現代怪異資料館MODERN KAIKI ARCHIVE
奇怪千万現代怪異資料館巨頭オ
FILE 44 / ネット・集落

巨頭オ

きょとうお

読めない標識の先に巨大な頭が現れる

男は連休を前に、子どもの頃に家族で泊まった山村を思い出した。古い旅館はかび臭く、テレビも映らなかったが、早朝に父親とカブトムシを採った記憶は残っている。もう一度行ってみようと車を走らせると、村への道にあった案内板が『巨頭オ』という見慣れない文字へ変わっていた。その先に旅館はなく、草に覆われた廃屋だけが並んでいた。

山道の読めない標識の向こうで巨大な頭部の影が霧から現れる巨頭オ
山道の読めない標識の向こうで巨大な頭部の影が霧から現れる巨頭オ

思い出の村を訪ねる

投稿者は両親に場所を尋ね、記憶を頼りに一人で山へ向かう。道順に間違いはない。以前なら村までの距離を示す看板が立っていた場所で、奇妙な表示を見つける。そこには『巨頭オ』とあった。嫌な予感はしたが、懐かしい村がどうなったか確かめたくなり、そのまま車を進めた。

村へ入ると、人の住む気配はなかった。建物には草が巻きつき、道も荒れている。投稿者が車を降りようとしたとき、二十メートルほど先の草むらから、人のようなものが一体出てくる。体に比べて頭が異様に大きい。周囲を見れば、同じ姿が何体も立っていた。

公道沿いの展望駐車場へ停めた車内から右端が欠けた無文字の古い標識と遠い集落を見る場面
公道沿いの展望駐車場へ停めた車内から右端が欠けた無文字の古い標識と遠い集落を見る場面

語りの移り変わり

  1. 2006年2月22日2ちゃんねるのオカルト板へ、山村の再訪と『巨頭オ』の看板を扱う短編が投稿されたとされる。
  2. 2000年代後半まとめサイトへの転載で広がり、看板の欠損や廃村の由来をめぐる考察が加わる。
  3. 2018年8月鹿児島県の山中で同じ文字の看板を見つけたという写真がSNSで拡散する。
  4. 現在朗読、動画、ゲームなどへ移され、巨大な頭の外見や村の設定を増やした版も流通する。

頭を振りながら追ってくる

大きな頭の者たちは、両手を脚へぴったり付け、頭を左右に振りながら車へ向かってきた。投稿者はドアを開けず、急いで車を後退させる。そのまま国道まで戻り、振り返らずに山を下りた。

帰宅して地図を開いても、訪れた場所は子どもの頃の村と一致していた。村がなぜ廃れたのか、旅館の人々がどこへ行ったのか、草むらの者たちが何者だったのかは書かれていない。投稿は、無事に逃げ帰ったところで終わる。

公道の展望駐車帯で成人運転者が停車車両のそばから欠けた標識と遠い集落を見る場面
山道で欠けた標識を見つけた運転者は、その先の集落へ入ってしまう

『オ』は欠けた文字なのか

読者の間では、看板はもともと『巨頭村』だったという説が広まった。風雨で『村』の一部がはがれ、『オ』のように見えたという考えである。『巨頭男』の文字が欠けた、入口を示す記号だった、初めから『巨頭オ』という地名だった、と別の案も出た。

ただし、原文に看板の古さや文字の欠損は書かれていない。投稿者自身も、なぜ表示が変わったのか説明していない。『巨頭村』という読みは、公開後に読者が加えた推測である。再話では推測が本文へ入り込み、最初から廃村の名だったかのように書かれることもある。

公共の橋の展望柵から成人旅行者が霧の集落と丸い頭に見える遠い人影を見る場面
集落の住民たちは異様に大きな頭を持ち、一斉に車へ顔を向ける

短い投稿から広がった村

『巨頭オ』は2006年2月22日、2ちゃんねるのオカルト板にある『死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?』系のスレッドへ投稿されたとされる。本文は数百字ほどしかない。村名も都道府県も書かれず、異形の者の顔つきさえ分からない。

その空白を埋めるように、まとめサイト、朗読動画、ゲームが村の位置や住民の姿を付け足した。2018年には、鹿児島県の山中で『巨頭オ』と書かれた看板を見つけたという写真がSNSで話題になった。写真の看板は原文の実在場所を証明するものではなく、周辺で同じ廃村が確認されたわけでもない。それでも、意味の分からない五文字だけで話を思い出せるほど、題名はネット怪談の中へ定着した。

山の集落を走る車を大きな頭の住民たちが異常な速さで追いかける場面
危険を悟って逃げる車を、巨頭の住民たちが走って追跡する
逃げる車の後部窓へ大きな頭の住民たちが群がり、背後に欠けた標識と集落が遠ざかる場面
住民が車へ迫る中、運転者は山道を抜けて集落から逃げ切ろうとする
SOURCES

主な参考資料