一人だけ知らない参加者
話の舞台になるのは、学校の同級生や職場の仲間など、互いをよく知る小さなグループだ。少女のアカウントが見つかると、最初は誰かの友人だと思われる。ところが一人ずつ確認しても、招待した者はいない。少女へ直接呼びかけても既読がつかず、返事も来なかった。
メンバーが不安になり、画面を保存しようとした版では、その直前に少女が消える。通常なら表示される参加や退会の通知もない。最初からいなかったことになっているのに、少女を見た記憶だけは全員に残る。アイコンが和服姿だった、顔がぼやけていたなどの細部は、後の紹介ごとに違っている。

語りの移り変わり
- 2015年知人だけのLINEグループに見知らぬ少女が混じった体験談として採録される。
- 2018年1月朝里樹『日本現代怪異事典』が刊行され、LINEわらしが収録される。
- 2018年6月文春オンラインの著者インタビューで、LINEわらしが現代怪異の例として紹介される。
- その後SNS怪談の記事や動画で再話され、少女の名前やアイコンに異版が増える。
2015年の体験談から事典へ
怪異研究家の朝里樹は、LINEわらしを2015年の体験談として集めた。2018年1月に笠間書院から刊行された『日本現代怪異事典』にも項目があり、同年6月の文春オンラインのインタビューでは記事の見出しに採用されている。スマートフォンが日常の連絡手段になってから生まれた、年代の新しい話だ。
公開された紹介からは、最初の体験者の端末や会話ログまでは確認できない。再話ではグループの人数、少女の表示名、消えるまでの日数が変わる。それでも『全員が知人のはずなのに一人だけ説明できない』『出入りの記録がない』という二点は残っている。

家の座敷から参加者一覧へ
座敷童子は、東北を中心に家へ住みつく子どもの姿で語られてきた。姿を見せずに足音やいたずらだけを残す話も多い。LINEわらしは、その呼び名をスマートフォンの中へ持ち込んだ。廊下の足音の代わりに参加人数が一つ増え、襖の隙間の代わりに丸いアイコンが現れる。
似た怪談には、卒業写真に知らない生徒が写る、出席簿に存在しない名前がある、といったものがある。LINEのグループでは名簿が常に画面にあり、招待した人物や退会した時刻も表示される。それだけに、通知を残さず混じった一人が目立った。

サービスが変われば怪談も移る
LINEの招待方法や表示は、アプリの更新によって変わってきた。招待中の相手が見える版、参加を承認する設定、リンクから入る仕組みもある。現実に知らないアカウントが現れた場合は、共有リンクや参加履歴を確かめれば原因が見つかることもある。
怪談の中の少女は、そうした確認を始めたときに消える。画面を閉じた後、別のグループにも同じアイコンがいるという続きも作られた。連絡手段が別のサービスへ移れば、少女の居場所も参加者一覧、通話履歴、共有アルバムへ移っていく。





