マザー・リーズの十三番目の子
よく語られる昔話では、パイン・バレンズに住むリーズ家の母親が十二人の子を育てていた。十三人目を身ごもった彼女は、腹立ちまぎれに『次は悪魔であればいい』と口にする。1735年、嵐の夜に生まれた赤ん坊は、産婆たちの前で馬の頭、蝙蝠の翼、二つに割れた蹄、長い尾を持つ姿へ変わった。煙突から飛び出し、松林へ消えたという。
母親の名はジェーン、デボラなど一定せず、家の場所や出産年も語り手によって違う。実在したリーズ家は植民地期の南部ニュージャージーに多くの子孫を残したが、第十三子が怪物になったという同時代の記録は見つかっていない。『ジャージー・デビル』より前には『リーズ・デビル』という呼び名が使われた。

語りの移り変わり
- 18世紀の設定リーズ家の十三番目の子が怪物になり、パイン・バレンズへ飛び去ったと語られる。
- 19世紀リーズ・デビルの名で、松林の鳴き声や目撃が口伝えされる。
- 1909年1月一週間に多数の足跡と目撃が新聞へ載り、三州を巻き込む騒ぎになる。
- 20世紀以降ジャージー・デビルの名が定着し、州のスポーツ、観光、創作へ広がる。
雪に残った蹄の跡
1909年1月の騒ぎでは、夜ごとに違う町から足跡と目撃が報じられた。トレントン市議E・P・ウィーデンは、寝室の窓の外で羽ばたく音を聞き、雪の上に二つに割れた足跡を見つけたと話した。カムデンでは路面電車の車掌が空を飛ぶものへ向けて発砲した。消防署の屋根を怪物が歩き、消防士たちがホースで追い払ったという記事も出た。
報告は一週間ほどでニュージャージーからペンシルベニア、デラウェアまで及んだ。足跡が密閉された庭や屋根に続いていると新聞が書き、子どもを休ませる学校もあった。外見は犬、鶴、カンガルー、翼のある馬と食い違う。見世物業者が翼と爪をつけたカンガルーを展示し、騒ぎを利用したことも伝えられている。

松と砂の広大な土地
パイン・バレンズはニュージャージー州南部に広がる松林と湿地の地域で、砂地の道、小さな集落、かつての製鉄所や製材所跡が点在する。十九世紀には炉が閉じ、廃村になった場所も多い。町の明かりから離れた林で聞く甲高い鳴き声は、姿の見えない怪物の話と結びついた。
ニュージャージー州のパインランズ委員会やアトランティック郡も、地域史の一部として伝説を紹介している。角、翼、尾、蹄をすべて備えた絵が一般的になった一方、古い目撃談は鳥のような影や足跡だけを記したものも多い。

リーズの悪魔から州の顔へ
1909年の新聞は『リーズ・デビル』『ジャージー・デビル』『フードル・ドゥードル鳥』など複数の名を使った。やがて州名を冠した呼び方が残り、スポーツチームのニュージャージー・デビルズもその名を採った。観光案内、地ビール、土産物には翼の怪物が描かれている。
夜の松林で怪物を探すツアーも行われる。参加者が知っている姿は、1909年以後の挿絵を受け継いだものだ。雪に足跡を見つけた人々が見たものは一致しなかったが、新聞に載った一週間が、ばらばらの影を一匹の怪物へまとめた。





