古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑キジムナー
FILE 68 / 沖縄・木の精

キジムナー

きじむなー

ガジュマルに住み、漁へついてくる小さな友

沖縄の大きなガジュマルには、赤い髪や赤い顔をした子どものような者が住むといわれる。名はキジムナー。仲良くなった人を夜の漁へ誘い、舟いっぱいの魚を取らせる。ただし自分は魚の左目だけを好み、残りを相手へ渡す。約束を破ったり、住み家の木を焼いたりすれば、親しかった相手にも容赦なく仕返しをする。

沖縄の大きなガジュマルの根元に、赤い髪の小さな子どもが腰掛ける場面
沖縄の大きなガジュマルの根元に、赤い髪の小さな子どもが腰掛ける場面

ガジュマルに住む赤い子ども

キジムナーの姿は土地や話によって異なるが、小柄で、髪や顔が赤い子どものようだとよくいわれる。住み家は、太い幹から気根を垂らすガジュマルの古木。昼は見えなくても、夜になると木を離れて海や集落へ出た。

沖縄では妖怪や魔物を広くマジムンと呼ぶ。キジムナーもその一つに数えられるが、いつも人へ害をなすわけではない。家の者と親しくなり、働きを助け、富をもたらす話もある。付き合い方を誤らなければ、近所の友人のような存在だった。

星明かりの海で、漁師と小さなキジムナーが木造舟から網を引く場面
星明かりの海で、漁師と小さなキジムナーが木造舟から網を引く場面

語りの移り変わり

  1. 伝承期沖縄各地で、古木に住み人と漁をする小さな精霊の話が語られる。
  2. 近代民俗調査によって、呼び名、姿、好物、禁忌の地域差が記録される。
  3. 20世紀後半沖縄伝承話資料センターなどが話者の音声と梗概を収集する。
  4. 現在沖縄を代表する精霊として、絵本、舞台、観光施設でも紹介される。

一緒に舟へ乗る

キジムナーは漁が得意で、人を舟へ誘う。一晩で多くの魚を取るが、魚の目、とりわけ左目を先に食べる。人間は目を欠いた魚を受け取り、家へ持ち帰った。こうして暮らしが豊かになったという話が各地にある。

一方で、嫌いなものもはっきりしている。屁をひどく嫌うため、関係を断ちたい男が舟の上でわざと放屁し、二度と来ないようにしたという昔話もある。火や熱い鍋を恐れるともいわれ、細部は島や集落ごとに変わる。

夜の浜で、キジムナーが魚の目を食べ、残りを漁師の籠へ渡す場面
夜の浜で、キジムナーが魚の目を食べ、残りを漁師の籠へ渡す場面

木を焼いた家への仕返し

久米島の民話では、古木に住むキジムナーがおじいさんと仲良くなり、一緒に漁へ出ていた。夫婦が不審に思い、留守の間にその木を焼くと、帰る場所を失ったキジムナーは逃げていく。話によっては、その後、家や舟を焼いて仇を返す。

古木は木陰を作り、風除けとなり、集落の目印にもなる。そこを住み家とするキジムナーの話は、木をむやみに切ったり焼いたりすることへのためらいを残した。沖縄県立博物館・美術館には、各地で採録された異なるキジムナー話が保存されている。

家の裏口で戸だけが少し開き、病床の人が音の方を見ている場面
家の裏口で戸だけが少し開き、病床の人が音の方を見ている場面
ガジュマルの下へ草を積む夫婦を、離れた道から小さな影が見ている場面
ガジュマルの下へ草を積む夫婦を、離れた道から小さな影が見ている場面
住み木を焼かれたキジムナーが、明け方の海沿いを別の古木へ歩く場面
住み木を焼かれたキジムナーが、明け方の海沿いを別の古木へ歩く場面
SOURCES

主な参考資料