拾った呪物を配信したら、コメント欄から順番に消えていく
見せた瞬間に順番がついた。消えていくのはコメント欄の向こう側からだった
カクヨム掲載作品の紹介ページです。脚色を含む実話・モデルのある作品として扱い、全文転載はせず、概要と第1話冒頭のみ掲載しています。
連載状態: 完結済 / ジャンル: ホラー / 収録話数: 5話
概要
心霊系配信チャンネル『夜架けアーカイブ』を運営する相良冬真は、落ち目のチャンネルを立て直すため、河川敷の骨董市で「持ち帰った者が三人続けて失踪した」と噂される古い鏡台の引き出しを買う。
軽い気持ちで開封配信を始めたその夜、コメント欄に異様な書き込みが流れ始める。
《閉めろ》 《次はコメントした順番だ》 《もう一人消えた》
最初は悪質ないたずらだと思った。だが常連視聴者のアカウントが一人ずつ消え、過去ログや記憶からまでその存在が抜け落ちていく。
冬真は共同運営者の梶原美澄と共に、呪物の由来を追って山間の町・灰和町へ向かう。そこには、引き出しへ“順番”をしまい、鏡にそれを映してきた古い怪異の気配が残っていた。
目次
- 第1話 拾った呪物、開封配信
- 第2話 常連が一人消える
- 第3話 町へ来い
- 第4話 最後の配信
- 最終話 コメント欄の向こう側
第1話 拾った呪物、開封配信
コメント欄から人が消えた瞬間、相良冬真はようやく、自分が本当にまずいものを開けたのだと気づいた。
だが、その時にはもう遅かった。
骨董市で呪物を買う人間は、だいたい二種類いる。
本気で何かを信じているやつと、信じていないふりをして、少しだけ信じたいと思っているやつだ。
冬真は、ずっと自分は後者だと思っていた。
土曜の昼、河川敷のフリーマーケットは風が強かった。古着、レコード、古道具、欠けた食器、錆びた工具、どこから来たのか分からない海外の玩具。そういう雑多な品の中に、その引き出しだけが妙に静かに置かれていた。
古い桐材。横幅は四十センチほど。持ち手の金具は片方だけ欠けていて、表面には細い引っ掻き傷が何本も走っている。鏡台から外された引き出しだと、ひと目で分かる形だった。
見た目だけなら、古い家具の部品にすぎない。
ただ、それだけが妙に色を吸って見えた。周りの品が昼の光の中にあるのに、そこだけ少し陰っているような感じがしたのだ。
画面映えするな、と冬真は思った。
その発想が、たぶん最初から駄目だった。
「兄ちゃん、それ買うの」
声をかけてきたのは店番の老人だった。売る気があるのかないのか分からない顔で、折りたたみ椅子に座っている。
「これ、何の引き出しですか」
冬真がしゃがみ込んで訊くと、老人は少しだけ肩をすくめた。
「鏡台だよ。上はないけどな」
「壊れたんですか」
「さあな」
骨董市の老人の返事なんて、だいたいこんなものだ。知らないのか、知っていて言わないのか、区別がつかない。
「安いなら欲しいです」
そう言うと、老人は冬真の顔をじっと見た。
「動画やる人か」
少しだけ心臓が跳ねた。見覚えがあるのかと思ったが、違った。老人の視線は首から下げた小型カメラへ落ちていた。
「まあ、そうです」
「なら、やめたほうがいい」
商売としては最悪の台詞だった。
冬真は逆に少し興味を引かれた。
「何かあるんですか」
老人は引き出しを見たまま、しばらく黙っていた。
「持ち帰ったやつが、三人続けていなくなった」
風が吹いた。河川敷の…
