海賊パーシーと笑う洞窟
最初の記憶は安っぽい人形劇だ。主人公ジャニスは海賊船へ乗り、怖がりのパーシー、骸骨のようなホレス、口だけが動く洞窟フェイスと話す。背景は段ボール、糸は画面に見え、人形の動きもぎこちない。放送時間は決まらず、午後の番組の間に突然始まったという。
投稿が続くと、歯を盗むスキン・テイカーが現れる。口の中に何本もの歯を並べ、声を出すたび顎が滑る。パーシーは泣き、ジャニスは何もない場所を見つめる。ある回では登場人物全員が三十分間叫び続け、子どもたちもテレビの前で泣いていた。

語りの移り変わり
- 2009年3月15日クリス・ストラウブがIchor Fallsへ『Candle Cove』を公開する。
- 2009年以降怪談サイトへの転載と読者の再話で、実在番組を探す投稿が増える。
- 2015年ストラウブが同じ地方局を舞台にした映像シリーズ『LOCAL58』を始める。
- 2016年テレビドラマ『Channel Zero』第1期が短編を六話へ翻案する。
記憶を作る掲示板
短編は、利用者名と投稿時刻を並べた掲示板のログとして書かれている。一人が曖昧な名前を出し、別の人が人形の外見を思い出す。三人目が同じ台詞を覚えているため、存在しない番組が本当に共有された記憶のように見える。
読者は最後まで、投稿者と同じ順で情報を知る。映像や写真は一枚もない。母親の『砂嵐だった』という証言が出ても、複数の子どもが同じ人形を覚えている理由は残る。短い形式が、記憶違いと怪異のどちらにも答えを決めない。

2009年の創作と作者
作者はウェブ漫画家のクリス・ストラウブで、2009年3月15日、自身のホラーサイトIchor Fallsへ発表した。1970年代に実在した番組の記録ではなく、作者と公開時期が分かっている短編小説である。同年、Creepypasta.comなどへ転載され、掲示板の一部だけが実話の照会として引用されることもあった。
ストラウブは、子どものころの不完全なテレビ番組の記憶や、古い人形劇の不自然な動きを使った。映像を見せず、読者が自分の知っている地方番組の質感を補うように書いたため、国や放送局を替えた『自分も見た』という投稿が増えた。

『チャンネル・ゼロ』の町
2016年、Syfyのドラマ『Channel Zero』第1期が『Candle Cove』を原作にした。子どもの失踪事件を調べる心理学者、歯でできた少年、番組を映す空き家などを加え、短い掲示板を六話の物語へ広げた。
原作の人形は会話の中にしかいないが、ドラマでは実物の人形として作られた。ストラウブが後に制作した映像シリーズ『LOCAL58』は、キャンドル・コーヴが流れたとされる地方局と同じ世界に置かれている。砂嵐の画面から始まった番組は、今度は作者自身の放送映像へ戻った。





