現代怪異資料館MODERN KAIKI ARCHIVE
奇怪千万現代怪異資料館バニーマン
FILE 58 / 米国・着ぐるみ怪人

バニーマン

ばにーまん

白い兎の服で斧を振るう橋下の男

1970年10月、米空軍士官学校の候補生ロバート・ベネットと婚約者は、バージニア州フェアファックス郡ギニア・ロードに車を停めていた。後ろで何かが動き、白い服に長い兎の耳をつけた男が現れる。男は『私有地だ。車の番号は控えた』と叫び、手斧を助手席の窓へ投げ込んだ。二人は割れた窓に斧を残したまま警察へ走った。

1970年の夜、停車中の車の外に白い兎の服を着た斧持つ男が現れる場面
1970年の夜、停車中の車の外に白い兎の服を着た斧持つ男が現れる場面

兎の耳と手斧

ベネットは男を身長百七十センチほど、白い衣装に長い耳をつけていたと説明した。車の屋根に当たった手斧は助手席側の窓を割り、床へ落ちた。警察は斧を証拠として回収したが、衣装の男は見つからなかった。10月22日、ワシントン・ポスト紙が『フェアファックスで兎服の男を捜索』と報じた。

10月29日、建築現場の警備員ポール・フィリップスは、未完成の家の玄関に立つ男を見つけた。男は灰色か黒と白の兎服を着て、柄の長い斧で柱を切っていた。『近づけば頭を割る』と脅し、森へ逃げたという。同じ人物かどうかは分からないまま、二件目も新聞に載った。

兎姿の男が投げた小さな手斧が車の窓を割り、若い男女が身を伏せる非流血の場面
兎姿の男が投げた小さな手斧が車の窓を割り、若い男女が身を伏せる非流血の場面

語りの移り変わり

  1. 1970年10月19日ごろギニア・ロードで兎服の男が駐車中の車へ手斧を投げ込む。
  2. 1970年10月29日建築現場の警備員が、兎服で斧を持つ男に脅されたと届ける。
  3. 1970年代学生の採話に多数の異版が集まり、事件の舞台がコルチェスター陸橋へ移る。
  4. 1990年代以降精神病院と脱走者の物語がネットで広まり、バニーマン橋が肝試しの場所になる。

橋へ移った事件

その後、話の舞台はクリフトン近くのコルチェスター陸橋へ移った。線路の下を一車線の道路が通る短いトンネルで、夜は照明がなく、車がすれ違う余地も少ない。若者たちは車を停め、クラクションを鳴らし、斧を持つ男が現れるか試した。

フェアファックス郡の歴史資料を調べた図書館アーキビストのブライアン・コンリーは、1970年の警察記録と新聞記事を確認した。二件とも橋で起きていない。ところが狭く暗い陸橋は、ギニア・ロードの住宅地より怪談の舞台に向いていたため、バニーマン橋の名だけが残った。

建設途中の家で、バニーマンが玄関柱を斧でたたき警備員を威嚇する場面
建設途中の家で、バニーマンが玄関柱を斧でたたき警備員を威嚇する場面

存在しなかった精神病院

広く流布した版では、1904年、クリフトンの精神病院が閉鎖され、患者を移送するバスが橋の近くで事故を起こす。二人が逃げ、森には食べかけの兎が吊るされる。一人は橋で首をつった状態で見つかり、残る男が兎の衣装を着て人を襲う。

郡内にその精神病院があった記録も、患者輸送バスの事故も見つかっていない。脱走者の名、犠牲者の数、怪人が死んだ年は再話ごとに変わる。ハロウィーンの真夜中、橋の下で『バニーマン』と三回呼べば殺されるという手順も後から加わった。

森へ走り去る白い兎服の男を車のヘッドライトが照らす場面
森へ走り去る白い兎服の男を車のヘッドライトが照らす場面

橋に集まる人々

テレビ番組やネット記事が橋を紹介すると、ハロウィーン前後には見物の車が増えた。コルチェスター・ロードは生活道路で、陸橋には歩道がない。郡当局は不法侵入や交通事故を防ぐため巡回し、周辺住民は夜間の騒音に悩まされてきた。

兎服の男が斧を投げた1970年の事件は実際に警察へ届けられたが、犯人も動機も分からない。橋の大量殺人は記録にない。新聞に残る二件と、橋で育った話を分けても、白い耳の男が夜道へ飛び出す最初の場面は十分に奇妙だった。

月夜の狭い鉄道陸橋の下に兎姿の怪人が斧を下げて立つ後年の伝説場面
月夜の狭い鉄道陸橋の下に兎姿の怪人が斧を下げて立つ後年の伝説場面
列車の明かりが近づく橋で、バニーマンが欄干の上から訪問者を見下ろす場面
列車の明かりが近づく橋で、バニーマンが欄干の上から訪問者を見下ろす場面
SOURCES

主な参考資料