現代怪異資料館MODERN KAIKI ARCHIVE
奇怪千万現代怪異資料館BEN Drowned
FILE 84 / ゲーム怪談・呪われたカートリッジ

BEN Drowned

べんどらうんど

消したはずのセーブ名が戻り、石像が画面の外まで追ってくる

大学生のJadusableは、ガレージセールでラベルの剥がれたNINTENDO64用カセットを買う。表には油性ペンで『MAJORA』とだけ書かれていた。起動すると『BEN』というセーブデータが残っている。消して自分の名前で始めたはずなのに、登場人物は彼をBENと呼び、ゲームの音楽は逆再生になり、リンクの抜け殻を写した像が行く先々に立つ。撮影した動画まで、遊んだ覚えのない内容へ書き換わる。

薄暗いガレージセールで、老人がラベルの剥がれたNINTENDO 64カートリッジを若者へ渡す場面
薄暗いガレージセールで、老人がラベルの剥がれたNINTENDO 64カートリッジを若者へ渡す場面

笑顔の像がついてくる

老人からカセットを受け取ったJadusableは、前の持ち主について『同じくらいの年の少年だった』と聞く。BENのデータを消した後、ゲームは本来と違う場所へリンクを飛ばす。時計塔の町には住人がおらず、『いやしの歌』が逆向きに流れ、リンクは突然炎に包まれて死ぬ。

空っぽの像は、遠くの屋根や部屋の隅からリンクを見る。ゲームを終了してもセーブデータは『YOUR TURN』などに変わり、JadusableのYouTubeへ本人が上げていない動画が現れる。掲示板の読者は映像を一緒に確認し、次に試す操作を提案した。

古いブラウン管テレビにBENというセーブ枠が残り、若者がコントローラーを止める場面
古いブラウン管テレビにBENというセーブ枠が残り、若者がコントローラーを止める場面

語りの移り変わり

  1. 2010年9月7日アレックス・ホールがJadusable名義で4chan /x/へ最初の投稿を行う。
  2. 2010年9月7~12日文章とYouTube動画で、BENに侵食されるカセットの第一部が進む。
  3. 2010年9月~2011年7月Moon Childrenのサイトを使う第二部が、読者参加型ARGとして展開する。
  4. 2020年動画と新サイトで最終章が再開し、十年にわたる物語が完結する。

四日間の掲示板投稿

最初の投稿は2010年9月7日、4chanの超常現象板/x/に掲載された。作者アレックス・ホールはJadusable名義で、体験が進行中であるように数日間書き続ける。Nintendo64エミュレータとゲーム改造を使って映像を作り、本文で起きた異常をYouTubeへ載せた。

読者が動画の暗号や音を解析すると、次の投稿へ反映された。JadusableはBENをカセットへ閉じ込めるため、書き込みを止めると告げる。直後に別の文体の投稿が現れ、『彼はもう自由になった』と読者へ話しかける。怪談の登場人物が掲示板の外へ出た形で第一部が終わった。

誰もいないゲーム内の時計塔で、無表情なリンクの石像が主人公の背後に立つ場面
誰もいないゲーム内の時計塔で、無表情なリンクの石像が主人公の背後に立つ場面

Moon Childrenのサイト

動画の手がかりから、読者はyoushouldnthavedonethat.netへ導かれた。そこには月を信仰し、『昇天』のため命を捧げる集団Moon Childrenの会員ページがある。BENは溺死した少年で、教団の儀式に関わったらしい。ページは日付や閲覧者の操作で変わり、会員の日記が消える。

この第二部は2010年9月17日から2011年7月まで続いた。読者はサイト内の投票で登場人物の行動を選び、暗号を解いた。単に読む短編ではなく、参加者の判断で公開順と結末が動く代替現実ゲームになった。

逆向きの音楽が流れる水中でゲーム主人公が沈み、石像だけがこちらを見る場面
逆向きの音楽が流れる水中でゲーム主人公が沈み、石像だけがこちらを見る場面

十年後に再開した物語

ホールは学業や制作上の事情で長く更新を止めた後、2020年にJadusableの動画チャンネルを再始動した。最終章ではBENを一人の幽霊ではなく、教団の死者とゲーム内プログラムが結びついたネットワークとして描き直す。

原作のカセットは実在の呪物ではなく、映像とサイトを含めて計画された創作である。だが読者が投稿中に作者へ質問し、ゲーム画面の異常を自分で検証する形式は、後の呪われたゲーム怪談へ大きく影響した。BENの像が画面の奥で動かないほど、次に誰が操作しているのか分からなくなる。

若者が録画した異常映像を深夜のパソコンへ取り込み、背後のテレビが勝手に点く場面
若者が録画した異常映像を深夜のパソコンへ取り込み、背後のテレビが勝手に点く場面
消したはずのセーブ画面が戻り、部屋の暗がりに石像と同じ笑顔が浮かぶ場面
消したはずのセーブ画面が戻り、部屋の暗がりに石像と同じ笑顔が浮かぶ場面
SOURCES

主な参考資料