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奇怪千万現代怪異資料館シャドーピープル
FILE 64 / 視界・黒い人影

シャドーピープル

しゃどーぴーぷる

視界の端を走り、振り向くと消える人型の影

廊下の先を誰かが横切った。家族だと思って呼びかけても返事がない。部屋をのぞくと、壁より黒い人影が立っている。輪郭は人間に似ているが、顔も服も見えない。こちらが気づいた瞬間に薄れるものもいれば、戸口から動かず見返すものもいる。英語圏の投稿では、こうした影が『シャドーピープル』と呼ばれている。

夜の住宅の廊下で、視界の端を黒い人型が素早く横切る場面
夜の住宅の廊下で、視界の端を黒い人型が素早く横切る場面

視界の端を走る影

日中の体験では、人影は視界の端に現れることが多い。廊下を走る、階段を上る、木の陰へ隠れる。目を向けると消えるため、顔や手足を確かめられない。夜の体験では、ベッドの脇や部屋の隅に立ち、長く見えることがある。

子どもの背丈の影、煙のように崩れる影、赤い目を持つもの、帽子をかぶった男などが同じ名前で投稿される。壁に落ちる普通の影と違い、光源が変わっても動かない、立体的に見えるというのが体験者の説明だ。

振り向いた人物の前で影が角の向こうへ消え、空の廊下だけが残る場面
振り向いた人物の前で影が角の向こうへ消え、空の廊下だけが残る場面

語りの移り変わり

  1. 2001年4月『Coast to Coast AM』が影の人々を取り上げ、リスナーの体験を集める。
  2. 2001年ハイディ・ホリスがシャドーピープルを扱う著書を刊行する。
  3. 2006年脳への電気刺激で背後の人物感覚を誘発した症例が『Nature』に報告される。
  4. 2010年代以降掲示板、ドキュメンタリー、短編動画で姿の型が共有される。

深夜ラジオに集まった目撃談

2001年4月12日、米国の超常現象ラジオ『Coast to Coast AM』が、影の人々を主題にした放送を行った。同年、ハイディ・ホリスが自らの体験をもとにした本を刊行し、番組の常連ゲストになる。リスナーは電話やメールで似た経験を送り、ばらばらだった黒い人影に同じ名称がついた。

ネット掲示板が広がると、投稿者は他人の絵を見てから自分の影を描けるようになった。帽子の男、赤い目、ベッドを囲む小さな影など、繰り返される型ができる。古くから各地にあった金縛りや家の怪談も、シャドーピープルの一例として紹介され始めた。

明るい壁の前を照明と無関係な黒い人影が歩く場面
明るい壁の前を照明と無関係な黒い人影が歩く場面

眠りと目覚めの間

睡眠麻痺では、意識が戻っても体が動かず、部屋に侵入者がいる感覚や人影の幻覚を伴うことがある。レム睡眠の夢が目覚めた部屋の景色へ重なり、足音や圧迫感まで現れる。ベッドの周りに立つシャドーピープルの報告は、この状態とよく一致する。

起きて歩いているときの一瞬の影には、別の説明が必要になる。人の視野は周辺ほど細部と色が曖昧で、動くものを素早く人や動物に見立てる。車のライト、カーテン、通行人の影が消えた後にも、黒い輪郭だけが記憶へ残ることがある。

寝室の戸口に背の高いシャドーピープルが立ち、眠る人物を見下ろす場面
寝室の戸口に背の高いシャドーピープルが立ち、眠る人物を見下ろす場面

脳が作る隣の人

2006年、スイスの研究チームは、てんかん手術前の検査中に左の側頭頭頂接合部を電気刺激し、患者の背後に人がいる感覚を繰り返し起こした。患者は、見えない人物が自分と同じ姿勢を取り、動きをまねていると訴えた。身体の位置をまとめる脳の働きが乱れると、自己の像を別人の存在として感じる例である。

この実験だけで各地の目撃を一つに説明することはできない。シャドーピープルという箱には、睡眠中の幻覚、一瞬の見間違い、病気や薬物の影響、家の怪談が一緒に入っている。共通するのは、目鼻のない黒い輪郭を人間だと感じた瞬間である。

猫が暗い階段を見上げ、その上段に複数の人型影が並ぶ場面
猫が暗い階段を見上げ、その上段に複数の人型影が並ぶ場面
黒い人影が壁の中へ溶ける直前、長い腕だけが廊下に残る場面
黒い人影が壁の中へ溶ける直前、長い腕だけが廊下に残る場面
SOURCES

主な参考資料