
はじめに なぜ私はこの場所を選んだのか
正直に言おう。
最初にこのスポットを知ったのは、ニコニコ生放送の公式番組「三和交通で逝く心霊スポット巡礼ツアー」だった。横浜のタクシー会社・三和交通が毎年夏に開催しているあの伝説的な企画である。毎年応募が殺到して倍率60倍とも言われるあのツアーだ。
その放送回で、タクシーの運転手がこう言った。
「ここは地元の人間の間じゃ、かなり恐れられてる場所ですよ」
その一言が、私の好奇心に火をつけた。
心霊スポット調査を続けて14年。
全国各地のスポットを深夜に単独で巡ってきた私だが、「地元民が怖がる場所」というのは一つの重要な指標である。
ネットで話題になるスポットの中には、正直なところ雰囲気だけで心霊スポット扱いされている場所も少なくない。
しかし、その土地で生まれ育った人間が「あそこだけは別だ」と口を揃える場所には、何かがある。
少なくとも、何かがあった。
そして私は、愛車ホンダ・スーパーカブ110のエンジンをかけた。目的地は山梨県大月市笹子町。深夜の甲州街道をひた走る。

第一章 笹子という土地が背負う歴史
笹子墓地の話をする前に、まずはこの「笹子」という土地について知っておく必要がある。なぜなら、この場所の不気味さは墓地単体ではなく、土地そのものが持つ歴史の重層性から来ているからだ。
甲州街道最大の難所
笹子峠は標高1,096メートル。江戸時代、甲州街道の45ある宿場のうち、最も恐れられた難所がこの笹子峠越えだった。
浮世絵師・歌川広重は『甲州道中記』の中で、この峠を「笹子峠ト云フ大難所、さみしき山也、殊之外高シ深山也」と記している。殊の外高し、深山なり。つまり「とんでもなく高い、深い山だ」と。江戸の絵師をして、そう言わしめる場所だったのだ。
甲州街道は江戸幕府が非常時に将軍が甲府へ避難するための軍事道路として整備した五街道の一つであり、その最大の障壁がこの笹子峠だった。旅人たちは黒野田宿から駒飼宿まで、二里半(約10キロ)の険しい山道を越えなければならなかった。
武田滅亡の残響
そして、この土地にはもう一つ、暗い歴史が刻まれている。
天正10年(1582年)。織田・徳川連合軍に追われた武田勝頼は、笹子峠を越えて大月方面に逃れようとした。しかし、駒飼の地で重臣・小山田信茂がまさかの裏切り。行き場を失った勝頼は天目山の麓・田野で妻子とともに自害し、甲斐武田氏は滅亡した。
勝頼の妻の辞世の句が残っている。
「黒髪の 乱れたる世ぞ はてしなき 思いに消ゆる 露の玉の緒」
440年以上前の無念が、この山中に染みついている。笹子から天目山にかけての一帯は、武田家滅亡という巨大な悲劇の舞台だったのだ。
笹子トンネル天井板崩落事故
さらに時代を現代に移せば、2012年12月2日。中央自動車道の笹子トンネルで天井板が約138メートルにわたって崩落し、9名の方が亡くなるという大惨事が起きている。コンクリート板一枚の重さは約1.2トン。それが約270枚、走行中の車両に降り注いだ。
この事故の後、笹子トンネルでは犠牲者の霊が出るという噂が広まった。しかし、実はそれ以前から旧笹子隧道では少女の霊の目撃談があり、笹子という土地全体が心霊的な噂と無縁ではなかったのだ。
つまり、笹子墓地は「もともと霊的な噂が絶えない土地」の中に存在する墓地ということになる。これは、かなり重要なポイントだと私は思う。

第二章 笹子墓地、山を切り開いた死者たちの住処
墓地の概要
笹子墓地は、大月市笹子町に位置する山間部の墓地である。
一般的な平地の霊園をイメージしてもらっては困る。
ここは山の斜面を切り開いて造成された、いわば「山岳墓地」なのだ。
墓石は山の斜面に張り付くように並んでおり、墓参りというより軽い登山に近い。
入口から奥に進むにつれて標高が上がり、道は細くなり、闇は深くなる。
そして、この墓地の入口側に、噂の核心がある。
無縁仏の墓と供養碑だ。
無縁仏とは何か
無縁仏とは、供養してくれる縁者がいない仏のことだ。
死後に弔ってくれる人がいないため、民俗信仰においては祖霊になることができない存在とされる。
人知れず非業の死を遂げた者、行き倒れのまま放置された者。
