宮前JCT下のトンネル

埼玉県
  1. はじめに
  2. 第一章 史料と歴史 古墳と国道が交錯する「宮前」という土地
    1. 1-1. 宮前町の地誌 大宮台地の西端に眠るもの
    2. 1-2. 方墳大塚古墳 宮前町に眠る「未解明の墓」
    3. 1-3. 古代の死者たちが眠る西区の地下
    4. 1-4. 宮前インターチェンジ──コンクリートの巨獣
  3. 第二章 怪異蒐集、ネットの深淵から噂の傾向整理した噂と怪談
    1. 2-1. ネット上の噂を掘る
    2. 2-2. 噂その一「深夜にトンネル内で人影を見た」
    3. 2-3. 噂その二「トンネル内で足音が聞こえる」
    4. 2-4. 噂その三「首のない人影」
    5. 2-5. 噂その四「古墳の祟り」説
    6. 2-6. 噂その五「JCTの工事中に……」
    7. 2-7. 都市伝説「午前2時のクラクション」
  4. 第三章 現地検証 深夜1時、スーパーカブとトンネル
    1. 3-1. 出発──スーパーカブと夜の道
    2. 3-2. 到着 深夜1時すぎ
    3. 3-3. トンネル内部の様子
    4. 3-4. 体感と空気
    5. 3-5. 機材チェック
    6. 3-6. 一つだけ、引っかかったこと
  5. 第四章 噂の出どころ考察 なぜここが「心霊スポット」になったのか
    1. 4-1. 構造的恐怖 トンネルの持つ根源的な不気味さ
    2. 4-2. 歴史的文脈と環境のギャップ
    3. 4-3. SNS時代の心霊スポット生成
  6. 第五章 短編怪談『下のひと』
  7. 第六章 帰路の後味 カブのエンジン音だけが友達
  8. スポットデータ
  9. 参考文献・情報源
  10. おわりに
    1. 同じ都道府県の心霊スポット
    2. 同じ種別の心霊スポット
    3. 同じ噂の怪談・心霊スポット
  11. 関連する心霊スポット

はじめに

どうも、奇怪千万です。

今回訪れた場所は、埼玉県さいたま市西区宮前町に位置する心霊スポット『宮前JCT下のトンネル』。

……え? 知らない? そう、知らなくて当然だ。
全国的に有名なスポットではない。
畑トンネルや秋ヶ瀬公園みたいにメディアで取り上げられたこともない。

だけど、だからこそ僕はここに来た。
誰も注目していない場所にこそ「本物」が潜んでいることを、14年以上の単独検証で嫌というほど知っている。

国道16号と国道17号が頭上で交差する巨大なジャンクション。
その足元に、ぽっかりと口を開けたトンネルがある。
深夜、車も人も通らない。
頭上では大型トラックがひっきりなしに走り、重低音だけが響く。

今回は、このマイナー心霊スポットの歴史を掘り下げ、現地で単独検証を行い、ネット上の噂や怪談を噂の傾向整理し、このトンネルが「心霊スポット」として語られる理由を考察していく。

いつも通り、立場は中立。
肯定も否定もしない。
現場で感じたことを正直に書く。

では、始めよう。

トンネル入り口の周囲。何もない・・あるのは道路だけ

第一章 史料と歴史 古墳と国道が交錯する「宮前」という土地

1-1. 宮前町の地誌 大宮台地の西端に眠るもの

宮前JCT下のトンネルを語るには、まずこの「宮前」という土地そのものを知る必要がある。

さいたま市西区宮前町。現在は住宅地と幹線道路に囲まれた、一見すると何の変哲もないベッドタウンの一角だ。しかしこの土地には、想像以上に深い歴史が刻まれている。

宮前町は大宮台地の西縁部に位置している。大宮台地というのは、関東平野のほぼ中央に広がる洪積台地で、標高はおおむね10〜20メートル程度。台地の縁辺部は、かつて荒川やその支流が作り出した低地と接しており、古代から人々が暮らしを営むには絶好の地形だった。

