古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑お菊
FILE 96 / 井戸・皿屋敷

お菊

おきく

一枚足りない皿を井戸から数える女

姫路城主の家臣・青山鉄山は、主君を倒して城を奪おうと企てていた。城に仕えるお菊は、その計画を恋人の衣笠元信へ知らせる。陰謀は一度阻まれたが、お菊の動きを知った町坪弾四郎は、家宝の皿を一枚隠し、盗んだ罪を着せた。お菊は松へつるされて責められ、それでも企てへの協力を拒む。最後には井戸へ投げ込まれ、夜ごと皿を一枚、二枚と数える声を城内へ響かせた。

城の座敷で、お菊が白い皿を一枚ずつ畳へ並べて数える場面
城の座敷で、お菊が白い皿を一枚ずつ畳へ並べて数える場面

城を奪う企てを知らせる

姫路の話では、青山鉄山が城主の小寺則職を倒そうとする。お菊は鉄山側の屋敷に仕えながら、家臣・衣笠元信と連絡を取り、毒殺の計画を知らせた。元信の働きで主君は難を逃れる。

鉄山はその後、城を支配するが、お菊はひそかに元信へ情報を送り続けた。町坪弾四郎はお菊を自分のものにしようと迫り、拒まれると、家宝の皿十枚から一枚を隠して罪を着せる。

九枚の皿を前に、お菊が空いた箱の底を確かめる場面
九枚の皿を前に、お菊が空いた箱の底を確かめる場面

語りの移り変わり

  1. 近世初期皿を失った女中の亡霊が数を唱える皿屋敷の話が各地で語られる。
  2. 江戸時代播州・番町など異なる土地を舞台にした皿屋敷物が浄瑠璃や歌舞伎になる。
  3. 近代『播州皿屋敷実録』などが、姫路城の陰謀とお菊の忠義を詳しく物語る。
  4. 現在姫路城上山里丸の井戸が、お菊井戸として公開される。

井戸から聞こえる皿の数

弾四郎はお菊を屋敷の松へつるし、鞭で打った。謀反へ加われ、自分の妻になれと迫るが、お菊は応じない。ついには姫路城へ連れて行き、鉄山の前で井戸へ投げ込んだと『播州皿屋敷実録』は語る。

それから夜になると、井戸の中からお菊が皿を数える声がした。一枚から九枚まで数え、十枚目がないと泣く。現在、姫路城の上山里丸にある井戸が「お菊井戸」と呼ばれている。

夜の井戸端で、家人が中から聞こえる皿の数え声に耳を向ける場面
夜の井戸端で、家人が中から聞こえる皿の数え声に耳を向ける場面

播州と番町の皿屋敷

皿を失った女中が殺され、井戸で数を唱える話は各地にある。江戸の番町皿屋敷では、旗本青山主膳の屋敷が舞台となり、恋や奉公をめぐる筋へ変わる。岡本綺堂の戯曲『番町皿屋敷』では、青山播磨とお菊の悲恋として書き直された。

姫路の播州皿屋敷には、城の乗っ取りを防ごうとした密偵の物語が加わる。どれか一つが史実をそのまま記録したものではないが、城内の井戸、家宝の皿、数える声は、土地や舞台を替えて受け継がれた。

井戸の底で、お菊が九枚まで指を折って数える場面
井戸の底で、お菊が九枚まで指を折って数える場面
江戸の芝居小屋で、井戸からお菊が現れる仕掛けを動かす場面
江戸の芝居小屋で、井戸からお菊が現れる仕掛けを動かす場面
月夜の古井戸からお菊の霊が上半身を現し、九枚の皿を数える
月夜の古井戸からお菊の霊が上半身を現し、九枚の皿を数える
SOURCES

主な参考資料