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奇怪千万現代怪異資料館盗まれた腎臓
FILE 79 / 旅行・臓器盗難

盗まれた腎臓

ぬすまれたじんぞう

ホテルで目覚めると氷風呂の中で、背中に縫合痕があった

出張中の男性がホテルのバーで女性に声をかけられ、酒を飲む。次の記憶は、別室の浴槽だった。体は氷水に浸かり、脇腹には縫い合わせた傷がある。壁には『動くな。911へ電話しろ』という紙が貼られている。救急隊員は電話で、ゆっくり背中を触るよう指示する。腎臓の位置に傷があると答えると、『また一人やられた』と言う。臓器売買組織が腎臓を摘出したというのだ。

出張先の薄暗いホテルバーで、一人の会社員が見知らぬ相手から飲み物を受け取る場面
出張先の薄暗いホテルバーで、一人の会社員が見知らぬ相手から飲み物を受け取る場面

氷の中で目を覚ます

被害者はビジネスマン、大学生、観光客へ替わる。ニューオーリンズ、ラスベガス、リオデジャネイロなど、夜遊びのできる旅行先が選ばれる。魅力的な相手から飲み物を受け取り、意識を失うまでが共通する。

浴槽のそばには携帯電話と救急番号が置かれ、犯人は被害者を死なせないよう手配している。病院で検査すると、片方の腎臓だけがきれいに摘出されている。闇市場で売るには生きた状態が必要だった、と説明される。

飲みかけのグラスを前に視界が歪み、会社員がテーブルへ倒れかける場面
飲みかけのグラスを前に視界が歪み、会社員がテーブルへ倒れかける場面

語りの移り変わり

  1. 1991年旅行者の腎臓が盗まれる話が新聞、テレビ、民俗学者の記録に現れる。
  2. 1993年映画『The Harvest』がメキシコで腎臓を盗まれる筋を使う。
  3. 1997~98年公式警告を装った電子メールが企業と大学のネットワークで広く転送される。
  4. 2000年代以降SNSや動画で地名を替え、海外旅行の実話として再投稿される。

1991年から電子メールへ

民俗学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンは1991年にこの筋を知り、同年には新聞やテレビドラマでも腎臓泥棒が扱われた。1993年の映画『The Harvest』は、メキシコ旅行中の脚本家が腎臓を奪われる物語を描く。

1997~98年には『Business Traveler Advisory』『Reasons Not to Party』などの題で電子メールが回った。警察、大学病院、旅行会社の警告を装い、『友人の同僚が被害に遭った』と具体的に書く。名前やホテルを尋ねると確かめられないが、転送者は善意で次の相手へ送った。

ホテルの浴室で男性が氷を満たした浴槽の中に目を覚ます場面
ホテルの浴室で男性が氷を満たした浴槽の中に目を覚ます場面

腎臓を移植するまで

腎臓移植には、提供者の血液型や感染症を調べ、受け手との適合を確認し、手術室で血管と尿管をつなぐ必要がある。臓器を取り出してから移植するまでの時間も限られる。ホテルで偶然選んだ人から摘出しても、買い手へすぐ使えるとは限らない。

違法な臓器売買や、貧困者に金銭で提供を迫る事件は現実にある。そこでは医療機関、仲介者、偽造書類が関わり、提供者が自分の手術を知らず浴槽へ捨てられる筋とは違う。特定のホテル腎臓盗難について、警察や移植機関は確認できないと繰り返した。

鏡に貼られた伝言を見ながら、震える手で救急電話をかける場面
鏡に貼られた伝言を見ながら、震える手で救急電話をかける場面

善意の警告が運ぶ怪談

この話は、受け取った人へ転送を求める。危険なバー、見知らぬ相手からの飲み物、海外の医療組織という現実の不安を一つにまとめ、知らせない方が無責任だと思わせる。否定記事が出ても、地名を替えた新しい被害が届く。

氷風呂は命を助ける医療処置のように見えるが、長時間の低体温はかえって危険になる。犯人が手術は完璧に行い、救急への伝言まで残す不自然さは、話の中では専門組織の恐ろしさに変わる。

脇腹の新しい包帯に気づき、浴槽から動けず息を呑む場面
脇腹の新しい包帯に気づき、浴槽から動けず息を呑む場面
病院の画像を前に医師が片方の腎臓がないことを患者へ告げる場面
病院の画像を前に医師が片方の腎臓がないことを患者へ告げる場面
SOURCES

主な参考資料