 現在漫画や映像作品で外見を変えながら、高速で走る老婆の名が残る。
トンネルの壁を四つん這いで進む
二本の脚で走るとは限りません。四つん這いでガードレールの外を進む、トンネルの壁や天井を這う、原付に乗ったまま車を抜く。最高速度も六十キロから百四十キロまで上がり、語る側が車の速度を速くするほど老婆の異常さも増しました。
場所には地元の峠や高速道路の名が入ります。運転手が友人を乗せ、夜のドライブや肝試しへ出かける始まりが多く、同じ道を知る聞き手ならカーブやトンネルを思い浮かべられます。

事故で亡くなった老婆という由来
道路を横断中に車にはねられた老婆が、自分を轢いた車を探している。息子のバイクを追って事故に遭った母親が走り続けている。そうした過去を添える話がありますが、事故の年月や被害者名は土地ごとに変わります。
どの道路にも起源となる一件が確認されているわけではありません。事故死の説明がない版では、老婆は最初から人間離れした速度で走り、追い越した後も運転手を襲いません。車と競争する奇妙な目撃談として笑い話に近く語られることもありました。

『走るお婆さん』に集められた現代伝説
白水社は1996年、池田香代子らの編著で『走るお婆さん―日本の現代伝説』を刊行しました。国立国会図書館の書誌では民俗学の分類に置かれ、当時すでに「走るお婆さん」が現代の噂を代表する題名になっていたことが分かります。
1980年代から1990年代には、自動車で夜の峠や高速道路へ出かける若者の話が雑誌やテレビでも扱われました。人面犬も車と並走する怪異として語られますが、ターボばあちゃんは道路脇にいそうな年老いた歩行者が、エンジンを積んだ車を追い抜くところから始まります。

ゲームと漫画で姿が決まる
1997年発売のゲーム『デビルサマナー ソウルハッカーズ』には、ターボばあちゃんが怪異として登場しました。国立国会図書館の『金子一馬画集VII』の要約にも、カシマレイコと並んで設定原画が収録されたことが記されています。
その後の漫画やアニメでは、サングラス、ランニングウェア、車輪のついた足など作品ごとの姿が作られます。口コミでは服装まで決まっていなかった版も多く、白髪の老婆が窓の外に一瞬現れるだけでした。




