
※肝試し等の行為を助長する意図はありません。
心霊スポットとされる場所の多くは私有地や立入制限区域を含む場合があります。
必ずルールとマナーを守り、近隣住民への配慮を忘れずに。
はじめに──赤い橋との出会い
山梨県を走っていると、たまに「あ、ここやばいな」と直感で感じる場所がある。
2022年11月、私は山梨県内の複数のスポットをめぐる遠征に出ていた。いつものように愛車のホンダ スーパーカブ110に荷物をくくりつけて、夜明けから走り続けていた日のことだ。
この日の一軒目が、山梨県北杜市大泉町西井出に位置する「東沢大橋」だった。通称「赤い橋」。地元の観光案内にも載っている、清里を代表する景観スポットである。
昼間に来ればインスタ映えまちがいなしの絶景橋なのだが、私が訪れるのはもちろん深夜から早朝にかけての時間帯だ。
観光案内には書いていないことがある。この橋は地元で「出る」と噂されている場所でもある。
正直に言おう。
最初は半信半疑だった。
清里といえばリゾート地。
華やかなイメージのある場所に心霊スポットなんてちょっとアンバランスじゃないか、くらいに思っていた。
しかし実際に橋の前に立ったとき、私の直感は明確に「これはただの橋じゃない」と告げていた。

史料と歴史「地獄谷」という名前が示すもの
まず東沢大橋の基本情報から確認しておこう。
東沢大橋は、山梨県北杜市大泉町西井出を通る県道北杜富士見線(国道20号から国道141号を結ぶルート)上に架かるアーチ橋だ。
全長90メートル、高さ48.9メートル。
橋を真っ赤に塗装した独特のデザインが特徴で、地元では「赤い橋」として親しまれている。
この橋が架かっている渓谷の名称に注目してほしい。
「川俣川東沢渓谷地獄谷」。
そう、「地獄谷」だ。
観光パンフレットにもしれっとこの名前が載っているのだが、ちょっと待ってほしい。
日常的に「地獄谷にかかる橋」と言われていて、誰もそれを不思議に思わないのだろうか。
八ヶ岳の地獄岳を源とする東沢の渓流が削り出したこの谷は、その地形の険しさや水流の激しさから古くより「地獄」の名で呼ばれてきたと考えられている。渓谷沿いには屏風岩、天狗岩、獅子岩、覚円峰といった奇岩が連なり、見る者を圧倒する。
自然の造形美と言えばそれまでだが、夜に一人で立てばその荒々しさは別の意味を帯びてくる。
橋そのものの歴史について言えば、清里から国道141号方面へのアクセスルートとして整備された比較的新しいインフラだ。
しかしその下を流れる川俣川と東沢渓谷は、人が入り込むことも容易でない深い谷間であり、その険しさから転落事故が絶えない場所でもあったとされている。
さらに深刻な問題として、この橋は飛び降り自殺の名所としての側面を持つようになっていった。
高さ48.9メートルというのは、ちょうど15階建てのビルに相当する。
橋の上から下の渓谷を覗けば、それがどれほどの高さかは言うまでもない。
橋の欄干に花が手向けられているのを、私は実際に見た。
針金でしっかりと固定された枯れかけの花束。
観光客が落とした忘れ物でも、風で飛んできたものでもない。
誰かが誰かのために、ここに手を合わせたのだ。

