雪かきの途中で見つけた一匹
1935年2月9日、イースト・ハーレムの東123丁目で、十代の少年たちが雪を排水口へ落としていた。暗い穴の中で動くものを見つけ、縄をかけて引き上げる。体長は約八フィート。ワニは弱っていたが暴れ、少年たちはシャベルで殴って殺した。翌日のニューヨーク・タイムズが事件を伝えた。
一匹がどこから来たかは分からない。船から落ちた、近くの川から下水へ入った、飼い主が捨てたという説明が出た。新聞記事は、地下に群れが住んでいるとは書いていない。それでもマンホールから出た大きなワニの写真と記事は、後の話に現実の入口を与えた。

語りの移り変わり
- 1935年2月9日イースト・ハーレムの下水口から大きなワニが引き上げられる。
- 1959年ロバート・デイリーが下水局長から聞いた地下のワニ駆除談を著書へ載せる。
- 1980年映画『アリゲーター』が、便器へ流された幼体が地下で巨大化する筋を描く。
- 2010~23年クイーンズの排水路やブルックリンの湖で、捨てられたとみられる個体が保護される。
下水局長テディ・メイの話
作家ロバート・デイリーは1959年の『The World Beneath the City』で、元下水局長テディ・メイから聞いた話を紹介した。1930年代、作業員が地下でワニを見たと報告し、メイは最初信じなかった。自分で下りたところ、濁った水に複数のワニがいたため、毒餌や銃で駆除したという。
この回想を裏づける市の駆除記録は示されていない。メイは地下の仕事を面白く語る人物として知られ、話が1935年の一匹と混ざった可能性もある。だが本に載ったことで、下水にワニの群れがいたという説明が広く引用された。

白い巨大ワニへ育つ
伝説のワニは、暗闇で世代を重ねて色素と視力を失い、白い怪物になる。下水作業員を食べ、地下鉄のトンネルまで歩く。実際のアルビノは遺伝で生まれるため、日光を浴びないだけで皮膚が白く変わるわけではない。
ニューヨークの下水は冬に冷え、汚水の流量も急に変わる。熱帯・亜熱帯のワニが繁殖し、長年巨大化するには厳しい環境である。鼠だけで成長する群れの巣も確認されていない。地下で見つかる一匹と、地下に暮らす種族は別の話になる。

今も街へ来る捨てワニ
2010年にはクイーンズの道路下で約二フィートのワニが捕獲され、2023年にはブルックリンのプロスペクト・パーク湖から約四フィートの雌が救出された。後者は寒さで衰弱し、飼育個体が捨てられたとみられている。市内でワニが見つかること自体は、昔話だけではない。
ニューヨーク市環境保護局は、2月9日を『Alligator in the Sewer Day』として伝説を紹介した。地下鉄の14丁目駅には、マンホールから人を引き込むワニの彫刻もある。繁殖する白い怪物は見つからなくても、一匹の捨てワニが現れるたび、地下の群れがまた話題になる。