台地の上は水はけがよく居住に適し、台地の下は水利に恵まれ農耕に適する。そしてこの条件は、同時に「墓を作るにも適している」ということを意味していた。

1-2. 方墳大塚古墳 宮前町に眠る「未解明の墓」

宮前町には、埼玉県指定史跡『方墳大塚古墳』がある。
底辺21m×25m、高さ約4mの方墳で、1958年に県史跡に指定された。
場所は国道16号線の「大塚古墳」交差点のすぐ南、JR川越線の踏切の手前。宮前JCTからも目と鼻の先だ。

重要なのは、この古墳が一度も発掘調査されていない点だ。
葺石の有無、埴輪の有無、内部構造、築造時期
何一つわかっていない。

かつて周辺には「大塚古墳群」を形成する小古墳が複数あったが、この方墳以外はすべて宅地開発で破壊・消滅している。
仲間を全員失った孤独な古墳が、国道のそばでひっそり取り残されている。

しかも一部研究者からは「古墳ではなく経塚(仏教経典の埋納施設)ではないか」との指摘もある。
誰が、何のために、この土を盛り上げたのか。
1300年以上経った今も、答えは出ていない。

この「わからなさ」が、この土地に独特の空気を漂わせている。

1-3. 古代の死者たちが眠る西区の地下

方墳大塚古墳だけではない。
西区には「植水古墳群」(水判土〜佐知川付近)をはじめ、複数の古墳群が点在していた。
鉄製の直刀や勾玉、銀環などが出土しており、5世紀末から7世紀前半にかけて有力者たちがこの一帯で暮らし、死んでいった。

さいたま市域全体では、確認された古墳は約120基。
そしてまだ地中に眠る未発見の古墳も多数あると推定されている。

つまり、この土地は「死者の上に成り立っている」のだ。

1-4. 宮前インターチェンジ──コンクリートの巨獣

宮前インターチェンジ(宮前IC)は、国道16号(西大宮バイパス)、国道17号(新大宮バイパス)、国道17号(上尾道路)が接続する大規模立体交差だ。
構造上は実質ジャンクション(JCT)と呼んだ方が正確だろう。

新大宮バイパスは練馬区からさいたま市北区に至る片側3車線の大動脈で、首都高速埼玉大宮線も高架で併設されている。
この宮前ICには信号機が一切なく、車両は法定速度のまま通過できる。
そしてこの巨大な高架の地上部をJR川越線がアンダーパスし、県道216号が横切っている。

ここだ。ここに、「あのトンネル」がある。

国道16号と国道17号の高架が何層にも重なり合い、その下に生まれた暗い空間。深夜、車も人も通らない。
頭上では大型トラックがひっきりなしに走り、重低音だけが響く。

このトンネルが心霊スポットとして囁かれるようになったのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

第二章 怪異蒐集、ネットの深淵から噂の傾向整理した噂と怪談

2-1. ネット上の噂を掘る

さて、ここからは僕がネットの海をできるだけさらって集めた、宮前JCT下のトンネルにまつわる噂や証言をまとめていく。

先に言っておくと、このスポットに関しては確固たる「心霊事件」のソースは存在しない。
大手心霊スポットサイトでも単独で大々的に取り上げられているわけではない。
だからこそ、5ちゃんねるの過去ログ、個人ブログ、各種SNSの断片的な書き込み、地元住民の口コミなどを丁寧に拾い上げる必要があった。

以下、裏が取れていないものも含めて、噂の傾向整理の結果を報告する。

2-2. 噂その一「深夜にトンネル内で人影を見た」

最も多く見られる証言がこれだ。

「深夜にトンネルを通ったら、出口付近に人が立っているように見えた」 「近づいたら誰もいなかった」

このタイプの報告は、主に車でバイパスの側道を通行中のドライバーや、近隣住民の犬の散歩中の目撃談として散見される。

ただし、これには合理的な説明が可能だ。トンネル内の照明と外の暗闇のコントラストによって、柱や構造物の影が人影のように見える「パレイドリア現象」の可能性が高い。人間の脳は暗闇の中で「人の形」を認識しようとする傾向がある。