現地検証 あの日、橋で聞こえた声
2022年11月の遠征当日。
この日の山梨入りは早朝で、ロケハンと地元住民への聞き込みを組み合わせながら各スポットを回っていた。
東沢大橋は一番最初に向かった場所で、まだ日が高かった午前中のこと、カブを橋の手前に停めて歩いて渡り始めた。
時刻は午前中、まだ観光客もまばらな時間帯だ。
渡り始めた瞬間、聞こえた。
女性の声だった。
「アナタ聞こえてるでしょ? 無視しないでって」
ハッキリと聞こえた。
周囲を見回したが誰もいない。
渓谷の風が吹いていたが、そういう音ではない。声だった。明確に、日本語の、女性の声だった。
この時は本撮影でなかったのでレコーダーを回しておらず、音声として残せなかったのが悔やまれる。
私は心霊肯定派でも懐疑派でもない。
霊がいると断言するつもりもないし、「全部気のせいだ」と割り切るつもりもない。
ただ事実として、私はあの橋の上で、はっきりとした声を聞いた。
それだけだ。
一人でこういう場所を回り続けていると、説明のつかないことは日常茶飯事になる。
それでも怖いものは怖い。
正体不明の何かが声をかけてくるという恐怖は、慣れたとしても薄れることはない。
夜になってから再訪した。
時刻は19時頃。山梨の山間部のその時間は、もうすっかり闇の中だ。
カブのヘッドライトを橋に向けると、真っ赤な橋体が暗闇の中にぬっと浮かび上がった。
ドキリとした。昼間は「きれいな赤いアーチ」に見えたはずのものが、夜のライトに照らされるとまるで別の何かのように見える。
車はほぼ通らない。
鳥の声もない。昼間に賑やかだった渓谷の水音さえ、なぜかこの夜は遠く感じた。
声は聞こえなかった。
ただ、橋の欄干を確認していた時に見えた。
針金でくくりつけられた花束。枯れていたが、比較的最近のものに見えた。そっと手を合わせてその場を離れた。
朝と夜で、橋の顔はまるで違う。
でも同じなのは、「誰かが確かにここにいた」という感覚だ。

怪異・噂・都市伝説 東沢大橋に伝わること
ネット上の体験談や地元での噂を噂の傾向整理してみると、東沢大橋に関する怪異情報は主に以下のパターンに集約される。
① 女性の霊の目撃
最も多く報告されているのが女性の霊の目撃だ。橋の上や橋の近辺に白い服の女性が立っているのを見た、という報告が複数存在する。霊感のある人物が訪れると「下に引きずり込まれるような感覚がした」という証言もある。
② 橋の下を覗いてはいけない
地元では「東沢大橋の欄干から下を覗き込んではいけない」という禁忌が語り継がれている。覗き込んだ人間は霊に憑かれる、あるいは「来い」と呼ばれてしまうというのだ。高さ48.9メートルの橋から渓谷の底を見下ろせば、確かにその場所が持つ引力のようなものを感じてしまうかもしれない。
③ オーブの撮影
肝試しに訪れた者が写真撮影をすると、橋の手すり部分を中心に複数のオーブが映り込んだという報告がある。特に夜間の撮影でその頻度が高いとされる。
④ 草むらからの気配
夜間に訪れると、橋の近くの草むらや植え込みのあたりから、何かが動く気配を感じるという体験談が複数ある。姿は見えないが、確実に何かがいる感覚だという。
⑤ 幻の声・聞こえてはいけない声
橋の上や橋の下から、意味不明な話し声や笑い声が聞こえるという体験談も多い。SNSにも「誰もいないのに橋の下からおじさんたちの会話する声が聞こえた」という投稿が残っている。
私が体験した「女性の声」は、これらの噂のうち①と⑤に明確に重なる。

噂の出どころ考察 なぜここが心霊スポットになったのか
東沢大橋が心霊スポットとして認知されるようになった背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられる。
要因① 「地獄谷」という地名の持つ印象
「地獄谷にかかる橋」という事実は、それだけで人々の想像力を強烈に刺激する。地獄谷という名称が古くからある地形由来のものだとしても、現代人がその名前を聞いたときに抱くイメージは明らかに「此岸と彼岸の境界」だ。橋はそもそも「渡る」という行為を伴うものであり、三途の川のイメージと結びつきやすい構造を持っている。
要因② 高さ48.9メートルという絶望的な数字
飛び降り自殺を誘発するスポットには、ある程度の「高さ」が共通して存在する。東沢大橋の高さはまさにその条件を満たしている。実際に身投げがあったかどうか、公式な記録としては確認が難しいが、地元での噂と橋の欄干に繰り返し供えられる花束は、それが単なる都市伝説ではない可能性をうかがえる。
要因③ 孤立した立地と深夜の静寂
昼間は観光客で賑わう東沢大橋も、夜になれば人通りがほとんどなくなる。山間の深夜は音が吸収され、風の音や水音すら非日常的に聞こえてくる。人間の脳は不安な環境下で「音のパターン化」を行いやすく、聞こえない声を聞いたり、存在しない人影を見たりするホラー心理学的な現象も起きやすい。ただし私が聞いた声については、そういった説明で片付けるつもりはない。
要因④ 清里という場所が持つ「落差」
バブル期に大ブームとなり、その後急速に寂れていった清里高原。かつての賑わいの残骸が漂う高原の中に、真っ赤な橋がひっそりと立っている。この「かつては華やかだったのに、今は……」という落差が、廃墟と似たような霊的雰囲気を生み出している可能性もある。

