古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑青坊主
FILE 72 / 山野・坊主姿

青坊主

あおぼうず

一つ目の絵と、土地ごとに違う坊主の話

荒れた草庵の障子に、大きな影が映る。外に立つのは、青い法衣をまとった一つ目の僧だ。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』には絵だけがあり、何をする妖怪なのかは書かれていない。一方、各地の青坊主は、麦畑から現れる、夕方まで遊ぶ子どもをさらう、空き家に立つなど、土地ごとに違う姿を持つ。

江戸の草庵の脇に、一つ目の僧形の青坊主が立つ場面
江戸の草庵の脇に、一つ目の僧形の青坊主が立つ場面

障子の外に立つ一つ目

安永五年(一七七六)刊の鳥山石燕『画図百鬼夜行』には、粗末な庵のそばに青坊主が立つ。頭を丸め、法衣を着た僧だが、顔の中央には大きな目が一つだけ。細い手を胸の前で組み、障子越しに中をうかがっている。

石燕は青坊主について詞書を付けていない。絵の中にも、庵の主や襲われる人は見えない。そのため、一つ目になった理由や、この後に何をするかは分からない。後世の図鑑が語る習性の多くは、この絵から膨らませたものだ。

山道の土の上で、小さな青坊主と旅人が相撲を取る場面
山道の土の上で、小さな青坊主と旅人が相撲を取る場面

語りの移り変わり

  1. 伝承期各地で、夕方や山野に現れる坊主姿の怪異が語られる。
  2. 1776年鳥山石燕『画図百鬼夜行』に一つ目の青坊主が描かれる。
  3. 近代民俗採集で、子どもをさらうものや空き家に出るものなど地域差が記録される。
  4. 現代一つ目の僧姿が図鑑で主流になる一方、各地の別伝承も紹介される。

土地によって変わる青い坊主

「青」は色だけでなく、未熟な者や若い者を表すことがある。「坊主」も僧侶に限らず、丸い頭の化物や大きな人影の呼び名に使われた。このため、青坊主という同じ名が付いていても、姿や行動は地域ごとに違う。

夕暮れに遊ぶ子どもへ「青坊主が来る」と言って帰宅を促す土地があり、畑や山道に現れる大坊主の話もある。岡山には、古い家の便所に出るという話が採集されている。石燕の一つ目僧と直接つながる証拠はない。

伊那の淵にある松を、息を止めた村人が回り、坊主が根元から見ている場面
伊那の淵にある松を、息を止めた村人が回り、坊主が根元から見ている場面

名前だけが残す余白

僧の姿をした妖怪には、見越入道、一つ目小僧、入道坊主など多くの仲間がいる。夜道で見た人影、寺の廃屋、子どもを近づけたくない危険な場所が、それぞれ坊主の姿を取った。

青坊主は、決まった長編の昔話を持たない。そのため絵を見る人や土地の語り手が、自分たちの知る怪異を重ねやすかった。石燕の静かな一枚と、各地の短い警告の話が、同じ名のもとで現在まで並んでいる。

山の畑へ弁当を運ぶ娘の前に、青い僧衣の坊主が立つ場面
山の畑へ弁当を運ぶ娘の前に、青い僧衣の坊主が立つ場面
赤ん坊のいる昼の家で、子守が長い手の青坊主から離れようとする場面
赤ん坊のいる昼の家で、子守が長い手の青坊主から離れようとする場面
昼の山道を一つ目の青坊主が塞ぎ、弁当を運ぶ娘が足を止める
昼の山道を一つ目の青坊主が塞ぎ、弁当を運ぶ娘が足を止める
SOURCES

主な参考資料