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奇怪千万現代怪異資料館死体を運んだ車
FILE 74 / 中古車・消えない臭い

死体を運んだ車

したいをはこんだくるま

破格の高級車には、前の持ち主の死臭が残っていた

中古車店で、ほとんど新車のスポーツカーが相場の半額で売られている。事故歴はなく、エンジンも内装もきれいだ。試乗すると甘く腐ったような臭いがするが、買い手は清掃すれば取れると思う。芳香剤、蒸気洗浄、座席の交換まで試しても、暑い日になると臭いは戻る。前の持ち主は車内で死亡し、数週間見つからなかったのだという。

若い会社員が新聞の中古車広告で、相場より極端に安い黒い高級車を見つける場面
若い会社員が新聞の中古車広告で、相場より極端に安い黒い高級車を見つける場面

安値には理由がある

売り手は臭いを隠さず、『前の持ち主が魚を積んだ』『革に薬品をこぼした』などと説明する。買い手は窓を開けて帰り、翌日から車内を洗う。カーペットを剥がし、空調を分解し、専門業者へ持ち込む。臭いは弱くなっても、雨の日や暑い日に戻る。

修理工が車体番号を調べ、ようやく過去を知る。所有者が密閉したガレージで排気ガス自殺をした。犯罪者が遺体をトランクへ入れて放置した。孤独死した老人が夏の車内で数週間見つからなかった。どの版でも遺体はすでに運び出され、臭いだけが残る。

冬の中古車置場で、買い手が外観の美しい車を試乗し売り手と握手する場面
冬の中古車置場で、買い手が外観の美しい車を試乗し売り手と握手する場面

語りの移り変わり

  1. 20世紀前半安い中古車に死体の臭いが残る話が、自動車の普及とともに米国で語られる。
  2. 1950~80年代各世代の高級車へ車種を替え、友人の買い物として広がる。
  3. 1980年代ジャン・ハロルド・ブルンヴァンらが『Death Car』の異版を都市伝説として紹介する。
  4. 2003年テレビ番組『MythBusters』が死骸を置いた車の清掃実験を放送する。

コルベット、キャデラック、BMW

語り手は、聞き手が欲しがりそうな車を選ぶ。1950~60年代には新型キャデラックやコルベット、後にはポルシェ、BMW、キャンピングカーが登場した。値段は『千ドル』『残ったローンだけ』など、疑いながらも手を出せる額に設定される。

車を見つける人物も、友人の兄、同僚の夫、中古車販売員と近い。実車を示さなくても、『あの人が買った』と伝えれば十分だった。聞き手は、なぜ自分の前にその掘り出し物が回ってこなかったのかまで納得できる。

夏の駐車場で車のドアを開けた持ち主が、戻った強い臭いに顔を背ける場面
夏の駐車場で車のドアを開けた持ち主が、戻った強い臭いに顔を背ける場面

車体へ染み込む臭い

遺体が高温の車内に長くあれば、体液と臭気成分は布、断熱材、通気口へ入り込む。清掃で表面を洗えても、内装を外さなければ臭いが残ることはある。実際に遺体が見つかった車が処分・販売される例も皆無ではない。

ただし伝説の車には、登録番号、販売店、事件記録がつかない。『洗っても絶対に取れない』という部分は、実例ごとの清掃条件を越えて繰り返される。臭いが消えれば安い車を買った成功談になり、怪談が終わってしまう。

整備工場で座席と床材を外して洗浄しても、整備士が異臭の源を探せない場面
整備工場で座席と床材を外して洗浄しても、整備士が異臭の源を探せない場面

実験番組が買った車

テレビ番組『怪しい伝説』は2003年、コルベットの車内へ豚の死骸を置き、夏の密閉状態を再現した。専門業者が清掃しても、内装と部品の損傷は大きく、番組は元通りの販売可能な状態にできなかった。都市伝説と同じ死体を使ったわけではないが、車体の奥まで汚染が残る様子は映像になった。

話の買い手は、臭いを取る費用が車の価値を越えたところで手放す。次の人物がまた安値を見つける版もある。所有者と車種は替わっても、前の死者を知らずにシートへ座る瞬間が繰り返される。

古い新聞記事と車台番号を照合し、前の持ち主が車内で発見された事実を知る場面
古い新聞記事と車台番号を照合し、前の持ち主が車内で発見された事実を知る場面
夕暮れの中古車売場に同じ車がさらに安い札を下げて並び、次の客が近づく場面
夕暮れの中古車売場に同じ車がさらに安い札を下げて並び、次の客が近づく場面
SOURCES

主な参考資料