そうした人々の魂は、行き場を失ったまま彷徨うと考えられてきた。
笹子のような甲州街道の難所では、江戸時代から行き倒れは珍しくなかったはずだ。
峠越えの途中で力尽き、山中で息絶えた旅人。
名前も出身地もわからない。そうした人々がここに集められ、まとめて供養されたのだろう。
近年の日本では少子高齢化や核家族化の進行により、年間8,000柱以上が新たに無縁仏になっているという統計もある。
しかし笹子墓地の無縁仏は、現代のそれとは成り立ちが異なる。
数百年の間に、この山中で行き倒れた旅人や、身元不明のまま葬られた人々のものだ。
名前も知らない。いつの時代の人かもわからない。
ただ、確実に「ここで死んだ誰か」がいる。
その事実だけで、十分すぎるほどの重みがある。

第三章 深夜の現地検証─午前1時、スーパーカブを停めて
到着
深夜1時。
スーパーカブのエンジンを切ると、一瞬で世界が静寂に包まれた。
ヘルメットを外すと、山の冷気が頬を打つ。
都内とはまるで違う冷え方だ。
刺すような冷たさというより、骨の芯にゆっくり浸透してくるような、湿った寒さ。空気に重量がある、とでも言えばいいのだろうか。
周囲は完全な暗闇。
街灯など当然ない。私が持参した懐中電灯の光だけが、唯一の拠り所だ。
鼻腔に入ってくるのは、土と苔と、何か甘いような腐葉土の匂い。
山の匂いだ。
しかし、どこかそれだけではない気配がある。
五感が勝手に研ぎ澄まされていく感覚。
これは心霊スポットを回り始めた頃にはなかった感覚で、経験を重ねるうちに身についた一種の「勘」のようなものだと思う。
正直に言うと、この時点でもう怖い。
いや、怖いなんてものではない。怖すぎる。
軽く登山です
さて、いざ墓地に足を踏み入れると
あのね、聞いてほしいんだけど、軽く登山なのだ。
墓参りに来たはずが、なぜ私は山を登っているのだろうか。
足元はゴツゴツした岩と湿った土。傾斜もそこそこある。
深夜1時に一人で山岳墓地を登る人間が、日本にどれだけいるのだろう。
少なくとも正気の人間のやることではないな、と自分でも思う。
懐中電灯の光が墓石を照らすたびに、影が揺れる。いや、影が揺れるのは当然だ。
光源が動いているのだから。
わかっている。わかっているのだが、人間の脳というのは厄介なもので、深夜の墓地では「揺れる影」のすべてが怪しく見える。
左手に墓石の列。
右手にも墓石の列。
斜面に張り付くように並ぶその光景は、どこか集合住宅の窓明かりにも似ている。ただし、住人はとっくにこの世の人ではない。
「気配」について
道中、何度か立ち止まった。
何かの気配がする。
これを「霊の気配だ」と断言するつもりはない。
私は心霊肯定派でも懐疑派でもない。
中立の立場を貫いている。
ただ事実として、木々の間から何かに見られている感覚は確かにあった。それが動物なのか、風が作り出した錯覚なのか、あるいは・・・別の何かなのか。
14年間心霊スポットを回ってきた経験上、説明できない不思議な現象に遭遇したことは確かにある。
動画にはっきり映っているものも少なくない。
しかし私は、すべてを「心霊現象」と結論づけたくはない。
ただ、この山には「何かいる」という感覚だけは、否定しようがなかった。
私は呼ばれたのか?
ここで一つ、不思議な出来事を報告しておかなければならない。
私はいつも、心霊スポットに行く前に曰くを調べない。
先入観を持ちたくないからだ。
場所だけ調べてナビに入れ、現地で撮影し、帰宅後に曰くを調べる。
これを14年間徹底している。
今回もそのスタイルで笹子墓地に来た。
山の斜面を登りながら撮影していたのだが、途中でなぜか足が止まった。上にはまだ道が続いているのに、私は無意識に方向転換して、入口側
つまり無縁仏の方へと向かっていたのだ。
自分でもよくわからなかった。「なんとなく」としか言いようがない。
帰宅後、笹子墓地の曰くを調べて驚いた。
このスポットの核心は、まさにその「無縁仏の墓と供養碑」だったのだ。
偶然かもしれない。
無意識に入口付近の異様な雰囲気を感じ取って、そちらに足が向いただけかもしれない。
もし仮に、無縁仏たちが「こっちだよ」と呼んでいたのだとしたら?
