現代怪異資料館MODERN KAIKI ARCHIVE
奇怪千万現代怪異資料館下水道のワニ
FILE 75 / 都市地下・巨大動物

下水道のワニ

げすいどうのわに

土産の子ワニが暗渠で育ち、マンホールの下を泳ぐ

フロリダ旅行で買った小さなワニを、子どもがニューヨークのアパートへ持ち帰る。大きくなり始めると親は困り、便器へ流してしまう。ワニは下水管で生き延び、鼠とごみを食べて成長する。日光のない地下で皮膚は白く、目は退化し、作業員を襲うほど巨大になる――。話の形は作り物でも、1935年の街路では本当に一匹のワニが下水口から引き上げられた。

1950年代のアパートで、子どもが浴槽の小さなワニを見つめる場面
1950年代のアパートで、子どもが浴槽の小さなワニを見つめる場面

雪かきの途中で見つけた一匹

1935年2月9日、イースト・ハーレムの東123丁目で、十代の少年たちが雪を排水口へ落としていた。暗い穴の中で動くものを見つけ、縄をかけて引き上げる。体長は約八フィート。ワニは弱っていたが暴れ、少年たちはシャベルで殴って殺した。翌日のニューヨーク・タイムズが事件を伝えた。

一匹がどこから来たかは分からない。船から落ちた、近くの川から下水へ入った、飼い主が捨てたという説明が出た。新聞記事は、地下に群れが住んでいるとは書いていない。それでもマンホールから出た大きなワニの写真と記事は、後の話に現実の入口を与えた。

育った幼いワニが便器へ流され、暗い配管の奥へ泳いでいく場面
育った幼いワニが便器へ流され、暗い配管の奥へ泳いでいく場面

語りの移り変わり

  1. 1935年2月9日イースト・ハーレムの下水口から大きなワニが引き上げられる。
  2. 1959年ロバート・デイリーが下水局長から聞いた地下のワニ駆除談を著書へ載せる。
  3. 1980年映画『アリゲーター』が、便器へ流された幼体が地下で巨大化する筋を描く。
  4. 2010~23年クイーンズの排水路やブルックリンの湖で、捨てられたとみられる個体が保護される。

下水局長テディ・メイの話

作家ロバート・デイリーは1959年の『The World Beneath the City』で、元下水局長テディ・メイから聞いた話を紹介した。1930年代、作業員が地下でワニを見たと報告し、メイは最初信じなかった。自分で下りたところ、濁った水に複数のワニがいたため、毒餌や銃で駆除したという。

この回想を裏づける市の駆除記録は示されていない。メイは地下の仕事を面白く語る人物として知られ、話が1935年の一匹と混ざった可能性もある。だが本に載ったことで、下水にワニの群れがいたという説明が広く引用された。

煉瓦造りの下水道で、白い大型ワニが鼠の群れを追って水路を進む場面
煉瓦造りの下水道で、白い大型ワニが鼠の群れを追って水路を進む場面

白い巨大ワニへ育つ

伝説のワニは、暗闇で世代を重ねて色素と視力を失い、白い怪物になる。下水作業員を食べ、地下鉄のトンネルまで歩く。実際のアルビノは遺伝で生まれるため、日光を浴びないだけで皮膚が白く変わるわけではない。

ニューヨークの下水は冬に冷え、汚水の流量も急に変わる。熱帯・亜熱帯のワニが繁殖し、長年巨大化するには厳しい環境である。鼠だけで成長する群れの巣も確認されていない。地下で見つかる一匹と、地下に暮らす種族は別の話になる。

点検作業員が懐中電灯を向け、マンホール直下の水に浮かぶ二つの目を見る場面
点検作業員が懐中電灯を向け、マンホール直下の水に浮かぶ二つの目を見る場面

今も街へ来る捨てワニ

2010年にはクイーンズの道路下で約二フィートのワニが捕獲され、2023年にはブルックリンのプロスペクト・パーク湖から約四フィートの雌が救出された。後者は寒さで衰弱し、飼育個体が捨てられたとみられている。市内でワニが見つかること自体は、昔話だけではない。

ニューヨーク市環境保護局は、2月9日を『Alligator in the Sewer Day』として伝説を紹介した。地下鉄の14丁目駅には、マンホールから人を引き込むワニの彫刻もある。繁殖する白い怪物は見つからなくても、一匹の捨てワニが現れるたび、地下の群れがまた話題になる。

1935年の雪の路上で若者たちが排水口から大きなワニを引き上げる場面
1935年の雪の路上で若者たちが排水口から大きなワニを引き上げる場面
夜のニューヨークで濡れたマンホールが少し持ち上がり、鱗の背が下を横切る場面
夜のニューヨークで濡れたマンホールが少し持ち上がり、鱗の背が下を横切る場面
SOURCES

主な参考資料