千葉県のダムにて・・
一人で心霊スポットへ
カクヨム掲載作品の紹介ページです。脚色を含む実話・モデルのある作品として扱い、全文転載はせず、概要と第1話冒頭のみ掲載しています。
連載状態: 完結済 / ジャンル: ホラー / 収録話数: 5話
概要
一人で色々な心霊スポットに行ってると
理解不可能な現象や不思議な体験にお見舞いされます
しかし、ソレが本当に幽霊なのか疑問です
皆様はどう思われるだろうか・・
目次
- 第1話
- 第2話
- 第3話
- 第4話
- 最終話
第1話
夜のダムは、音が少ない。
少ない、というより——音が「逃げ場を失って」こちらに向かってくる。
車のライトが水面をかすめるたび、黒い鏡みたいな湖面が、ひと呼吸ぶんだけ揺れて、また何事もなかったように静まる。エンジンを切ると、その静けさはもっと露骨になる。静寂というより、耳を塞がれるような無音だ。
私はこの場所に、撮影のために来た。
心霊スポット探索を題材にした実話怪談を始めるため——その第1回の舞台として、ここを選んだ。
ダムのちょうど真ん中あたりに、橋がある。
ただの橋じゃない。橋の真ん中に、トンネルがある。
橋と橋に挟まれて、短いトンネルが“喉”みたいに口を開けている。昼間に見れば珍しい構造で済むはずなのに、夜になると話は変わる。
「……光、届かないな」
13000ルーメンのライトを点けた。数字だけなら強烈な光量だ。なのに、トンネルの奥は薄い霧をまとったみたいに、妙に沈んで見える。光が吸われる、という表現がいちばん近い。
私は撮影用の小型カメラを胸元に固定し、もう一台を手持ちにした。
足音がコンクリートに反響する。軽い反響が、少し遅れて戻ってくるだけで、やけに心細くなる。私はわざと独り言を増やした。
「今日は……この“真ん中にトンネルがある橋”を歩いて確認します。噂では——」
噂。
この場所にまつわる話はいくつかある。慰霊碑の話、観音様と地蔵の話、そして、もっと生々しい話。
私は実話怪談の取材として「噂」を拾うのが仕事みたいになっているが、それでも、夜の現場でその噂を口にするのは、どこか呼び水を差し出す行為に感じる。
トンネルの入り口に、空気の境目があった。
一歩近づくと、温度が変わる。
ダム湖側から吹き上げてくる湿った風が、トンネルの前で止まっているみたいに感じる。私はライトをトンネルへ向けた。
内部は短い。数十メートル程度のはず。
けれど奥にある出口が、やけに遠い。距離感が狂う。
「……行きます」
トンネルの床は乾いているのに、壁が濡れている。
水滴が落ちる音はしない。濡れているだけ。壁のシミが、黒い指跡みたいに見える瞬間があって、私は目を…
