獣医からの二度目の電話
女性は犬を預けたまま、血の跡にも気づかず家へ戻る。獣医は喉の異物を取り出し、それが切断された指だと分かる。女性へ電話し、どの部屋も調べず、玄関から出るよう命じる。
警察が家を捜すと、寝室のクローゼットや浴室に男が隠れている。手から血を流し、気を失っている版もある。犬は侵入者に噛みついて指を食いちぎり、主人が帰る前に家を守っていた。苦しんでいた姿が、最後に番犬の働きだったと分かる。

語りの移り変わり
- 1980年代初め犬の喉から侵入者の指が出る話が、米国各地で実話として広がる。
- 1984年ジャン・ハロルド・ブルンヴァンが話を表題にした都市伝説集を刊行する。
- 1980~90年代新聞、テレビ、学校で地名と犬種を替えた異版が語られる。
- 現在番犬が侵入者を退ける怪談として、動画や短編へ再話される。
ラスベガスからニューヨークまで
話が広がった1980年代、舞台は語り手の近くの都市へ移された。離婚後に治安の悪い地区へ越した女性が、父親から護身用に犬をもらう。友人との食事から戻ると犬が倒れている。こうした前置きが加わり、侵入への不安が具体的になった。
指は二本、三本、親指を含むなど一定しない。獣医が人種を見分けたとする差別的な版も流れたが、切断された指だけで人種を断定する筋には根拠がない。犬種もロットワイラーやピットブルへ変わるが、1980年代の代表的な番犬だったドーベルマンの名が題に残った。

『新しい都市伝説』の表題になる
民俗学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンは各地の新聞、手紙、講演先から異版を集め、1984年に『The Choking Doberman and Other “New” Urban Legends』を刊行した。読者は自分の町で起きた実話として送ってきたが、地名と人物を替えた同じ筋が遠く離れた州にもあった。
ブルンヴァンは、忠実な犬が血まみれで戻り、誤解される古い物語との類似も挙げた。ウェールズの名犬ゲレルトの話では、主人が犬を殺した後、犬が子どもを狼から守っていたと知る。現代版では犬は殺されず、獣医が間に合って真相を知らせる。

主人より先に侵入者を見つける
この話では、女性が家へ帰った時点で犯人も犬もすでに傷ついている。襲撃場面を直接描かず、喉の異物から逆にたどる。獣医の電話を受けるまで、女性も聞き手も犬の病気だけを心配している。
防犯カメラや警備会社が一般的になった後も、筋は大きく変わらない。カメラより先に犬が異変を察し、言葉を話せないため、自分の喉に証拠を残す。警察がクローゼットを開けたとき、家の中にいたものがようやく姿を現す。





