行列のできる黒い筐体
伝説のゲーム画面には、迷路、宇宙戦、ベクトル図形が次々に現れる。得点を競うほど画面の回転と閃光が強くなり、耳には低い音や逆再生の声が入る。『自分を傷つけろ』『考えるな』という命令が一瞬だけ表示される版もある。
遊んだ者は数時間を忘れ、夜驚症になり、ゲームをやめても画面の残像を見る。筐体を調べる黒服の男は、客数や硬貨を数えず、内部の記録だけを持ち帰る。CIAの行動改変実験だった、軍の訓練装置だったという説明が加わった。

語りの移り変わり
- 1981年という設定ポートランドのゲームセンターへ実験用筐体が設置され、ひと月で撤去されたとされる。
- 1998~2000年CoinOp.orgにゲーム項目が作られ、確認できる最初期の公開記録になる。
- 2000年2月Usenetでゲームの情報を求める投稿があり、収集家と怪談サイトへ広がる。
- 2000年代以降告白文、再現ゲーム、映像作品が追加され、架空の筐体が実物として制作される。
CoinOp.orgの一項目
ポリビアスについて確認できる早い記録は、アーケードゲームのデータベースCoinOp.orgへ1998年または2000年に置かれた項目である。タイトル画面の画像には『© 1981 Sinneslöschen』とあり、ポートランドに一、二台だけ出た、プレイヤーに奇妙な副作用があったと説明されていた。
2000年2月27日にはUsenetの収集家グループで、誰かこのゲームを知らないかという投稿が出た。1980年代のゲーム雑誌、業界カタログ、著作権登録、基板の写真は見つからない。伝説を紹介する最初の文章より古い証拠がないため、ネット上の項目が出発点とみられている。

ポートランドで起きた別の事件
1981年のポートランドでは、アーケードゲームを長時間遊んだ若者が体調を崩す事件が実際に報じられた。『Tempest』の連続プレイ後に偏頭痛を起こした例や、ゲーム大会の熱狂は、危険な新型ゲームの背景に使える。
同じころFBIは、賭博や不正に関わるゲームセンターを捜査し、係員が筐体を調べることもあった。黒服の政府職員、体調不良、ベクトル画面という別々の記憶を結びつければ、ポリビアスの設定になる。ただしそれらは同名の機械が存在した証明ではない。

存在しないゲームを作る
2006年、CoinOp.orgのコメント欄にスティーヴン・ローチを名乗る人物が現れ、Sinneslöschenの共同創業者だったと書いた。依頼企業のため画期的な映像ゲームを作ったが、危険な副作用が出て撤去したという。身元と会社を裏づける資料はなく、この告白も伝説の続きとして読まれた。
その後、複数の制作者が実際に遊べる『Polybius』を作り、古い筐体へ入れた。テレビアニメ『ザ・シンプソンズ』には政府所有と書かれた機械が背景に登場する。現在見つかる筐体は、消えた1981年版の発見ではなく、ネットの話を現物へ戻した作品である。





