学校の外にいる道化師
1981年の通報では、道化師は一人ではなかった。白塗りの顔、色とりどりの衣装、兎や悪魔の仮面をつけた者が、バンの窓から子どもへ声をかける。菓子や金を見せ、車へ来るよう誘う。子どもが大人を呼びに走ると、車は消えている。
ボストン警察は学校へ注意を出し、保護者は集団登下校を始めた。報道が広がると、似た通報はロードアイランド、ニュージャージー、ペンシルベニア、カンザスへ飛んだ。外見と車の色は変わったが、『道化師が子どもをさらう』という一行だけが共通した。

語りの移り変わり
- 1981年5月ボストン周辺の学校で、道化師が子どもをバンへ誘ったという通報が相次ぐ。
- 1981年春~夏噂が米国各州へ広がるが、中心となる犯人や誘拐事件は確認されない。
- 2016年8月サウスカロライナ州の集合住宅から、森の道化師の通報が始まる。
- 2016年秋SNSと模倣行為で目撃が各国へ広がり、脅迫や武器所持による逮捕も起きる。
逮捕されない誘拐犯
警察は車両番号や現場を調べたが、子どもが実際に連れ去られた事件は確認できなかった。大人の目撃者、写真、放置された衣装も見つからない。子どもの悪ふざけ、見世物や宣伝の衣装、知らない車への不安が、同じ噂へ集まったと考えられた。
民俗学者ローレン・コールマンは、この連鎖を『ファントム・クラウン』と呼んで記録した。犯人が捕まらず、同じ日程で遠い町へ現れる点は、実際の連続誘拐より噂の動きに近い。それでも警察は、子どもの通報を無視せず、学校周辺の警戒を続けた。

2016年、森から手を振る
2016年8月、サウスカロライナ州グリーンビルの集合住宅で、子どもたちが森の中の道化師に金を見せられ、ついて来るよう誘われたと話した。警察が林を捜した後、報道とSNSで話が急速に広がる。全米の学校や道路から目撃が届き、大学が封鎖される騒ぎも起きた。
このときは、噂を知って実際に衣装を着る模倣者が現れた。ナイフを持つ、道路脇で車を追う、脅迫文を投稿するといった行為で逮捕者も出る。確認できない最初の通報と、後から起きた悪ふざけが互いを本物らしくした。

怖い道化師の顔
1981年には、連続殺人犯ジョン・ウェイン・ゲイシーの裁判と有罪判決が大きく報じられていた。彼が慈善行事で道化師に扮していた事実は、子どもを楽しませる衣装と犯罪者を結びつけた。1986年にはスティーヴン・キングの小説『IT』が、子どもを狙う道化師ペニーワイズを描く。
2016年の人々は、映画やネットで怖い道化師の顔をすでに知っていた。暗い森に一人で立つだけで、写真は説明を必要としない。仮面を外せば模倣者でも、次の町へ届く画像の中では、1981年と同じ捕まらない道化師になった。