そう考えると、背筋に冷たいものが走った。
期待とのギャップ
正直に言おう。
来る前は「墓地だから怖いだろうな」くらいの感覚だった。
墓地系のスポットは、都市部のものだと周囲が明るすぎて怖さ半減ということも珍しくない。
千駄ヶ谷トンネルの記事で書いた通り、「ここが心霊スポット? 冗談でしょ?」と思った場所も少なくない。
しかし笹子墓地は、完全に予想の上を行った。
ギャップの正体は「山」だ。
通常の墓地であれば、最悪の場合でも走って逃げれば数十秒で公道に出られる。しかし山岳墓地はそうはいかない。
逃げるにも山を下りなければならない。
しかも足元は暗くて滑りやすい。追われたら(誰に?)逃げ切れない。この「逃げ場のなさ」が恐怖を何倍にも増幅させるのだ。
来る前のイメージ:ちょっと怖い墓地
現実:深夜の山岳登山 × 無縁仏 × 逃げ場なし
掛け算が過ぎる。恐怖のフルコースである。

第四章 噂の出どころを考察する
笹子墓地にまつわる噂をテキストマイニングしてみると、いくつかの類型に分けられる。
噂①:無縁仏のうめき声が聞こえる
深夜に墓地の入口付近を通ると、どこからともなく低い呻き声のようなものが聞こえるという噂。声の主は不明だが、無縁仏として葬られた行き倒れの旅人ではないかと囁かれている。
裏取り状況:裏は取れていない。
しかし、山間部では風の通り道によって「声のような音」が生じることは珍しくない。笹子川の水音が地形に反響して人の声のように聞こえる可能性もある。ただし、それを知ったうえでなお「あの音は普通じゃない」と言う地元民がいるのも事実だ。
噂②:墓地の奥で人影が動く
夜間に墓地の斜面上部で、人影のようなものが動くのが目撃されるという。複数の目撃証言があるが、いずれも「ぼんやりとした影」であり、はっきりとした姿は確認されていない。
裏取り状況:未確認。
ただし動物(鹿やイノシシ、タヌキなど)の可能性は高い。
山間部の墓地ではこれらの動物が頻繁に出没する。
しかし、目撃者の中には「二足歩行だった」と証言する者もいる。
噂③:写真に不可解なものが映る
笹子墓地で撮影した写真に、本来いるはずのない人影やオーブ(光の球)が映り込むという報告。
特に無縁仏の供養碑付近での撮影で多いとされる。
裏取り状況:オーブに関しては、カメラのレンズに付着した水滴や塵がフラッシュの光を反射して球状に映る現象として科学的に説明可能。人影に関しては検証が必要。
噂④:墓地を訪れた後に体調を崩す
肝試しで訪れた若者が、帰宅後に原因不明の高熱や頭痛に襲われたという噂。「霊障」として語られることが多い。
裏取り状況:裏は取れていない。夜間の山間部は気温が低く、十分な防寒をせずに長時間滞在すれば体調を崩すのは当然である。心理的なストレスによる自律神経の乱れも考えられる。
噂⑤:三和交通の運転手が語った「地元の恐怖」
ニコニコ生放送の心霊巡礼ツアーで、タクシー運転手が「地元民の間では恐怖のスポット」と証言している。
具体的にどのような現象が恐れられているかは放送内では詳述されていないが、「あそこは夜に近づかない方がいい」という認識が地域に共有されているという趣旨の発言があった。
裏取り状況:放送のアーカイブで確認可能。
ただし「地元民」の範囲や具体的な恐怖体験の内容は不明。
タクシー運転手という職業柄、夜間に様々な場所を通るため、実体験に基づいている可能性はある。
噂の総評
全体的に、裏の取れている噂は一つもない。
しかし、複数の異なるソースから似たような証言が出ていること、そして何より「甲州街道の難所」「武田滅亡の地」「笹子トンネル事故」という歴史的な死のレイヤーが何重にも重なっている土地であることを考えると、単なる「雰囲気スポット」として片付けるには、どうにも引っかかるものがある。
噂というのは、0から生まれることはない。何かしらの「種」がある。その種が事実なのか、錯覚なのか、あるいは集合的な恐怖心が生み出した幻なのか。それを判断するのは、この記事の読者に委ねたい。

第五章 地元に伝わる二つの怪談
ここからは、地元の方から聞いた話を二つ紹介する。
言っておくが、これはあくまで「地元の方がそう語った」という事実の記録であり、内容の真偽は保証しない。怖がりの方は、ここから先は電気をつけて読むことを推奨する。
怪談その一「道案内」
これは、大月市に住んでいる20代の男性から聞いた話だ。
その男性が高校生だった頃、同級生の一人が肝試しで笹子墓地に行ったという。夏休みのことだ。
その同級生は友人二人と、夜の10時頃に自転車で墓地に向かった。
懐中電灯を片手に斜面を登り始めたのだが、途中で一人が「もう無理だ」と引き返し、もう一人も「トイレに行きたい」と言い出して下に降りた。
残されたのは同級生一人。意地になってさらに上を目指した。
すると、斜面の上の方から、ぼんやりと白い光が見えた。
