子どもを見てこい
最初の電話を少女は悪ふざけだと思う。二度目には男が笑い、三度目には『もう上へ行ったか』と尋ねる。二階は静かで、子どもを起こしたくない。少女は階段を見上げながら電話台へ戻り、警察へ番号を伝える。
警察は通話を追うため、次の電話を切らないよう求める。男の声を聞き続ける数分が過ぎ、回線が切れる。直後にベルが鳴り、警官が叫ぶ。少女が玄関から飛び出した後、二階で子どもたちの遺体が見つかる版もあれば、警察が到着して間一髪で助ける版もある。

語りの移り変わり
- 1960年代初め二階の犯人がベビーシッターへ電話する話が、米国で口伝えされる。
- 1970年代民俗学者が異版を収集し、若者の労働と郊外生活の怪談として記録する。
- 1979年映画『When a Stranger Calls』が逆探知の場面を冒頭へ採用する。
- 2000年代以降リメイク映画やネット再話で、携帯電話と監視技術を加えた版が作られる。
固定電話が二本ある家
携帯電話のない時代、電話は玄関や居間の一か所に固定されていた。大きな家では仕事用と家庭用に二回線を引くことがあり、別の番号から同じ家の電話へかけられた。発信場所は画面に表示されず、警察の逆探知には通話をつないでおく必要があった。
犯人は外から侵入し、二階の電話を使って下の少女へかける。少女は受話器の声を遠くの相手だと思い、子どものいる階へ自分から近づこうとする。電話線が家の外と中を区別してくれるという安心が、最後の一言で崩れる。

1960年代のベビーシッター
この話は1960年代初めまでに、米国の若者の間で『本当にあったこと』として広がった。郊外住宅が増え、十代の少女が近所の子どもを預かる仕事も一般的だった。夜の大きな家に一人で残る状況を、聞き手の多くが経験していた。
1950年にミズーリ州コロンビアで、十三歳のベビーシッター、ジャネット・クリストマンが殺害された未解決事件は、後に起源として紹介されることがある。事件現場には切られた電話線があったが、犯人が二階から電話した記録はない。実事件と都市伝説の筋をそのまま重ねることはできない。

映画の最初の二十分
1979年の映画『夕暮れにベルが鳴る(When a Stranger Calls)』は、ベビーシッターへの電話と逆探知を冒頭に置いた。警察が『子どもたちを見たか』ではなく『家の中からだ』と知らせ、犯人が階段上へ現れる。短い都市伝説が、映画の緊張を作る一場面としてほぼそのまま使われた。
携帯電話の時代には、犯人が家のWi-Fiへ接続している、監視カメラから見ているなどの変更が加わる。それでも多くの再話は固定電話を残す。発信地を知らない少女と、ベルが鳴るたび近づいてくる二階の存在が、もっとも簡潔に怖さを作るからだ。





