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奇怪千万現代怪異資料館LINEわらし
FILE 51 / SNS・グループ

LINEわらし

らいんわらし

誰も招待していない少女が名簿にいる

仲のよい数人でLINEグループを作った。しばらくして参加者一覧を見ると、知らない少女のアイコンが一つ混じっている。名前に心当たりはなく、誰に尋ねても招待していないという。少女は一度も発言しない。正体を確かめようと皆で話しているうちに、参加者一覧から消えてしまう。入った通知も、退会した通知も残らなかった。

夜の教室で複数の学生がスマートフォンのグループ名簿と奥に立つ小さな影を見比べるLINEわらし
夜の教室で複数の学生がスマートフォンのグループ名簿と奥に立つ小さな影を見比べるLINEわらし

一人だけ知らない参加者

話の舞台になるのは、学校の同級生や職場の仲間など、互いをよく知る小さなグループだ。少女のアカウントが見つかると、最初は誰かの友人だと思われる。ところが一人ずつ確認しても、招待した者はいない。少女へ直接呼びかけても既読がつかず、返事も来なかった。

メンバーが不安になり、画面を保存しようとした版では、その直前に少女が消える。通常なら表示される参加や退会の通知もない。最初からいなかったことになっているのに、少女を見た記憶だけは全員に残る。アイコンが和服姿だった、顔がぼやけていたなどの細部は、後の紹介ごとに違っている。

暗い部屋で一台のスマートフォンに顔のない少女のアイコンだけが淡く浮かび、周囲に人影のないLINEわらしの場面
暗い部屋で一台のスマートフォンに顔のない少女のアイコンだけが淡く浮かび、周囲に人影のないLINEわらしの場面

語りの移り変わり

  1. 2015年知人だけのLINEグループに見知らぬ少女が混じった体験談として採録される。
  2. 2018年1月朝里樹『日本現代怪異事典』が刊行され、LINEわらしが収録される。
  3. 2018年6月文春オンラインの著者インタビューで、LINEわらしが現代怪異の例として紹介される。
  4. その後SNS怪談の記事や動画で再話され、少女の名前やアイコンに異版が増える。

2015年の体験談から事典へ

怪異研究家の朝里樹は、LINEわらしを2015年の体験談として集めた。2018年1月に笠間書院から刊行された『日本現代怪異事典』にも項目があり、同年6月の文春オンラインのインタビューでは記事の見出しに採用されている。スマートフォンが日常の連絡手段になってから生まれた、年代の新しい話だ。

公開された紹介からは、最初の体験者の端末や会話ログまでは確認できない。再話ではグループの人数、少女の表示名、消えるまでの日数が変わる。それでも『全員が知人のはずなのに一人だけ説明できない』『出入りの記録がない』という二点は残っている。

学生たちが互いのスマートフォンを見せ合い見知らぬ参加者を誰も招待していないと確認する場面
全員に尋ねても、招待した者だけが見つからない

家の座敷から参加者一覧へ

座敷童子は、東北を中心に家へ住みつく子どもの姿で語られてきた。姿を見せずに足音やいたずらだけを残す話も多い。LINEわらしは、その呼び名をスマートフォンの中へ持ち込んだ。廊下の足音の代わりに参加人数が一つ増え、襖の隙間の代わりに丸いアイコンが現れる。

似た怪談には、卒業写真に知らない生徒が写る、出席簿に存在しない名前がある、といったものがある。LINEのグループでは名簿が常に画面にあり、招待した人物や退会した時刻も表示される。それだけに、通知を残さず混じった一人が目立った。

参加者一覧から少女の影が消えた後も画面を確かめ続ける学生たちの場面
余分な一人が消え、参加人数だけが元に戻る

サービスが変われば怪談も移る

LINEの招待方法や表示は、アプリの更新によって変わってきた。招待中の相手が見える版、参加を承認する設定、リンクから入る仕組みもある。現実に知らないアカウントが現れた場合は、共有リンクや参加履歴を確かめれば原因が見つかることもある。

怪談の中の少女は、そうした確認を始めたときに消える。画面を閉じた後、別のグループにも同じアイコンがいるという続きも作られた。連絡手段が別のサービスへ移れば、少女の居場所も参加者一覧、通話履歴、共有アルバムへ移っていく。

誰もいない教室の机に置かれたスマートフォンと壁際の小さな少女の影
誰もいない教室に残る、空席と小さな影
翌朝に三人の生徒が教師と端末のプライバシー設定を確認し、記録を残す場面
翌朝は大人へ相談し、設定と記録を落ち着いて確かめる
SOURCES

主な参考資料