ラジオが告げる脱走犯
二人がいるのは、町から離れた恋人たちの駐車場所だ。ニュースを聞いた少女は辺りを怖がり、すぐ家へ送ってほしいと言う。少年はもう少しだけ、と引き留める。木の枝がこすれたような音が何度も続き、少女が泣き出すと、少年は腹を立てて車を発進させる。
少女の家へ着き、少年が助手席側へ回る。ドアの取っ手には、血のついた鉤がぶら下がっていた。逃げる車に引きずられ、犯人の腕から外れたらしい。鉤を見つけるところで終わる版では、二人はかろうじて助かる。別の版では少年が車外へ出たまま戻らず、翌朝、少女が屋根の上から垂れた少年の死体を見つける。

語りの移り変わり
- 1950年代末片手が鉤の脱走犯と車内の恋人たちの話が、米国の若者の間で広く語られる。
- 1960年11月8日読者から届いた話が新聞の人生相談欄『ディア・アビー』へ掲載される。
- 1960~70年代民俗学者が各地の異版を採録し、若者の自動車文化と結びついた都市伝説として研究する。
- 1970年代以降映画、テレビ、キャンプの怪談で再話され、鉤を持つ殺人鬼が定番になる。
新聞に載った『若者への警告』
民俗学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンによれば、この話は1959年までに米国の高校生や大学生の間で広く語られていた。確認されている初期の活字例は、1960年11月8日付の人生相談欄『ディア・アビー』である。読者から届いた手紙は、ドアに残った鉤の話を紹介し、若い恋人たちへの警告として掲載された。
新聞へ載る前から口伝えで広がっていたため、作者を一人に決めることはできない。語る側は事件の場所を近くの公園や湖畔へ移し、『隣町で本当にあった』と付け加えた。車を持つ若者が増え、親の目を離れて出かけられるようになった1950年代の米国で、話の舞台はすぐに身近な場所になった。

鉤が車に届くまで
犯人の鉤は、姿を見せないまま存在を知らせる。ラジオで特徴を聞き、車の外から金属音がし、最後にドアへ実物が残る。三つの手がかりが順番に近づくため、語り手は怪物の姿を細かく説明しなくてもよい。
話によっては車が動かなくなり、少年が助けを呼びに出る。少女はドアをロックし、屋根をこする音を一晩中聞く。夜明けに警官が来て、決して後ろを見るなと言う。振り返ると、木から下げられた少年の靴が車の屋根をなでていた。この結末は『恋人の死』と呼ばれる別の都市伝説とも重なっている。

キャンプの怪談から映画へ
フック男は短く、暗い場所で語りやすい。サマーキャンプでは、語り終えた直後に誰かが壁を引っかき、外に隠れた仲間が鉤を窓へ当てる。身近な公園を事件現場に選べば、その晩の帰り道まで話が続いた。
1970年代以降は映画やテレビが繰り返し採用した。犯人の姿を最初から見せる作品もあるが、口伝えの話では最後まで顔が分からないことが多い。ドアに残った鉤だけを見て、二人は車のすぐ外まで何者かが来ていたと知る。





