現代怪異資料館MODERN KAIKI ARCHIVE
奇怪千万現代怪異資料館キャンドル・コーヴ
FILE 83 / ネット怪談・失われた番組

キャンドル・コーヴ

きゃんどるこーう゛

幼いころ見た海賊人形劇を、母親は砂嵐だったと言う

ネット掲示板で一人が尋ねる。『キャンドル・コーヴという子ども番組を覚えていませんか』。1970年代、地方局で数分だけ放送された海賊人形劇。少女ジャニス、顎が水に浮く海賊パーシー、歯でできた口を持つスキン・テイカー。ほかの利用者も断片を覚えており、同じ場面を少しずつ補う。だが最後の投稿者が母親へ確認すると、母は答える。『あなたはテレビの砂嵐を三十分じっと見ていた』。

1970年代風の居間で、幼い子どもが小さなテレビの海賊人形劇を一人で見る場面
1970年代風の居間で、幼い子どもが小さなテレビの海賊人形劇を一人で見る場面

海賊パーシーと笑う洞窟

最初の記憶は安っぽい人形劇だ。主人公ジャニスは海賊船へ乗り、怖がりのパーシー、骸骨のようなホレス、口だけが動く洞窟フェイスと話す。背景は段ボール、糸は画面に見え、人形の動きもぎこちない。放送時間は決まらず、午後の番組の間に突然始まったという。

投稿が続くと、歯を盗むスキン・テイカーが現れる。口の中に何本もの歯を並べ、声を出すたび顎が滑る。パーシーは泣き、ジャニスは何もない場所を見つめる。ある回では登場人物全員が三十分間叫び続け、子どもたちもテレビの前で泣いていた。

蝋燭の入り江を背景に、海賊少女ジャニスと木製人形の仲間が船へ乗る場面
蝋燭の入り江を背景に、海賊少女ジャニスと木製人形の仲間が船へ乗る場面

語りの移り変わり

  1. 2009年3月15日クリス・ストラウブがIchor Fallsへ『Candle Cove』を公開する。
  2. 2009年以降怪談サイトへの転載と読者の再話で、実在番組を探す投稿が増える。
  3. 2015年ストラウブが同じ地方局を舞台にした映像シリーズ『LOCAL58』を始める。
  4. 2016年テレビドラマ『Channel Zero』第1期が短編を六話へ翻案する。

記憶を作る掲示板

短編は、利用者名と投稿時刻を並べた掲示板のログとして書かれている。一人が曖昧な名前を出し、別の人が人形の外見を思い出す。三人目が同じ台詞を覚えているため、存在しない番組が本当に共有された記憶のように見える。

読者は最後まで、投稿者と同じ順で情報を知る。映像や写真は一枚もない。母親の『砂嵐だった』という証言が出ても、複数の子どもが同じ人形を覚えている理由は残る。短い形式が、記憶違いと怪異のどちらにも答えを決めない。

縫い合わせた皮の服を着るスキン・テイカー人形が暗い洞窟から現れる場面
縫い合わせた皮の服を着るスキン・テイカー人形が暗い洞窟から現れる場面

2009年の創作と作者

作者はウェブ漫画家のクリス・ストラウブで、2009年3月15日、自身のホラーサイトIchor Fallsへ発表した。1970年代に実在した番組の記録ではなく、作者と公開時期が分かっている短編小説である。同年、Creepypasta.comなどへ転載され、掲示板の一部だけが実話の照会として引用されることもあった。

ストラウブは、子どものころの不完全なテレビ番組の記憶や、古い人形劇の不自然な動きを使った。映像を見せず、読者が自分の知っている地方番組の質感を補うように書いたため、国や放送局を替えた『自分も見た』という投稿が増えた。

骸骨人形ホレースが二重の口を開き、他の人形たちが不自然に叫ぶ場面
骸骨人形ホレースが二重の口を開き、他の人形たちが不自然に叫ぶ場面

『チャンネル・ゼロ』の町

2016年、Syfyのドラマ『Channel Zero』第1期が『Candle Cove』を原作にした。子どもの失踪事件を調べる心理学者、歯でできた少年、番組を映す空き家などを加え、短い掲示板を六話の物語へ広げた。

原作の人形は会話の中にしかいないが、ドラマでは実物の人形として作られた。ストラウブが後に制作した映像シリーズ『LOCAL58』は、キャンドル・コーヴが流れたとされる地方局と同じ世界に置かれている。砂嵐の画面から始まった番組は、今度は作者自身の放送映像へ戻った。

大人になった人物が暗い部屋で古い掲示板の記憶談を読み進める場面
大人になった人物が暗い部屋で古い掲示板の記憶談を読み進める場面
母親が戸口から見守る中、幼い子どもが海賊番組の代わりに砂嵐のテレビを見つめる場面
母親が戸口から見守る中、幼い子どもが海賊番組の代わりに砂嵐のテレビを見つめる場面
SOURCES

主な参考資料