……とはいえ、「全部が全部パレイドリアで片付くのか」と言われると、僕は断言できない。

2-3. 噂その二「トンネル内で足音が聞こえる」

これもちらほら見かける証言。

「誰もいないはずのトンネルの中から、ペタペタと裸足で歩くような音が聞こえた」 「自分の足音とは明らかにリズムが違う足音がついてきた」

上部を走る国道16号・17号の走行音や振動が、トンネル内部の構造で反響し、足音のように聞こえる可能性は十分にある。コンクリートのボックスカルバート構造は音を増幅・変質させやすい。

しかし、「裸足の足音」という具体的な描写には少し引っかかるものがある。複数の無関係な証言者が似たような音の特徴を報告している場合、単なる反響音では説明しきれない何かがあるのかもしれない。

……あるいは、僕が心霊スポットに行きすぎて、感覚がおかしくなっているだけかもしれないが(笑)。

2-4. 噂その三「首のない人影」

これはかなり具体的な証言だ。

大宮西部エリアの心霊スレッドに、かつてこんな書き込みがあったとされている。

「宮前のJCTの下のとこ、首から上がない人が立ってるの見た。怖くて走って逃げた」

首のない霊の目撃というのは、古戦場や処刑場跡に多い典型的なパターンだ。
さいたま市西区周辺は、直接的な古戦場の記録は乏しいものの、前述の通り古墳時代から人々が葬られてきた土地であり、中世には武蔵国の勢力争いの舞台にもなっている。

また、近隣の秋ヶ瀬公園の心霊噂でも「首のない幽霊」が頻出しており、大宮周辺の心霊伝承における一種の「定型」となっている可能性もある。

裏は取れていないし、確たる根拠もない。
しかし、この手の噂は「まったくのゼロ」から生まれることは少ない。
何らかのきっかけ──誰かの体験、あるいは土地の記憶──が核になっていることが多い。

2-5. 噂その四「古墳の祟り」説

方墳大塚古墳の存在を知っている地元の古参住民の間では、こんな話も語られているようだ。

「あのへんは昔からよくないことがある。古墳を壊したせいだ」

前述した通り、大塚古墳群のうち方墳大塚古墳以外の古墳はすべて宅地開発で破壊されている。
日本各地で「古墳を壊すと祟りがある」という伝承は珍しくない。

実際、古墳の調査をせずに開発を進めた結果、工事関係者に不幸が続いたという都市伝説は、埼玉県内だけでも複数存在する。

宮前町の場合、2017年(平成29年)に大宮西部特定土地区画整理事業の換地処分が行われ、大規模な宅地開発が進んだ。
このタイミングで「トンネル付近の雰囲気が変わった」「何かを感じるようになった」という声がSNS上で散見されるようになった。

偶然かもしれない。
だが、古墳群が次々と破壊された土地の上に巨大なコンクリート構造物が作られ、その足元の暗いトンネルに「何かがいる」という噂が立つ。

……あまりにも出来すぎた話ではないか。

2-6. 噂その五「JCTの工事中に……」

これは真偽不明の、かなり古い噂だ。

宮前ICの建設工事中、基礎を掘削していた際に「人骨のようなもの」が出土したという話がある。
工事は一時中断されたが、結局は詳細な調査が行われないまま続行されたとも。

この手の話は全国の道路建設現場で語られる定番中の定番であり、都市伝説の可能性も高い。
しかし、前述のようにこの一帯は古墳密集地帯であり、未発見の周溝や埋葬施設が地中に残されている可能性はさいたま市立博物館も認めている。

「もし本当に出てたとしても、工期に影響が出るから黙ってるだろ」

こういう身も蓋もない指摘をする人もいるが、まあ、ノーコメントでいこう。

2-7. 都市伝説「午前2時のクラクション」

個人ブログから拾った話。
「宮前JCTの下を深夜2時に通ると、トンネルの奥からクラクションの音が聞こえる」。
上を走る車両の音が構造物内で反響して方向感覚を狂わせる──という合理的な説明は可能だが、「奥から聞こえてくる」という部分に証言者たちは強いこだわりを見せている。

