古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑骨女
FILE 25 / 夜・恋

骨女

ほねおんな

愛しい姿の内側に骨を隠す女

若い男は、牡丹を描いた灯籠を持つ美しい女と出会い、夜ごと逢瀬を重ねた。男の目には女は生前の姿のままだったが、隣人が部屋をのぞくと、男が抱いていたのは肉の落ちた骸骨だった。江戸時代の鳥山石燕は、この場面をもとに「骨女」を描く。手に牡丹灯籠を提げ、着物の下から骨をのぞかせる女は、のちの怪談『牡丹燈籠』にもつながる古い亡霊である。

灯籠の夜に半透明の着物から骨がのぞく骨女
灯籠の夜に半透明の着物から骨がのぞく骨女

牡丹灯籠を持つ女

寛文六年(一六六六)に刊行された浅井了意の怪談集『伽婢子』に、「牡丹灯籠」が収められている。荻原新之丞という若者は、夜道で美しい女と侍女に出会う。侍女が持つ灯籠には牡丹の花が描かれていた。女は弥子と名乗り、新之丞と親しくなって、毎夜彼の家を訪れるようになる。

二人は夜が明けるまで語り合い、やがて夫婦のように暮らした。しかし近所の者には、夜ごと訪れる女たちの素性が分からない。不審に思った隣人が壁の穴から部屋をのぞくと、新之丞は白骨を抱き、その髑髏と話をしていた。女はすでに死んでおり、新之丞だけが生前の姿を見ていたのである。

灯籠の明かりで女性の手だけが白骨に見え、恋人には生前の姿に見える骨女の場面
灯籠の明かりで女性の手だけが白骨に見え、恋人には生前の姿に見える骨女の場面

語りの移り変わり

  1. 14世紀末瞿佑『剪灯新話』に「牡丹灯記」が収められる。
  2. 1666年浅井了意『伽婢子』が日本を舞台にした「牡丹灯籠」を刊行する。
  3. 1779年鳥山石燕が『今昔画図続百鬼』に「骨女」を描く。
  4. 明治期三遊亭圓朝の『怪談牡丹燈籠』が速記本や歌舞伎を通じて広まる。

墓の中へ連れ去られた男

隣人から真相を聞いた新之丞は寺へ相談し、護符を家の戸口に貼って女を入れないようにした。女は戸の外で泣き、名前を呼び続ける。新之丞はしばらく耐えたものの、ついに外へ出てしまい、女に連れられて姿を消した。

人々が女の墓を開くと、棺の中には二体の遺骸があった。女の白骨に、新之丞の亡骸が抱きついていたという。美しい姿の下に白骨を隠す女は、男をだますためだけに化けたのではない。死んだ後も会いに来て、生きた恋人を墓の中まで連れていった。

灯籠の夜に死んだはずの女が生前の姿で恋人の家を訪れる場面
灯籠の夜に死んだはずの女が生前の姿で恋人の家を訪れる場面

中国の物語から江戸の妖怪へ

『伽婢子』の話は、中国明代の短編小説集『剪灯新話』にある「牡丹灯記」を日本の土地と人物へ置き換えたものだった。海を渡った物語は、江戸の読者になじみやすい怪談へ作り直され、広く読まれた。後に三遊亭圓朝が語った『怪談牡丹燈籠』も、登場人物や筋を大きく変えながら、この系譜を受け継いでいる。

鳥山石燕は『今昔画図続百鬼』で、牡丹灯籠を持つ骸骨の女を「骨女」として描いた。詞書には『伽婢子』と『剪灯新話』の名も挙げられている。もともとは一篇の小説に登場する亡霊だったが、石燕が名前と姿を切り出したことで、骨女は独立した妖怪として図鑑に並ぶようになった。

恋人には美しい女に見える一方、隣室の者には白骨が座るように見える場面
恋人には美しい女に見える一方、隣室の者には白骨が座るように見える場面
灯明の影で女の袖口から白骨の手がのぞき、見張る者が息を潜める場面
灯明の影で女の袖口から白骨の手がのぞき、見張る者が息を潜める場面
夜明け前に骨女が墓地へ戻り、恋人が灯籠を持って後を追う場面
夜明け前に骨女が墓地へ戻り、恋人が灯籠を持って後を追う場面
SOURCES

主な参考資料