屋根の上からのぞく
石燕のしょうけらは、人家の屋根に腹ばいになり、天窓へ顔を寄せている。長い髪は逆立ち、腕と脚は細く、指は三本。家の人を襲うより、何をしているか見張っているような姿である。
安永五年(一七七六)の『画図百鬼夜行』には、庚申の夜を思わせる囃子言葉が添えられる。しょうけらの名も、その言葉の一部として以前から知られていた可能性がある。

語りの移り変わり
- 中世~近世庚申の夜に眠らず過ごす庚申待が各地へ広がる。
- 1776年鳥山石燕『画図百鬼夜行』に、屋根をのぞくしょうけらが描かれる。
- 江戸時代庚申塔の建立や講の集まりが盛んになり、各地に多様な俗信が残る。
- 近代以降三尸の虫と結びつけ、悪事を見張る妖怪として事典に紹介される。
眠ってはいけない庚申の夜
庚申信仰では、人の体内に三尸という虫が住むとされた。六十日に一度の庚申の夜、宿主が眠ると体を抜け出し、天帝へその人の罪を報告する。寿命を縮められないよう、人々は集まって夜明かしをした。
食事をし、話をし、経を唱えながら眠気を防ぐ行事が庚申待である。屋根からのぞくしょうけらは、眠る者がいないか確かめる見張りにも見える。しかし、石燕は三尸だと明記せず、両者を直接結ぶ古い物語も確認されていない。

意味の分からない言葉から生まれた姿
庚申に関する俗謡やまじないには、現在では意味を取りにくい言葉が残る。石燕は「しょうけら」という音へ、三本指の怪物を割り当て、夜の屋根へ置いた。
後の図鑑では、人の悪事を天へ告げる、天窓から罪を探す妖怪として説明される。庚申信仰の仕組みによく合うが、石燕の一枚絵を筋のある物語へ直した部分も含まれる。






