閉じても戻る赤い窓
Flash版では、少年が友人から奇妙な広告の噂を聞く。ネットを巡回していると、本当に赤いポップアップが現れた。窓には女性の声とともに『あなたは――好きですか?』と表示される。右上の閉じるボタンを押しても消えず、窓は少しずつ大きくなった。
やがて文字の間を覆っていた部分が外れ、『あなたは赤い部屋が好きですか?』という一文が完成する。画面は赤く変わり、過去の犠牲者らしい名前が並ぶ。最後の空欄へ少年の名が加わり、翌朝、彼は壁を血で染めた部屋で死んでいるところを発見される。

語りの移り変わり
- 1990年代末~2000年代初頭O-Toro制作のFlash短編『赤い部屋』が個人サイトやリンク集で広まる。
- 2004年佐世保市の小学生殺害事件をめぐる報道とともに作品名が広く知られる。
- 2020年12月Adobe Flash Playerのサポートが終了する。
- 2021年以降録画、再現版、VR作品などを通じて鑑賞される。
ポップアップ広告の時代
作品が知られたのは、個人サイトを開くたびに別窓の広告が増えた時代だった。ブラウザーは現在ほど強くポップアップを止めず、見知らぬ小窓を一つずつ閉じるのは日常の操作だった。Flashは画像、音声、簡単なアニメーションを一つのファイルで再生でき、短いホラー作品が掲示板やリンク集を通じて広まった。
『赤い部屋』も、最初から口頭で伝わった事件記録ではない。閲覧者が自分の手で閉じるボタンを押すたびに次の場面へ進む、ブラウザー上の短編だった。作品を見た人が『同じ広告が本当に出る』と語り、動画を離れた場所でも噂が独り歩きした。

現実の事件と結びついた報道
2004年に長崎県佐世保市で起きた小学生同士の殺害事件では、加害児童が利用していたパソコンやウェブサイトが報道の対象になった。その中で『赤い部屋』を見ていたという情報が広まり、Flashの知名度は急に上がった。
事件は作品の公開より後に起きており、Flashの筋をまねたものでもない。作品に登場する少年の死と現実の事件では、場所も経緯も異なる。ネット上では二つが並べて語られたため、後の紹介記事には、Flash内の物語と2004年の報道を一続きに扱うものもある。

再生できなくなったあと
Adobeは2020年末にFlash Playerのサポートを終え、翌年からコンテンツの実行を遮断した。かつての掲載ページを開いても、当時と同じ形では再生できない。現在見られるものは、画面を録画した動画、別の技術で作り直した版、VR空間でポップアップを再現した作品などである。
小さな窓を自分で閉じる感覚は失われたが、赤い画面と途切れた質問文は残った。スマートフォン向けの再話では、ポップアップが通知やメッセージへ置き換わる。見る人の端末に突然現れ、消しても戻るという手順だけが、新しい画面へ移されている。