懐中電灯とは違う、もっと柔らかい、ぼやけた光だ。不思議と怖くはなかった。むしろ、その光に導かれるように足が動いた。
気がつくと、無縁仏の供養碑の前に立っていた。
おかしい。上に登っていたはずなのに、入口付近にある供養碑の前にいる。つまり、知らないうちに斜面を下りていたことになる。
同級生は首をかしげながら、友人たちの待つ入口に戻った。二人は彼の顔を見て悲鳴を上げた。
「お前、顔、白いぞ」
鏡で確認すると、確かに異常に顔色が白かった。そして何より──自分が上に登っていたのか下に降りていたのか、その数分間の記憶がすっぽり抜けていた。
翌日から三日間、彼は40度の熱を出して寝込んだという。
まあ、あの山は夜に行くもんじゃないよ。
あそこにいるのは、名前も知らない人たちだから。
名前がないってことは、帰る場所もないってことだ。
だから、来てくれた人を帰したくないんだよ、きっと。
男性は笑いながらそう言ったが、目は笑っていなかった。
怪談その二「数が合わない」
もう一つ。これは、山梨県内で土木関係の仕事をしているという40代の男性から聞いた話。
仕事で笹子の近くに泊まり込みの現場があったんだよ。
何年前だったかな、もう忘れたけど。
夜中の2時頃、現場のプレハブ小屋で書類仕事をしていた男性は、ふと窓の外を見た。
月明かりで山の稜線がぼんやり見える程度の暗さだった。
その視界の端に、墓地の斜面を登っていく人影が見えた。
一人、二人、三人。
縦一列に、ゆっくりと斜面を登っていく。
こんな時間に墓参りか? 変わった人もいるもんだ
そう思って目を離した。
翌朝、現場の同僚にその話をすると、同僚の顔色が変わった。
「お前、それ何人だった?」
「三人」
「……本当に三人だったか?」
「三人だよ、はっきり見た」
同僚は少し黙ってから、こう言った。
「あの墓地な、あそこで列になって歩く影を見た人間は結構いるんだよ。でもな、みんな数が違うんだ。ある奴は五人だって言うし、ある奴は七人、ある奴は二人。面白いのは、数えた人間が翌日になるとな、自分が見た数を思い出せなくなるんだ。お前、今は三人って覚えてるだろ? 明日もう一回聞くから、覚えといてくれ」
翌日、同僚に「昨日の影、何人だった?」と聞かれた男性は、答えに詰まった。
確かに見たはずだ。数も数えたはずだ。
なのに、思い出せない。
三人? いや、四人だったか? それとも・・・
「な? だから言っただろ」
同僚はそう言って、それきりその話はしなくなったという。
あの斜面を登っていく列は、無縁仏たちの「行列」だって地元じゃ言われてるんだよ。
行き倒れた旅人たちが、まだ目的地を目指して歩いてるんだって。
数が合わないのはな、見るたびに「新しい仲間」が加わってるからだって話さ。
男性はコーヒーを一口飲んで、付け加えた。
それがいつ自分になるか、わからないから、地元の人間はあそこに近づかないんだよ。



第六章 私なりの解釈と仮説
さて、ここからは奇怪千万としての個人的な考察だ。
仮説①:「重層的な死」の土地が持つ磁場
笹子という土地には、中世の武田氏滅亡、江戸時代の行き倒れ、近代の笹子トンネル事故と、異なる時代の「死」が何層にも重なっている。
心霊現象の真偽はともかく、こうした場所では人間の心理が「怖い」方向に強く引っ張られることは科学的にも説明がつく。
プライミング効果と呼ばれるもので、「ここは人が死んだ場所だ」という知識があると、通常なら気にもしない音や影を「霊的なもの」として認知しやすくなる。
ただし、私が体験した「無意識に無縁仏に向かっていた」という現象は、事前知識なしで起こっている。
プライミング効果では説明できない。
仮説②:山岳墓地特有の「空間の歪み」
山の斜面に造成された墓地は、平地の墓地とは空間認識がまるで異なる。上下左右の距離感が狂いやすく、暗闇では自分がどこにいるのかわからなくなる。怪談その一の「上に登っていたはずが下にいた」という話も、空間認識の錯乱として説明できなくはない。
しかしそれは、「だから怖くない」ということにはならない。むしろ、「自分の位置がわからなくなる場所」というのは、心理的にも物理的にも危険だ。
仮説③:無縁仏の「引力」
これは完全に仮説というか、私の感覚的な話になるのだが
無縁仏というのは、他の霊とは質が違うのではないか、という気がしている。
通常の墓には名前がある。家族がいる。帰る場所がある。しかし無縁仏にはそれがない。名前もなく、家族もなく、帰る場所もない。人間にとって「名前を呼ばれない」「誰にも覚えてもらえない」というのは、死よりもつらいことなのではないだろうか。
だからこそ、無縁仏は
もし仮に何かが残っているとすれば
訪れた者に対して強く反応するのかもしれない。
「やっと来てくれた」と。
これは私の勝手な想像であり、科学的根拠はない。
