映画館の前に来た二人
ベセルの回想では、二人は十代前半ほどの少年だった。年上の方が『母親の家へ金を取りに戻りたい』『映画が始まるから急いでいる』と話し、車に乗せるよう求める。もう一人は黙ったまま地面を見ていた。映画館の看板には『モータル・コンバット』が出ていたが、最終上映が始まる時刻はすでに過ぎていた。
ベセルは理由の分からない恐怖を感じ、ドアを開けなかった。年上の少年は『ただの子どもだ』『許可してくれなければ車に入れない』と、同じ頼みを強い口調で繰り返す。顔を見たベセルは、二人の目が真っ黒であることに気づいた。彼は車を急発進させ、バックミラーを見る。少年たちはもう駐車場にいなかったという。

語りの移り変わり
- 1996年ブライアン・ベセルがテキサス州アビリーンの駐車場で、黒い目の少年二人に会ったとする。
- 1998年1月14日ベセルがUsenetのalt.folklore.ghost-storiesへ体験を投稿し、ネット上で引用され始める。
- 2000年代玄関先で電話や入室を求める話が各地から投稿され、子どもたちの外見と行動が定型化する。
- 2012~13年米国の超常番組と地元紙でベセルが体験を振り返り、動画や海外記事へ広がる。
1996年の遭遇、1998年の投稿
ベセルは地元紙アビリーン・リポーター・ニューズに勤めていた。遭遇した年は1996年とされ、1998年1月14日、幽霊を扱うUsenetのニュースグループへ長文を投稿した。後にベセル本人が質問へ答えるFAQを作り、2013年には地元紙でも体験を振り返っている。
初期の記録には、オレゴン州ポートランドで似た子どもに会ったという別人の報告も添えられた。二つの話がネットで引用されるうち、『Black-Eyed Kids』『Black-Eyed Children』という呼び名が定着する。1996年より古い目撃談が後から紹介されることもあるが、年代を確かめられる流布の起点はベセルの投稿とされている。

玄関先へ移った子どもたち
後の体験談では、二人の子どもが雨の夜に家を訪ね、電話を貸してほしい、親が迎えに来るまで待たせてほしいと頼む。服装は古びているのに髪は濡れていない。住人がドアを閉めようとすると、『入れてくれないと電話は使えない』と静かに言う。
子どもを入れた版では、家の電灯が消え、飼い犬が怯える。住人は体調を崩し、子どもたちはいつの間にか姿を消す。こうした家屋版は、車の窓を隔てて話したベセルの筋より後に増えた。古風な服、青白い肌、二人一組という外見も、投稿によって揃ったり変わったりする。

超常番組から各国の動画へ
2000年代以降、黒い目の子供は超常現象のラジオ番組、書籍、テレビへ取り上げられた。2012年放送開始の米国番組『Monsters and Mysteries in America』では、ベセルが自分の体験を話している。黒いコンタクトレンズを使った再現映像は強い印象を残し、短編映画や動画の題材にもなった。
子どもたちの正体を吸血鬼、宇宙人、悪魔とする説明も現れた。どの説もベセルの投稿に書かれた答えではない。最初の話に残るのは、車の外に立つ二人が、ドアを自分で開けず、運転手から許可を得ようとしたことだ。助けを求める子どもを前にしても、ベセルは最後まで鍵を外さなかった。