まあ、そこから先は読者の想像にお任せする。

第三章 現地検証 深夜1時、スーパーカブとトンネル

3-1. 出発──スーパーカブと夜の道

検証日は某日の深夜。愛車ホンダ・スーパーカブ110にまたがり、夜の道を走る。僕の検証は必ず深夜帯で、移動手段はこのカブだけ。車や電車は使わない。

理由は「バイクの方が空気を直接感じられるから」。密閉空間に守られていたら、現場の温度変化も空気の質感も感じ取れない。あとシンプルにカブが好きだから。相棒みたいなもんだ。

3-2. 到着 深夜1時すぎ

宮前JCT付近に到着したのは深夜1時すぎ。

まず目に飛び込んでくるのは、頭上を覆う巨大なコンクリートの高架構造物だ。国道16号と国道17号が何層にも重なり合い、まるで現代のピラミッドのようにそびえ立っている。

少し離れた場所には民家がある。
しかし、このトンネル周辺には民家はなく、文字通り「誰もいない空間」が広がっている。

一体何の目的で作られたトンネルなのだろうか
到着した瞬間、まずその疑問が頭をよぎった。

トンネルの上部は国道16号と国道17号のため、夜中でも車の通りは多い。
大型トラックの走行音がゴーッと途切れることなく聞こえてくる。

しかし、だ。

このトンネル周囲には車はおろか、人が一人も通らなかった。

僕は検証中、約1時間ほどこの場所に滞在したが、その間、誰一人として姿を見かけなかった。
頭上では何百台もの車が行き交っているというのに、足元のこの空間だけが完全に時間から切り離されたかのように静まり返っている。

この「上の喧騒」と「下の静寂」のコントラスト。これが、このスポットの最大の特徴であり、最大の異質さだと僕は感じた。

3-3. トンネル内部の様子

スーパーカブを少し離れた場所に停め、徒歩でトンネルに近づく。

トンネルは歩行者・自転車用の地下通路のような構造で、ボックスカルバート型の断面をしている。照明は最低限のものが設置されているが、深夜帯は薄暗いの一言に尽きる。

内部に入ると、まず感じるのは「反響」だ。自分の足音が壁に跳ね返って、微妙なタイムラグで返ってくる。
これだけで、まるで「誰かがついてきている」かのような錯覚に陥る。

そしてもう一つ。
上部を走る車両の重低音が、トンネル全体をわずかに振動させている。
腹の底に響くような、不快とまでは言わないが「心地いい」とは絶対に言えない音だ。

壁面にはところどころ水染みがあり、部分的にコンクリートが黒ずんでいる。心霊関係なく、美観的にはあまり気持ちの良いものではない。

空気の質感は、どう表現すればいいだろう。
外気よりも明らかに冷たく、湿度が高い。夏場であっても、トンネル内部に入った瞬間にひんやりとした空気が肌を撫でる。

これは構造物の性質上、当然のことだ。日光が当たらず、コンクリートに囲まれた半密閉空間は、外気温より低くなりやすい。

理屈はわかっている。わかっているのだが・・・。

3-4. 体感と空気

ここからは、完全に僕の個人的な体感の話になる。

何かがあったわけではない。霊が出たわけでもない。

しかし、不穏な雰囲気は確かにあった。

これは心霊スポットを10年以上回ってきた人間の感覚として言うが、「何もないけど雰囲気がある」スポットは実は一番厄介だ。

はっきり何かが起きてくれれば、むしろすっきりする。
ラップ音が鳴れば「お、来たな」と思えるし、サーモグラフィーに反応があれば記録として残せる。

でも、ここにはそういう「わかりやすい反応」は何もなかった。

あるのは、ただ・・・。

頭上の車の走行音と、自分の足音と、そしてそれらの反響だけが支配する空間の中で、「ここにいてはいけない」と全身が訴えてくるような、理屈では説明できない圧迫感だった。

