滴る音が止まらない
少女は台所の蛇口を閉め、寝室へ戻る。それでも、ぽた、ぽた、と音がする。洗面所も確かめるが水は出ていない。暗い廊下を歩くのが怖くなり、途中で調べるのをやめる。ベッドへ戻って手を下ろすと、犬がいつも通り舐めた。
朝、少女は浴室の扉を開ける。犬はシャワーの棒へ吊られ、床へ血が落ちていた。鏡には血で『HUMANS CAN LICK TOO(人間も舐められる)』と書かれている。ベッドの下をのぞいても、そこには誰もいない。

語りの移り変わり
- 1982年以前犬が手を舐める安心を反転させる話が、英語圏で口伝えされる。
- 1982年2月『The Licked Hand』の初期の印刷例が確認される。
- 1990年代チェーンメールと怪談サイトへ移り、鏡の英文が広く知られる。
- 現在学校、キャンプ、短編動画で、犬と滴る音の細部を変えながら語られる。
誰がどこまで確かめたか
再話によって、少女は地下室の窓だけを閉め忘れる。犬は最初から寝室へ入っていない版もある。視力の弱い老女が主人公になり、床に置いた手を舐めるペットだけを頼りに眠ることもある。
滴る音を聞いて何度も家を歩く版では、犯人は少女のすぐ近くにいながら襲わない。犬の舌のふりをして、手だけに触れる。殺害の瞬間を描かず、少女が安心して眠った時間そのものを怖くする。

1980年代の印刷物
この話は『The Doggy Lick』『Humans Can Lick Too』などの題で語られ、1982年2月の印刷例が確認されている。作者の名を伴わず、学校や合宿で少しずつ形を変えた。1990年代には電子メールやウェブサイトへ転載され、最後の英文だけが大文字で強調された。
一人暮らしの女性、子ども、盲目の老女へ主人公が替わっても、犬は守り手である。家の中の安全を確かめるため、少女は視覚ではなく犬の舌を信じる。犯人はその習慣を知り、言葉を出さずに犬の役を演じる。

読んだ後のベッドの下
キャンプで語るときは、話の途中で聞き手の手を誰かが舐める、床へ水を落とすといった仕掛けを加えられる。文章では、滴る音を短く繰り返し、鏡の一文まで犯人の姿を見せない。
犬を室内で飼わない地域では、猫や家族の手に置き換えた版もある。だが最も残ったのは、ベッドの下に犬がいる家だ。聞いた子どもは、その夜、確かめようと手を下ろす前に床をのぞく。





