腕だけで追ってくる女
学校で語られる版では、テケテケは放課後の旧校舎やトイレに現れます。最初は床を叩く乾いた音しか聞こえません。音が近づき、振り返ると、女子生徒のような上半身が両腕で体を運んでいます。逃げてもすぐに追いつかれ、足を奪われる、鎌で腰を切られるといわれました。
線路沿いの版では、冬の夜に列車にはねられた女性がもとになっています。体を切断されてもすぐには死ねず、線路の上でもがいた音が「テケテケ」だったという筋です。事故に遭った駅や女性の名前は語り手によって変わり、北海道、関東、名もない町の踏切などへ置き換えられました。

語りの移り変わり
- 昭和後期線路事故で下半身を失った女や、上半身だけで追う怪異の話が各地で語られる。
- 1993年学校トイレの怪談を扱う採録例にテケテケの名が見える。
- 1995年映画『学校の怪談』に登場し、上半身だけで走る姿が広く知られる。
- 2000年代以降カシマさんとの混同、映画化、ネット動画によって由来と姿が増える。
音だけで姿が伝わる
「テケテケ」という呼び名は、両手が床や舗装路を打つ音をそのまま口で表したものです。姿を詳しく説明しなくても、上半身だけの体が速く進む様子を音で伝えられます。友達を驚かせるときは、机や床を指で交互に叩けば十分でした。
移動の音を「カタカタ」「カシャカシャ」とする地域もあります。手に鎌を持つ姿、長い髪が顔を隠した姿、学生服を着た姿は、児童書や映像作品で足されました。話によっては、テケテケを見た者が三日以内に襲われるため、聞いただけでも逃げられないとされます。

1990年代の学校怪談に現れる
日本口承文芸学会の論文「学校の怪談におけるトイレの怪異」は、1993年の採録例にテケテケの名を挙げています。1990年から児童書『学校の怪談』が続けて刊行され、校内の怪異が盛んに集められた時期です。1995年の映画『学校の怪談』にもテケテケが登場し、上半身だけで走る姿が映像になりました。
ただし、1993年が噂の始まりと決まったわけではありません。それ以前から下半身のない女の怪談や、線路事故の犠牲者が現れる話は語られていました。テケテケという音の名がいつ、どこで最初に使われたかを特定できる記録は見つかっていません。

カシマさんと混ざった話
テケテケとよく混同されるのがカシマさんです。カシマさんも下半身を失った女として語られ、この話を聞いた者の前へ数日後に現れます。現れたカシマさんは足をどこへやったかと問い、正しい言葉を返せば助かるという版があります。
テケテケは音を立てて追う怪異、カシマさんは問いかける怪異として別々に語られていました。ところが、両方とも線路事故と欠けた体を持つため、テケテケの本名をカシマレイコとする話や、カシマさんの呪文でテケテケを退ける話が生まれました。2009年の映画『テケテケ』では、この混ざり合った設定が物語に使われています。

線路からスマートフォンの画面へ
児童書や映画では、テケテケは校舎の床、階段、踏切を高速で進みます。ネット上の短編動画では、暗い道路を這う影や監視カメラに映った人影として描かれるようになりました。速度の速さは変わらず、カメラを向けた者へ一直線に近づいてきます。
事故で亡くなった女性の実名や特定の駅を由来として紹介する記事もありますが、裏づけの取れた一件へ絞ることはできません。残っているのは、下半身のない女が音を立て、見つけた相手を追うという短い筋と、その音から生まれた名前です。