14年以上心霊スポットを回ってきた中で、僕はこの感覚を「おかしい」とは思わない。
むしろ、「何かある場所」に共通する特徴の一つだと考えている。

もちろん、これは科学的な根拠に基づいた話ではない。
心理学的には「暗所恐怖」「反響音による不安増幅」「孤立感による過緊張」で説明できるかもしれない。

でもね。真夜中に一人で来てみればわかるよ。
理屈じゃない「何か」があるって。

……まあ、来ることはおすすめしないけど(笑)。

3-5. 機材チェック

EMFは上部の大量車両通行によるバックグラウンドノイズが高すぎて判別困難。サーモグラフィーの局所的温度変化はコンクリート構造物の蓄放熱の範囲内と判断。ばけたんは・・・・まあ、いつも通り。参考程度だ。

3-6. 一つだけ、引っかかったこと

検証中、一つだけ気になることがあった。

トンネルの奥から出口方向に向かって歩いていたとき、背後から「カン」という金属音が一度だけ聞こえた。

振り返っても何もない。上の走行音とは明らかに質が違う、硬質な金属が何かにぶつかったような音。

おそらくは、構造物の熱膨張か、配管の伸縮、あるいは野良猫が何かに触れた音だろう。

そう思うことにした。

第四章 噂の出どころ考察 なぜここが「心霊スポット」になったのか

4-1. 構造的恐怖 トンネルの持つ根源的な不気味さ

そもそも、人間はトンネルが怖い。

これは文化や時代を超えた、ある種の本能的な恐怖だ。
入口から出口が見えない閉鎖空間、逃げ場のなさ、光と闇のコントラスト。トンネルには「恐怖の条件」が構造的に揃っている。

日本の心霊スポットの中で、トンネルが占める割合は非常に高い。
畑トンネル、旧吹上トンネル、犬鳴トンネル──。
日本人の心霊文化において、トンネルは「異界との境界」として機能してきた。

宮前JCT下のトンネルも、この「トンネル=異界」という文化的コードの延長線上にある。

しかも、このトンネルは通常のトンネルとは異なる特殊な要素を持っている。

それは、「頭上に巨大な構造物がある」という点だ。

山をくり抜いたトンネルや、丘を通過するトンネルとは異なり、宮前JCT下のトンネルは人工物の下に存在する。
頭上を何百トンものコンクリートが覆い、その上を何千台もの車両が走り、その重量と振動が常に足元に伝わってくる。

この「人工的な圧迫感」が、通常のトンネルにはない独特の恐怖を生んでいると僕は考える。

4-2. 歴史的文脈と環境のギャップ

古墳時代から死者が葬られてきた土地に、巨大なコンクリート構造物が建ち、その足元に暗いトンネルが口を開けている。
「あそこは昔から……」と前置きで始まる話は、心霊スポットの噂が生まれる典型パターンだ。

そしてこのトンネルが心霊スポットとして語られる最大の理由は「環境のギャップ」にあると僕は考えている。
頭上の国道は24時間車が途切れず、騒音が絶えない。
しかしトンネル周囲は深夜になると人も車もまったく通らない。

「騒音の中の静寂」「喧騒の中の孤立」この矛盾が、「何かがおかしい」という感覚を増幅させる。

4-3. SNS時代の心霊スポット生成

2010年代後半以降、大宮西部特定土地区画整理事業で大規模開発が進み、新住民が流入。
SNS上に「あのJCTの下、やばくない?」といった断片的な投稿が現れ始めた。

SNS時代の心霊スポットは、こうした感想の集積から生まれる。Twitterの一言、5ちゃんの書き込み、TikTokの短い動画─それらが相互に参照され、やがて「心霊スポット」という共通認識が形成されていく。

宮前JCT下のトンネルは、このプロセスの途上にあるスポットだ。まだ「完成された心霊スポット」にはなっていない。しかし、その素地は十分にある。

第五章 短編怪談『下のひと』

これは、さいたま市西区に住む会社員Aさんから聞いた話だ。

2020年に宮前町の新築マンションに越してきたAさん。ある冬の夜、残業で終電を逃し、タクシーも捕まらず、仕方なく大宮駅から歩いて帰ることにした。

深夜2時すぎ。新大宮バイパス沿いを西へ歩き、宮前ICの高架が見えてきた。JCTの下を通るトンネルに差しかかった。いつも電車の窓から見ている場所だが、歩いて通るのは初めてだった。

