ほどけないビーハイブ
ビーハイブは髪を逆毛にし、頭頂部へ高く積み上げる。1960年代初めに流行すると、形を保つため大量のラッカーを使う女性もいた。伝説の少女は髪へ砂糖水を塗るため、虫を引き寄せるという説明がつく。
頭がかゆくても、少女は鉛筆で髪の上から掻くだけで洗わない。母親や同級生が臭いに気づき、ついに美容室へ連れていく。ピンを外し、固まった髪を切ると、蜘蛛、ゴキブリ、蜂、鼠まで飛び出す。生きている版では髪を失い、死ぬ版では毒が脳へ回っていたとされる。

語りの移り変わり
- 13世紀ごろ髪を飾る女性が蜘蛛に罰せられる話が、説教例話集に記される。
- 1950~60年代高く固める流行の髪型と結びつき、蜘蛛が巣を作る現代伝説が広がる。
- 1970~90年代長髪、ドレッド、編み込みなど新しい髪型へ虫の種類と結末を替えて再話される。
- 現在怪談集や動画で、髪をほどく場面を中心に語られる。
流行の髪型へついて回る話
1950年代にはポニーテール、1960年代にはビーハイブ、後にはドレッドヘアや編み込みへ話が移った。髪型の構造が違っても、『長く洗わず、内部が見えない』という前提が加えられる。新しい流行を理解しない世代が、衛生への不安を語るのに使った。
男性の長髪が広がると、ロック歌手の髪に虫が住む版も現れた。人種や階級と結びつけ、特定の髪型を不潔と決めつける語りもある。実際の手入れ方法を知らずに、外から見えない髪の内側へ恐ろしいものを置いた。

中世の説教にもいた蜘蛛
十三世紀ごろの説教例話集『Speculum Laicorum』には、髪を飾ることに時間をかけ、礼拝へ遅れる女性が登場する。悪魔が蜘蛛の姿で髪に住みつき、聖職者が聖体を示すと消える。外見への虚栄を戒めるための短い話だった。
現代版に悪魔や聖体は出ない。代わりに美容師、医師、毒蜘蛛が結末を担う。宗教上の罰から衛生上の事故へ変わっても、髪を飾りすぎた女性が頭の中から罰を受ける筋は続いた。

蜘蛛が選ぶ場所
蜘蛛は静かで餌となる虫がいる隙間へ巣を作る。人が毎日動かし、体温があり、振動の多い頭髪は、長く子育てをする場所に向かない。髪へ一匹が一時的に紛れ込むことと、巣を作って卵を孵すことは違う。
話の中では、髪型が大きいほど内部を確かめにくくなる。聞き手は少女の頭痛が強くなるたび、髪の中で何匹に増えたかを想像する。最後に髪をほどくまで、外から見えるのは流行通りに整った形だけである。





