葦の中から呼ぶ声
水辺で赤子が泣いていれば、そのまま通り過ぎるわけにはいかない。声を頼りに葦の中へ入ると、すぐ近くにいたはずの子どもが見つからない。立ち止まれば、今度は背後や対岸から泣く。
川赤子は助けようとする人を走り回らせるが、石燕の詞書では、それ以上の危害を加えない。声の場所を次々に移し、探す者をからかって笑うような怪異だった。

語りの移り変わり
- 伝承期川や沼で赤子の泣き声が移動し、人を惑わせる話が語られる。
- 1779年鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に川赤子が描かれる。
- 近代石燕の絵を基に、河童の幼体や水辺の妖怪として紹介される。
- 現代人を水中へ誘う性質などが加わり、漫画やゲームにも登場する。
河童に似た小さな姿
安永八年(一七七九)の『今昔画図続百鬼』で、川赤子は水際に座る小さな生き物として描かれた。赤子の体つきだが、全身に毛があり、頭や顔は河童に近い。背後には太い葦が伸びる。
詞書は川太郎、つまり河童の仲間ではないかと記す。赤子が川へ捨てられて妖怪になったという生前の話はない。水辺の怪物が、人をおびき寄せやすい泣き声をまねている。

声だけの怪異に姿を与える
山や川で赤子の声がする怪異は、子泣き爺をはじめ各地にある。鳥や獣の鳴き声が人の声に似ることもあり、暗がりでは距離や方向を確かめにくい。
石燕は、声だけだった場面へ河童の子の姿を置いた。後の図鑑では、近づいた人を水へ引き込むと説明されることもあるが、原図では川赤子は岸に座り、声で人を惑わせるところまでしか描かれていない。






