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奇怪千万現代怪異資料館首なしライダー
FILE 39 / 道路・幽霊

首なしライダー

くびなしらいだー

霧の道路を走り続ける無貌の乗り手

深夜の峠道を走っていると、後ろから一台のオートバイが近づいてくる。ライダーは黒い革つなぎを着ているが、ヘルメットがない。肩の上には何もないまま、車体を傾けてカーブを曲がる。車が速度を上げても振り切れず、赤信号で止まると横へ並んだ。首の切り口から低い声が聞こえる。『俺の頭を知らないか』。

濡れた高架道路で上半身が霧へ溶けるバイクの乗り手を描いた首なしライダー
濡れた高架道路で上半身が霧へ溶けるバイクの乗り手を描いた首なしライダー

峠を走る首のない男

目撃されるのは、夜になると走り屋や暴走族が集まる峠道である。車の運転手がバックミラーを見ると、一台のバイクが急速に距離を詰めてくる。ライダーは頭がないのに、道を外れることも、カーブで速度を落とすこともない。追いつかれた車は事故を起こし、翌朝、路肩で見つかる。

別の版では、フルフェイスのヘルメットをかぶった普通のライダーに見える。横へ並んだ時にシールドの中が空だと分かり、ヘルメットを外して投げつけてくる。自分の首を探しているため、同じ道を走る人の頭を持ち去るともいわれた。

霧の峠道で一灯のバイク影が車の後方から近づく場面
霧の峠道で一灯のバイク影が車の後方から近づく場面

語りの移り変わり

  1. 1970年代峠道や暴走族を背景に、頭のないライダーとピアノ線の噂が語られ始める。
  2. 1974年オーストラリア映画『マッドストーン』が製作され、後に日本でも公開される。
  3. 1980年代以降都市伝説集、漫画、映像作品へ首なしライダーが登場する。
  4. 2000年テレビアニメ『学校の怪談』が首なしライダーを映像化する。

道路へ張られたピアノ線

よく語られる過去では、夜ごと騒音を立てる暴走族に腹を立てた住民が、道路の両側へピアノ線を張る。何も知らずに走ってきた若者は、線へ首をぶつけて命を落とした。バイクだけがしばらく走り続けた、切れた頭は谷へ落ちて見つからなかった、と続く。

ピアノ線を張った人物は、沿道の老人、被害を受けた農家、警察に相談しても相手にされなかった住民などへ変わる。実在の峠と事故日を挙げる話もあるが、同じ筋が複数の県で語られており、一件の事件を共通の発端にはできない。

雨の峠道を走る運転者が前方を見ながら、側面ミラーに後方のバイク灯を確認する場面
雨の峠で、後方から一台のバイクが異様な速さで迫る

事故死するライダーの異説

ピアノ線を使わない版では、ライダーが大型トラックの荷台へ衝突し、首を失う。トンネルの低い梁へぶつかった、競走中にガードレールへ投げ出されたという話もある。事故現場へ花を供えると出なくなるが、片づけられるとまた走り始める。

海外映画にも、頭を切断されるライダーや暴走族への罠が登場した。1974年のオーストラリア映画『マッドストーン』は日本でも公開され、道路へワイヤーを張る場面が日本の噂へ影響したと指摘されている。ただし、映画公開以前の聞き取りを挙げる人もおり、作品一つだけから生まれたとは断定できない。

雨の山道の遠方から高い襟で頭部が見えにくいライダー影が近づく場面
近づくライダーには、首から上が存在しなかった

学校の怪談と漫画のライダー

1980年代以降、首なしライダーは都市伝説集や少年漫画にたびたび登場した。峠で一晩だけ出会う幽霊だけでなく、ヘルメットを頭の代わりに載せ、バイクと一体になった怪物として描かれる作品もある。

2000年放送のテレビアニメ『学校の怪談』では、首なしライダーが特別編に登場した。2004年開始の成田良悟『デュラララ!!』には、首のない女性ライダー、セルティ・ストゥルルソンが現れる。こちらはアイルランドの首なし妖精デュラハンをもとにした人物で、日本の峠で事故死した若者とは別の来歴を持つ。

雨の峠道で首のないライダーが走行中の車の横へ並び、窓越しに迫る場面
首なしライダーは速度を上げ、逃げる車のすぐ横まで追いつく
昔の山道で走るライダーの前方へ細いワイヤーが張られ、衝突直前となる場面
道に張られたワイヤーで首を失ったという由来の一型
SOURCES

主な参考資料