振り向けば目が一つ
一つ目小僧は背が低く、頭を丸めた寺の小僧や十歳ほどの子どもに見える。後ろ姿は普通なので、旅人や店の者が先に話しかけてしまう。返事の代わりに顔を向けると、額の真ん中に大きな目がある。近世の怪談や絵では、赤い舌を長く出す姿も加わった。
豆腐を載せた盆を持つ「豆腐小僧」と混同されることがあるが、江戸の絵では別の妖怪として描かれる。一つ目小僧が特定の食べ物を運ぶ決まりはない。座敷へ上がり、掛け軸を見ていた客が、主人の声で振り返ると一つ目だった、という短い驚かせ話にも姿を見せる。

語りの移り変わり
- 江戸時代怪談集と妖怪画に、額へ一つの目を持つ小坊主が描かれる。
- 事八日関東各地で一つ目小僧が家を回り、目籠で追い払う行事が語られる。
- 1934年柳田國男が『一目小僧その他』を刊行し、来訪神との関係を論じる。
- 近現代人を驚かせる小柄な妖怪として漫画、絵本、玩具に定着する。
事八日の夜に帳面を付ける
関東地方では、二月八日と十二月八日を「事八日」と呼び、この夜に一つ目小僧が家々を回るとされた。小僧は戸口から中をのぞき、履物の散らかりや家人の怠けを帳面へ書く。その帳面は道祖神へ預けられ、翌年の災いを決める材料になる。家の者は早く戸を閉め、外へ出ないようにした。
小僧を追い返すため、竹竿の先へ目籠や笊を付け、軒先に高く掲げる。編み目の穴を無数の目と見た一つ目小僧は、自分より目の多い相手を恐れて逃げる。履物を片付ける、針仕事を休む、魔除けの団子を作るなど、同じ事八日でも行事の内容は土地で違う。

妖怪と来訪神の間
柳田國男は『一目小僧その他』で、一つ目の怪物を、もとは神に仕える者や特別な力を持つ来訪者だったのではないかと考えた。事八日に定期的に来て家の様子を調べる行動は、道端で人を驚かすだけの妖怪とは違う。小正月や季節の境に家を訪れ、暮らしを見守る神の行事とも近い。
ただし、一つ目を古代の祭祀や特定の職業へ直結させる説には推測が含まれる。資料から確かめられるのは、近世の妖怪画に小坊主姿が現れ、近代の民俗採集が事八日の帳面と目籠を各地で記録したことまでである。絵本の一つ目小僧と、村へ決まった日に来る一つ目は、同じ姿を持ちながら別の場面で生きてきた。






