氷の中で目を覚ます
被害者はビジネスマン、大学生、観光客へ替わる。ニューオーリンズ、ラスベガス、リオデジャネイロなど、夜遊びのできる旅行先が選ばれる。魅力的な相手から飲み物を受け取り、意識を失うまでが共通する。
浴槽のそばには携帯電話と救急番号が置かれ、犯人は被害者を死なせないよう手配している。病院で検査すると、片方の腎臓だけがきれいに摘出されている。闇市場で売るには生きた状態が必要だった、と説明される。

語りの移り変わり
- 1991年旅行者の腎臓が盗まれる話が新聞、テレビ、民俗学者の記録に現れる。
- 1993年映画『The Harvest』がメキシコで腎臓を盗まれる筋を使う。
- 1997~98年公式警告を装った電子メールが企業と大学のネットワークで広く転送される。
- 2000年代以降SNSや動画で地名を替え、海外旅行の実話として再投稿される。
1991年から電子メールへ
民俗学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンは1991年にこの筋を知り、同年には新聞やテレビドラマでも腎臓泥棒が扱われた。1993年の映画『The Harvest』は、メキシコ旅行中の脚本家が腎臓を奪われる物語を描く。
1997~98年には『Business Traveler Advisory』『Reasons Not to Party』などの題で電子メールが回った。警察、大学病院、旅行会社の警告を装い、『友人の同僚が被害に遭った』と具体的に書く。名前やホテルを尋ねると確かめられないが、転送者は善意で次の相手へ送った。

腎臓を移植するまで
腎臓移植には、提供者の血液型や感染症を調べ、受け手との適合を確認し、手術室で血管と尿管をつなぐ必要がある。臓器を取り出してから移植するまでの時間も限られる。ホテルで偶然選んだ人から摘出しても、買い手へすぐ使えるとは限らない。
違法な臓器売買や、貧困者に金銭で提供を迫る事件は現実にある。そこでは医療機関、仲介者、偽造書類が関わり、提供者が自分の手術を知らず浴槽へ捨てられる筋とは違う。特定のホテル腎臓盗難について、警察や移植機関は確認できないと繰り返した。

善意の警告が運ぶ怪談
この話は、受け取った人へ転送を求める。危険なバー、見知らぬ相手からの飲み物、海外の医療組織という現実の不安を一つにまとめ、知らせない方が無責任だと思わせる。否定記事が出ても、地名を替えた新しい被害が届く。
氷風呂は命を助ける医療処置のように見えるが、長時間の低体温はかえって危険になる。犯人が手術は完璧に行い、救急への伝言まで残す不自然さは、話の中では専門組織の恐ろしさに変わる。





