古典怪異図鑑CLASSICAL YOKAI ARCHIVE
奇怪千万古典怪異図鑑手の目
FILE 30 / 夜道・身体

手の目

てのめ

掌に目を持つ盲目の怪人

顔には目がない。代わりに、左右の手のひらから眼球がこちらを見ている。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれた「手の目」は、杖と琵琶を持つ座頭の姿をしている。石燕は詳しい話を書き残さなかったが、それ以前の怪談集には、京都の七条河原で手のひらに目を持つ老人に追われ、骨を抜かれた男の話がある。手で見る妖怪の一枚絵と、夜道の怪談は、後世に一つの物語として結びついた。

月夜の路地で両手の掌の目を開く手の目
月夜の路地で両手の掌の目を開く手の目

七条河原で出会った老人

延宝五年(一六七七)の『諸国百物語』には、京都の七条河原を夜更けに通った男の話が載る。男の前へ、年老いた盲人のような者が現れた。顔には目がないのに、杖をつく両手のひらには一つずつ目が開き、男を見据えていた。

男は近くの寺へ駆け込み、僧に頼んで長持の中へ隠してもらう。老人は寺まで追ってきたが、しばらくすると帰っていった。僧が蓋を開けると、男の体は皮ばかりになっていた。骨は一本残らず抜き取られ、長持の底には血がたまっていたという。

夜道で杖をつく手の目が両掌を開き、掌の瞳だけで旅人を見つめる場面
夜道で杖をつく手の目が両掌を開き、掌の瞳だけで旅人を見つめる場面

語りの移り変わり

  1. 1677年『諸国百物語』に、手のひらに目を持ち、人の骨を抜く老人の話が載る。
  2. 江戸前期妖怪絵巻に、掌に目を持つ人物の図像が描かれる。
  3. 1776年鳥山石燕『画図百鬼夜行』が座頭姿の「手の目」を収録する。
  4. 近現代亡霊の由来や、人を探す能力を加えた物語が妖怪本に広まる。

手のひらで見る座頭

鳥山石燕は『画図百鬼夜行』に、両手を胸の前へ広げた座頭を描いた。眼球は手のひらにあり、顔の目は描かれていない。背には琵琶を負い、傍らには杖が立てかけられている。名は「手の目」。詞書がないため、石燕が七条河原の話を直接描いたかどうかは断定できない。

目の見えない者が、手探りをする手で見るという反転は、一目で意味が伝わる。両手を前へ出せば、どちらを向いていても掌の目が相手を捉える。後世の妖怪本では、殺された盲人が犯人を探すため、手に目を得てさまようという由来も語られたが、これは古典の画集にはない説明である。

夜道で杖をつく盲目の老人姿の怪人へ、旅人が声をかける場面
夜道で杖をつく盲目の老人姿の怪人へ、旅人が声をかける場面

一枚の絵から歩き出した妖怪

石燕以前の妖怪絵巻にも、掌に目を持つ者の図があったとされる。石燕の絵はその姿を整理し、杖と琵琶を持つ座頭として印刷物へ載せた。写本だけで伝わる絵巻と違い、版本は広い地域で読まれ、手の目の名と姿も繰り返し写された。

古い資料から確かに分かるのは、顔に目がなく手に目がある姿までである。夜道で人を追うのか、骨を抜くのか、亡霊なのかは、別の怪談や後世の解釈によって補われた。説明の空白が大きかったため、手の目は絵を見る者の想像を取り込みながら、物語を増やしていった。

手の目が両掌を開き、掌の瞳だけを旅人へ向ける場面
手の目が両掌を開き、掌の瞳だけを旅人へ向ける場面
掌の目が左右別々に動き、暗い道に残る足跡を追う場面
掌の目が左右別々に動き、暗い道に残る足跡を追う場面
旅人が物陰から見守る中、手の目が杖をついて闇へ消える場面
旅人が物陰から見守る中、手の目が杖をついて闇へ消える場面
SOURCES

主な参考資料