古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑鬼童丸
FILE 92 / 鬼・武者

鬼童丸

きどうまる

牛の皮へ隠れ、頼光を待ち伏せる鬼

源頼光が弟・頼信の屋敷を訪ねると、厠に大男が閉じ込められていた。名は鬼童丸。危険だと見た頼光は、もっと厳重につなぐよう忠告する。鬼童丸はその夜に鎖を切り、頼光の寝所をのぞいた。頼光は気づき、翌日鞍馬へ行くとわざと口にする。先回りした鬼童丸は市原野で牛を殺し、その腹の中へ潜り込んで一行を待った。

頼光の屋敷で、鎖につながれた鬼童丸が番人を見ている場面
頼光の屋敷で、鎖につながれた鬼童丸が番人を見ている場面

厠につながれた大男

頼光が源頼信の家へ行くと、厠の近くに力の強い大童が捕らえられていた。頼光はただ者ではないと感じ、縄ではなく鎖でつなぐよう言う。鬼童丸はその忠告を恨んだ。

夜になると鎖を引きちぎり、頼光の部屋をのぞく。頼光は眠ったふりをしたまま気配を察し、供の者へ、明日は鞍馬寺へ参詣すると聞こえるように話した。鬼童丸は待ち伏せの場所を得たと思い、先に屋敷を出る。

夜の屋敷で、鬼童丸が鎖を外して塀を越える場面
夜の屋敷で、鬼童丸が鎖を外して塀を越える場面

語りの移り変わり

  1. 1254年成立した『古今著聞集』に、鬼童丸が牛の腹から頼光を襲う話が載る。
  2. 中世後期頼光四天王の武勇譚と結びつき、絵巻や異本に描かれる。
  3. 江戸時代武者絵や読本で、牛の死体に潜む場面が視覚化される。
  4. 近代以降酒呑童子の子という出自が妖怪事典や創作で広まる。

牛の腹で息を潜める

市原野へ着いた鬼童丸は、放されていた牛を一頭殺した。腹を裂いて内臓を出し、自分がその中へ入る。頼光一行が通りかかれば、すぐ近くから飛び出して斬れる。

ところが頼光は、道端の牛を見ただけで罠を見抜いた。渡辺綱に命じて矢を射させると、牛の腹から鬼童丸が跳び出す。鬼童丸は頼光へ斬りかかったが、一刀で倒された。

市原野で、鬼童丸が倒れた牛の皮の内側へ身を隠す場面
市原野で、鬼童丸が倒れた牛の皮の内側へ身を隠す場面

酒呑童子の子になった後世

『古今著聞集』は鬼童丸の両親や生い立ちを語らない。どこから来たか分からない、大力の大童として話が始まる。頼光と四天王の鬼退治が人気を得ると、この空白へ新しい出自が加えられた。

後世には、酒呑童子にさらわれた女が産んだ子、あるいは酒呑童子自身の子とされる。父の仇である頼光を狙う話にすれば、待ち伏せの理由が分かりやすい。しかし鎌倉期の原話で鬼童丸が恨んだ直接のきっかけは、厳しく縛れと頼光が命じたことだった。

頼光の一行が牛の死骸の脇を通り、家臣が動く皮へ目を向ける場面
頼光の一行が牛の死骸の脇を通り、家臣が動く皮へ目を向ける場面
牛皮をかぶった鬼童丸が立ち上がり、頼光へ弓を引く場面
牛皮をかぶった鬼童丸が立ち上がり、頼光へ弓を引く場面
市原野で四天王が鬼童丸を囲み、頼光を後ろへ下げる場面
市原野で四天王が鬼童丸を囲み、頼光を後ろへ下げる場面
SOURCES

主な参考資料