薄暗いトンネルに入った瞬間、ふと足元を見た。水たまりがあった。前日の雨だろう。

しかし、その水たまりに映っていたのは
Aさんの顔ではなかった。

知らない人間の顔が、水面からこちらを見上げていた。男か女かもわからない。ただ、目が合った。
水面の顔が、にやりと笑った。

全力で走った。マンションまで一度も振り返らなかった。

翌朝、靴の裏を見ると泥がべっとりついていた。そして泥の中に
小さな古い銅銭が一枚、めりこんでいた。寛永通宝だった。

水たまりの底にそんなものがあるはずがない。
あるいは、水たまりの「底」は、僕らが思っているよりもずっと深いのかもしれない。

「あそこには、”下のひと”がいるんですよ」

Aさんはそう言って話を締めくくった。

第六章 帰路の後味 カブのエンジン音だけが友達

検証を終え、スーパーカブにまたがる。
エンジンをかけると、単気筒がドドドッと目覚める。
この音を聞くといつも安心する。
心霊スポットからの帰り道、カブのエンジン音は「日常への帰還」の合図だ。

正直に言おう。今回、「明確な心霊現象」には遭遇しなかった。ラップ音も、オーブも、機材の異常反応も、目に見える霊体も、何もなかった。

でも、あの場所には「何か」があった。幽霊かもしれないし、土地の記憶かもしれないし、僕自身の心理的バイアスかもしれない。

確実に言えることは一つ。
「用がない限り深夜に一人で行く場所ではない」。
心霊的にも防犯的にも。
……僕が言えた義理じゃないけど(笑)。

宮前JCT下のトンネル。
古代からの死者の記憶と、現代のコンクリートの巨獣と、深夜の異様な静寂が重なり合うこの場所には、「何かが芽生える土壌」がある。

10年後、ここがどう語られているか。僕にもわからない。

エンジン音が闇に溶けていく。帰ろう。今日も一日、生き延びた。

スポットデータ

名称: 宮前JCT下のトンネル(通称)
所在地: 埼玉県さいたま市西区宮前町付近
アクセス: JR川越線「西大宮駅」より徒歩約10〜15分
カテゴリ: トンネル(地下道・アンダーパス)
心霊恐怖度: ★★★☆☆☆☆☆☆☆
雰囲気度: ★★★★★★★☆☆☆
アクセス難度: ★★☆☆☆☆☆☆☆☆

注意事項: ・深夜の一人歩きは防犯上おすすめしません ・近隣住宅地への配慮を忘れずに ・心霊スポット訪問は自己責任で ・不法侵入は絶対にやめましょう

周辺スポット:
・方墳大塚古墳(徒歩圏内、埼玉県指定史跡)
・七里殺人の森(さいたま市見沼区)
・秋ヶ瀬公園(さいたま市桜区)

参考文献・情報源

文献・公的資料:
・さいたま市立博物館「展示web解説(古墳時代)」
・さいたま市「文化財紹介 方墳大塚古墳」
・「新編埼玉県史 資料編2」埼玉県、1982年
・Wikipedia「方墳大塚古墳」「新大宮バイパス」「宮前インターチェンジ」各項目

心霊関連情報:
・全国心霊マップ(ghostmap.jp)
・心霊スポットスレまとめ(psychic-spot.chobi.net)
・5ちゃんねるオカルト板過去スレッド ・ウワサの心霊話(sinreikousatu.jp)
・各種個人ブログ・SNS上の証言

現地調査: ・筆者(奇怪千万)による単独検証

おわりに

最後まで読んでくれてありがとう。

宮前JCT下のトンネルは「ド派手な心霊スポット」ではない。
でもね、僕はこういうスポットが好きなんだ。
誰も注目していない場所に一人で行って、一人で感じて、一人で考える。
そこにこそ醍醐味がある。

「へえ、こんな場所があるんだ」と思ってくれたら嬉しい。
「自分も行ってみよう」と思った人は・・・
止めないけど、くれぐれも気をつけて。

次回の検証もお楽しみに。

奇怪千万

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