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奇怪千万現代怪異資料館異世界エレベーター
FILE 24 / ネット・移動

異世界エレベーター

いせかいえれべーたー

階数操作で別世界へ着くという儀式

十階以上ある建物のエレベーターへ、一人で乗る。いくつかの階を決められた順に往復し、五階で一階のボタンを押す。ところが箱は下へ向かわず、十階まで上がっていく。扉の先に人はいない。途中で若い女が乗ってきても、話しかけてはいけない――。異世界エレベーターの古い日本語版は、到着した後に何があるのかも、どう帰るのかも教えないまま終わっていた。

古いエレベーターの扉が見知らぬ夜の都市へ開く異世界エレベーター
古いエレベーターの扉が見知らぬ夜の都市へ開く異世界エレベーター

一階へ戻らない箱

最初の規則は短い。十階以上の建物で、四階、二階、六階、二階、十階、五階の順に移動する。五階で一階を押したとき、エレベーターが十階へ上がれば儀式は成功したことになる。扉の向こうへ出るかどうかは、乗った本人に委ねられている。

五階では若い女が乗ってくることがある。女に声をかけてはいけない。『その人は人ではない』とだけ書かれ、どこから来たのか、なぜ同じ箱へ乗るのかは明かされない。機械は決められた通りに動いているように見えながら、最後の一度だけ押したボタンを無視する。

深夜のエレベーター内で乗客が留まり、開いた扉の先に赤い無人都市が見える場面
深夜のエレベーター内で乗客が留まり、開いた扉の先に赤い無人都市が見える場面

語りの移り変わり

  1. 2008年11月22日現在たどれる早い日本語版が2ちゃんねるへ投稿される。
  2. 2010〜2011年韓国語圏で体験談と帰還方法が加わり、儀式の長い形が整う。
  3. 2011〜2012年韓国語版と日本語版が英訳され、Elevator Gameとして英語圏へ広がる。
  4. 2019年『世間話研究』にYouTuberと異世界エレベーターを扱う論文が掲載される。

2008年11月22日の投稿

英語圏の都市伝説を追跡した調査では、現在確認できる早い形として、2008年11月22日付の2ちゃんねる投稿番号736が挙げられている。2009年3月の関連スレッドから過去ログを逆にたどり、同じ階数の並びと五階の女性を確認したものだ。

『韓国発のエレベーターゲーム』という紹介は広く流布しているが、日本語のこの投稿は、調査で確認された2010年7月の韓国語記事より早い。もちろん、消失した掲示板や口頭で先に広まっていた可能性は残る。少なくとも公開状態で日付を追える資料では、2008年の日本語版が先に現れる。

深夜の高層建物で一人の参加者がエレベーターへ乗り、伝承どおり複数階のボタンを順に押していく
深夜の高層建物で一人の参加者がエレベーターへ乗り、伝承どおり複数階のボタンを順に押していく

韓国語版で帰り道ができる

2010年から2011年にかけて韓国のブログや掲示板へ広まると、物語には帰還方法が加わった。途中でやめる方法、異世界へ着いたか確かめる方法も細かくなる。十階の窓から見える町は暗く、遠くに赤い十字のような光がある。携帯電話などの電子機器は使えない。

2011年10月には韓国語版をもとにした英訳が公開され、2012年には日本の2ちゃんねる版を紹介する英語記事も出た。英語圏では『Elevator Game』の名が定着し、ホテルや集合住宅で試す動画が数多く投稿されるようになる。

途中階で見知らぬ女が一人だけ乗り込み、参加者を見ないままエレベーターの奥へ立つ
途中階で見知らぬ女が一人だけ乗り込み、参加者を見ないままエレベーターの奥へ立つ

数字だけで進む異界への道

きさらぎ駅では、乗客は帰宅途中に偶然知らない駅へ着く。異世界エレベーターでは、自分から数字の列を入力する。外の景色は扉が開くまで見えず、現在地は階数表示だけで知らされる。そのため、同じ建物の中を往復しているだけでも、最後に表示された数字が別の場所の座標のように感じられる。

再話が重なると、必要な階数、女性が乗る階、窓外の色、戻る途中の注意点が変化した。短かった2008年版へ、各言語の投稿者が『到着したら何が見えるか』『どうすれば戻れるか』を継ぎ足し、現在知られる長いゲームが出来上がった。

扉が開くと照明の消えた無人の街と赤黒い空が広がり、参加者が異世界の階へ足を踏み出す
扉が開くと照明の消えた無人の街と赤黒い空が広がり、参加者が異世界の階へ足を踏み出す

研究誌が追ったYouTuberの都市伝説

2019年、世間話研究会の研究誌『世間話研究』は、永島大輝の論文「異世界はエレベーターとともに。YouTuberの都市伝説」を掲載した。題名にYouTuberが入っている通り、儀式は文章の規則から、実際に箱へ乗り込む映像へ姿を変えた。

動画では、階数表示、扉の開閉、誰もいない廊下が順番に映る。視聴者は投稿者と同じ情報しか得られず、途中で乗る女性が現れるかを待つ。2008年の書き込みが説明を途中で終えた余白は、配信者が自分の結末を撮影できる余白にもなった。

異世界の無人階で参加者が閉まりかけるエレベーターへ戻ろうと走り、見知らぬ女が背後から見つめる
異世界の無人階で参加者が閉まりかけるエレベーターへ戻ろうと走り、見知らぬ女が背後から見つめる
SOURCES

主な参考資料