御陣山児童遊園

埼玉県

1. 導入

その心霊スポットは、児童遊園だった。
埼玉県久喜市、住宅街のただ中にある。
ブランコと滑り台が並ぶ、ごく普通の公園だ。

名を御陣山児童遊園という。
園内には小さな塚があり、御陣山と呼ばれている。
全国の心霊マップに、この公園は載っている。

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奇怪千万は、その理由を確かめに行った。
正直に言えば、現地で何も起きなかった。
それでも、この一件には書き残す価値がある。

心霊スポットには、本物と偽物がある。
そして偽物が生まれる過程には、決まった型がある。
御陣山は、その型を見せてくれた場所だった。

2. なぜ児童遊園が心霊スポットなのか

最初に違和感があったのは、立地だ。
心霊スポットの多くは、人里離れた場所にある。
廃墟、トンネル、山奥の祠などが定番だ。

だが御陣山は、完全な住宅街の中にある。
周囲を民家に囲まれ、すぐ隣には公民館がある。
子どもが昼間に遊ぶ、生活の場そのものだ。

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それなのに、なぜ心霊マップに載るのか。
奇怪千万には、その落差が引っかかった。
怖い場所ではなく、怖いとされる理由を知りたかった。

噂の中心は、園内の塚にあるという。
かつてその上に、社と石塔があったらしい。
塚は首塚であるという話も、伝わっていた。

首塚という言葉は、確かに不穏だ。
だがそれが事実なのか、誰かの創作なのか。
そこを見極めるために、現地へ向かった。

3. 御陣山という名と、塚の正体

御陣山の名は、いかにも由緒ありげだ。
陣の字は、武士が陣を張った場所を思わせる。
だが調べると、話はそう単純ではなかった。

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この一帯には、御陣山遺跡という遺跡がある。
ただしその時代は、縄文時代まで遡る。
出土品は、市の公民館で展示されているという。

つまり塚の下にあるのは、古代の生活の跡だ。
合戦や処刑の痕跡という記録は、見当たらない。
名前の勇ましさと、中身は必ずしも一致しない。

首塚という説の出どころも、判明した。
園内の案内板に、その由来が刻まれている。
昭和の半ばに建てられた、比較的新しい板だ。

案内板によれば、ある霊覚者がこの地を調べた。
そしてここが昔、首塚であったと発見したという。
それを受けて供養塔が建てられた、とある。

ここが重要だ。
首塚説の根拠は、古文書や発掘ではない。
一人の霊覚者の、霊的な発見が出発点なのだ。

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[youtube]https://youtu.be/XUo7wCn0LWQ[/youtube]

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4. 現地に立つ

奇怪千万は、住宅街の細い道を抜けて公園に入った。
看板も塀もなく、ただ普通の児童遊園が広がる。
遊具が並び、ベンチと水道がある。

園の一角に、こんもりとした塚があった。
これが御陣山だ。
上へ続く、短い階段がついている。

階段を登ると、塚の頂は平らになっていた。
そこに、社も石塔も無かった。
かつてあったというものが、きれいさっぱり消えていた。

残っていたのは、木と、わずかな空き地だけだ。
供養塔があったはずの場所も、判然としない。
心霊スポットの面影は、どこにも無かった。

風が抜け、子どもの声が遠くから届く。
気温が下がる感じも、視線を感じる感じも無い。
ただ静かな、住宅街の小高い場所だった。

5. 何も起きなかったという事実

奇怪千万は、塚の上にしばらく立っていた。
深夜の山奥なら、必ず何かを拾う体質だ。
だがここでは、本当に何も感じなかった。

念のため、写真も数枚撮った。
レンズが曇ることも、妙な光が写ることも無い。
ごく普通の、公園の風景が写るだけだった。

不気味さを探そうとしても、見つからない。
むしろ、手入れの行き届いた明るい場所だ。
桜の木があり、春には花見の名所になるという。

この時、奇怪千万の中で結論は固まりつつあった。
ここは、心霊スポットではない。
少なくとも、現地に残る気配は皆無だ。

正直に書く。
怖い話を期待した人には、肩透かしだろう。
だが嘘の体験を書くことは、奇怪千万にはできない。

6. なぜ心霊マップに載ったのか

では、なぜこの公園は心霊スポットとされたのか。
鍵は、やはり案内板の首塚説にある。
首塚という言葉が、一人歩きしたのだ。

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整理すると、流れはこうだ。
まず霊覚者が、ここを首塚と発見したと唱える。
それを記した供養塔と案内板が、地域に残る。

次に、誰かがその案内板を見つける。
首塚という不穏な単語が、目に留まる。
そこから、心霊スポットの噂が膨らんでいく。

実際の歴史的根拠は、後から問われない。
首塚という言葉と、塚という地形だけで十分だ。
噂は、事実確認を待たずに広がっていく。

御陣山は、その典型例だと奇怪千万は考える。
土地に怪異があるのではない。
言葉が、怪異の気配を後づけで作り出したのだ。

7. 考察

心霊スポットの噂には、二つの種類がある。
一つは、実際の事件や事故が下敷きにあるもの。
もう一つは、言葉やイメージだけで生まれるものだ。

御陣山は、明らかに後者に近い。
縄文の遺跡はあるが、惨劇の記録は無い。
首塚説の根拠も、霊覚者の主張に留まる。

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もちろん、霊覚者の発見を全否定はしない。
だが客観的な裏づけが無い以上、断定もできない。
事実と、信仰や霊感は、分けて扱うべきだ。

そして現地の状態が、結論を後押しする。
社も石塔も無く、気配も無い。
心霊スポットとしての実体が、すでに失われている。

奇怪千万の見立ては、はっきりしている。
御陣山児童遊園は、デマスポットに近い。
怖がるべき場所では、おそらく無い。

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8. 仮説

最後に、一つの仮説を残しておきたい。
デマスポットは、決して無価値ではない。
むしろ、噂がどう生まれるかの標本になる。

人は、不穏な言葉に弱い。
首塚、いわく、霊覚者。
こうした単語が並ぶと、土地に物語が宿る。

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その物語は、事実より速く広がる。
そして一度広がれば、訂正は追いつかない。
御陣山は、いまも心霊マップに載り続けている。

本当に怖いのは、塚の上の闇ではない。
根拠の無い噂が、独り歩きしていく仕組みだ。
奇怪千万は、そこに静かな不気味さを感じた。

何も無い場所を、何も無いと書く。
それもまた、心霊スポット調査の役目だと思う。

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9. アクセス

御陣山児童遊園は、埼玉県久喜市久喜中央にある。
最寄りはJR久喜駅で、西口から歩いて向かう。
道のりはおよそ五百メートル、徒歩で十分ほどだ。

久喜市中央公民館の、すぐ隣が目印になる。
公園の北側には、市の商工会館がある。
住宅街の中なので、案内表示は少ない。

園内には遊具が揃い、昼は子どもが遊ぶ場所だ。
塚は園の一角にあり、短い階段で登れる。
専用の駐車場は無いので、訪問時は注意したい。

くり返すが、ここは生活の場である。
深夜の徘徊や、無断の立ち入りは慎んでほしい。
静かに見て、静かに帰るのが筋だ。

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