古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑しょうけら
FILE 86 / 家・庚申

しょうけら

しょうけら

屋根の明かり取りから室内を覗く三本爪

庚申の夜、人々が眠らずに集まっている。その家の屋根へ、三本指の怪物がよじ登り、天窓から中をのぞく。鳥山石燕が描いた「しょうけら」は、髪を逆立て、裸に近い体で、何かを見張っている。庚申待では、眠った人の体から三尸の虫が抜け、天帝へ罪を告げると信じられたが、しょうけらと三尸が同じものだとは原典に書かれていない。

江戸の夜、三本爪のしょうけらが町家の屋根へ伏せ、明かり取りを覗く場面
江戸の夜、三本爪のしょうけらが町家の屋根へ伏せ、明かり取りを覗く場面

屋根の上からのぞく

石燕のしょうけらは、人家の屋根に腹ばいになり、天窓へ顔を寄せている。長い髪は逆立ち、腕と脚は細く、指は三本。家の人を襲うより、何をしているか見張っているような姿である。

安永五年(一七七六)の『画図百鬼夜行』には、庚申の夜を思わせる囃子言葉が添えられる。しょうけらの名も、その言葉の一部として以前から知られていた可能性がある。

家の中で庚申待の人々が囲炉裏を囲み、眠らず話す場面
家の中で庚申待の人々が囲炉裏を囲み、眠らず話す場面

語りの移り変わり

  1. 中世~近世庚申の夜に眠らず過ごす庚申待が各地へ広がる。
  2. 1776年鳥山石燕『画図百鬼夜行』に、屋根をのぞくしょうけらが描かれる。
  3. 江戸時代庚申塔の建立や講の集まりが盛んになり、各地に多様な俗信が残る。
  4. 近代以降三尸の虫と結びつけ、悪事を見張る妖怪として事典に紹介される。

眠ってはいけない庚申の夜

庚申信仰では、人の体内に三尸という虫が住むとされた。六十日に一度の庚申の夜、宿主が眠ると体を抜け出し、天帝へその人の罪を報告する。寿命を縮められないよう、人々は集まって夜明かしをした。

食事をし、話をし、経を唱えながら眠気を防ぐ行事が庚申待である。屋根からのぞくしょうけらは、眠る者がいないか確かめる見張りにも見える。しかし、石燕は三尸だと明記せず、両者を直接結ぶ古い物語も確認されていない。

白い毛と三本爪を持つしょうけらが、庚申待をする家の屋根の明かり取りへ伏せる
白い毛と三本爪を持つしょうけらが、庚申待をする家の屋根の明かり取りへ伏せる

意味の分からない言葉から生まれた姿

庚申に関する俗謡やまじないには、現在では意味を取りにくい言葉が残る。石燕は「しょうけら」という音へ、三本指の怪物を割り当て、夜の屋根へ置いた。

後の図鑑では、人の悪事を天へ告げる、天窓から罪を探す妖怪として説明される。庚申信仰の仕組みによく合うが、石燕の一枚絵を筋のある物語へ直した部分も含まれる。

しょうけらの長い三本爪が屋根の明かり取りへかかり、室内の人々を覗く
しょうけらの長い三本爪が屋根の明かり取りへかかり、室内の人々を覗く
庚申塔の前で、村人が夜明けの供物を片付ける場面
庚申塔の前で、村人が夜明けの供物を片付ける場面
古い絵巻に見える獣形のしょうけらが、月夜の屋根棟へ立つ
古い絵巻に見える獣形のしょうけらが、月夜の屋根棟へ立つ
SOURCES

主な参考資料