知らない番号から来る課題
噂にはいくつもの入口があった。SNSでモモの電話番号を見つけ、WhatsAppへ登録するとメッセージが届く。あるいは、子ども向け動画の途中にモモが割り込み、親に知られないよう課題を実行させる。拒めば家へ行くと脅され、住所や家族の名前まで知られている。国が変わると番号や課題も変わったが、大きな目と鳥の脚を持つ顔だけは同じだった。
警察、学校、保護者団体は相次いで注意を呼びかけた。ところがYouTubeは、モモが子ども向け動画へ入り込んだという具体的な動画の報告は受けていないと説明した。自殺との関連が報じられた事例も、捜査機関による確認へ至っていない。実際には、写真を使って個人を脅す模倣犯や、騒ぎを面白がるメッセージが混じっていたとみられる。

語りの移り変わり
- 2016年相蘇敬介の『姑獲鳥』が東京のヴァニラ画廊に展示され、写真が撮られる。
- 2018年写真を使った危険な課題の噂が『モモ・チャレンジ』として各国へ広がる。
- 2019年2月学校や著名人の警告を機に英米で騒動が再燃する。
- 2019年3月作者が取材に応じ、彫刻は前年に処分したと説明する。
東京の展示会にいた『姑獲鳥』
モモの顔は、特殊造形作家の相蘇敬介が制作した彫刻『姑獲鳥』を正面から撮ったものだ。長い黒髪、飛び出した目、広い口を持つ女性の上半身に、鳥の胴と脚が続く。二〇一六年、東京のヴァニラ画廊で開かれた幽霊を題材とする企画展に出品された。来場者が撮影した写真がネットへ渡り、作品名も作者名も離れたところで「モモ」と呼ばれ始めた。
作者は騒動に関わっておらず、人を傷つける目的で作った作品でもない。天然ゴムや植物油を使った彫刻は劣化が進み、二〇一八年には処分された。相蘇は二〇一九年三月の取材に対し、作品はもう存在しないので子どもたちに安心してほしいと話している。

警告が怪談を大きくした
モモの写真は二〇一六年以降、南米の怪談動画やWhatsAppのいたずらに使われた。二〇一八年には「モモ・チャレンジ」の名で各地のニュースに現れ、二〇一九年二月、英国や米国で学校と著名人が警告を共有すると検索と投稿が急増した。子どもが先に遊びを知っていたのではなく、大人の注意喚起を見て初めて顔を知る例もあった。
写真、未知の番号、動画への侵入という断片は、誰でも再現できる。実在の管理者がいなくても、警告を読んだ人が同じ文面を送り、動画投稿者が再現映像を作れば、新しい証拠のように見える。モモ・チャレンジは、中心となるゲームが見つからないまま、危険を知らせる投稿そのものによって形を保った。