しかし14年間、様々なスポットを回ってきた中で、無縁仏系のスポットには独特の「引力」のようなものを感じることが多い。
信じるか信じないかは、あなた次第だ。
……いや、某番組のパクリになるからやめておこう。

第七章 帰路の後味 スーパーカブと夜明け
墓地を後にして、スーパーカブに跨がった。
エンジンをかける。カブの軽い排気音が、山間の静寂を破る。その音がどこか頼もしく感じるのは、生者の世界に戻ってきた証拠だろうか。
国道20号を東に走る。甲州街道だ。かつて武田勝頼が敗走し、無数の旅人が行き倒れ、そして2012年にはトンネルの天井が崩れた、あの甲州街道を。
バックミラーに笹子の山並みが映る。
振り返ってはいけない、という心霊スポットの定番ルールがある。
しかしバイクのバックミラーは勝手に後ろを見せてくる。
なかなかの嫌がらせである。
ミラーの中に何かが映っていないか。
……映っていない。たぶん。
夜明け前の甲州街道を、走り抜ける。寒さで手がかじかんでいるが、それが「生きている」という実感を与えてくれる。
死者の場所から生者の世界に戻ってくるとき、いつも思うのだ。
怖かった。
でも、行ってよかった。
なぜ行ってよかったのか。
それは、あの場所に眠る人たちをほんの数時間でも「誰かが訪れた」という事実を残せたからだ。
名前のない人たちの元に、名前のある人間が来た。それだけで、何かが少し変わるような気がする。
気のせいかもしれない。
でも、無縁仏が寂しさの中にいるのだとしたら、「誰かが来た」という記憶は、きっと無駄ではないだろう。


アクセス情報・注意事項
アクセス
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所在地:山梨県大月市笹子町付近
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最寄り駅:JR中央本線 笹子駅
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車でのアクセス:中央自動車道 大月ICから国道20号線を甲府方面へ
注意事項
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夜間の訪問は危険です。山間部のため足元が悪く、街灯もありません
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墓地は故人を弔う場所です。肝試し目的での訪問は控えてください
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周辺には民家もあります。騒音など迷惑行為は絶対にやめましょう
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野生動物(熊、イノシシ、鹿など)の出没地域です。十分注意してください
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万が一訪問する場合は、必ず懐中電灯と携帯電話をお持ちください
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無縁仏や供養碑には敬意を払い、手を合わせることをお勧めします
【心霊恐怖度】★★★★☆(4/5)
【雰囲気】 ★★★★★(5/5)
【アクセス難度】★★★★☆(4/5)
【危険度】 ★★★★☆(4/5)
参考文献・情報源
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笹子峠 – Wikipedia
-
天目山 – Wikipedia
-
笹子トンネル天井板落下事故 – Wikipedia
-
大月市 – Wikipedia
-
無縁仏 – Wikipedia
-
やまなし歴史の道ツーリズム「甲州街道随一の難所・笹子峠越えコース」(山梨県公式)
-
心霊スポット巡礼ツアー – Wikipedia
-
三和交通「心霊スポット巡礼ツアー」公式サイト
-
全国心霊マップ(ghostmap.jp)- 山梨県大月市の心霊スポット
-
畏怖 – 山梨県の心霊スポット一覧(haunted-place.info)
-
路地裏:戦慄の心霊スポット 山梨県
-
「私が実際に訪れた山梨県の心霊スポット30ヶ所を紹介する」(tabi-and-everyday.com)
-
歌川広重『甲州道中記』
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葛飾北斎『北斎漫画 七編 甲州矢立の杉』
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NEXCO中日本「笹子トンネル天井板落下事故について」(公式サイト)