私なりの解釈と仮説
私はこの記事で「霊は存在する」とも「存在しない」とも結論づけるつもりはない。
ただ、東沢大橋に関して言えば、一つのことは確かだ。
この橋は「誰かの感情が積み重なった場所」だということだ。
橋の欄干にくくりつけられた針金の花束。これは単なる景観上の問題ではない。誰かがここで誰かを失い、あるいはここで何かを決意し、その痕跡が残っている。霊が出るかどうか以前に、この橋には人間の「重さ」がある。
私が午前中に聞いた女性の声「アナタ聞こえてるでしょ? 無視しないでって」が、仮に霊的なものだとするなら、それは攻撃的なものではないと感じた。むしろ、ただ誰かに気づいてほしかっただけの声のように聞こえた。
地獄谷の底で誰かが誰かを待っているのか、あるいは橋の上で誰かが誰かを呼んでいるのか。
私には判断できない。ただ、この橋の前に立てば、誰でも少し立ち止まって考えてしまうはずだ。
この橋の「赤」は、紅葉だけを映しているわけではないのかもしれない。
地元民から聞いた話─怪談
① 「指先だけ」
地元のおじいさんから聞いた話だ。
清里で生まれ育ったその人が、まだ若かった頃の夜のことだ。
友人と二人で東沢大橋まで肝試しに行った。
真夜中の橋は真っ暗で、懐中電灯の明かりだけが頼りだった。
橋の中ほどまで歩いたとき、欄干の向こう側、渓谷の暗闇の中から何かが見えた気がした。
目を凝らした。
闇の中に、白い指先が浮かんでいた。
欄干の外側から、内側に向けてそっと差し伸べられた指先。
一本だけ。
友人の腕を掴んで引き返そうとした瞬間、その指先がゆっくりと、まるで誰かを手招きするように動いた。
二人は転がるようにして逃げ出した。
翌朝、橋まで戻って確認したが、何もなかった。
ただその後、友人は一週間、右手の人差し指が痛くてたまらなかったと言った。
理由はわからなかった。病院で診てもらっても、どこにも異常はなかった。
② 「赤い橋の、もうひとつの赤」
清里の民宿を営む女性から聞いた話。
もう十数年前のことになる。その老婆の知り合いが、深夜に東沢大橋を車で通ったとき、橋の真ん中に女が立っているのを見たという。
白いワンピースで、欄干に手をかけるようにして立っていた。
明らかに様子がおかしい。
急いで車を止めて声をかけようとしたが、女は振り向かない。
「大丈夫ですか」と声をかけながら近づいたとき、女がゆっくりと振り返った。
顔がなかった、というわけではない。
顔はあった。
若い女の顔だった。ただ、泣いていた。
泣いているのに、笑っていた。笑っているのに、泣いていた。
その表情が何を意味するのか、見た瞬間には理解できなかった。
「行かないでください」
そう声をかけた次の瞬間、女の姿は消えていた。
車に戻ってドアを閉めたその人は、ふとフロントガラスに目をやった。
さっきまで真っ暗だった橋の欄干に、一輪の赤い花が挟まっていた。
どこから来たのか、誰が置いたのか、わからない。
その人は翌日も橋を通ったが、花は消えていた。
アクセス・注意事項・スポット情報
【基本情報】
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名称:東沢大橋(東沢橋)/通称「赤い橋」
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所在地:山梨県北杜市大泉町西井出
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橋の規模:全長90m・高さ48.9m・赤いアーチ橋
【アクセス】
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車:中央自動車道 長坂IC・小淵沢ICから約20〜25分
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電車・バス:JR小海線「清里駅」から清里ピクニックバス(期間限定)で「東沢大橋」下車 / 甲斐大泉駅または清里駅からタクシー約10分
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駐車場:普通車20台・バス3台(橋東側・展望台横)
【訪問時の注意点】
深夜の訪問は路面凍結に注意。特に11月以降は路面が凍るため、カブや二輪での移動には細心の注意が必要だ。私は11月の遠征でも深夜移動をしているが、山間部での走行は本当に命がけになることがある。橋自体は公道上にあるため立入は可能だが、周辺の渓谷遊歩道は夜間の利用は想定されていない。欄干から身を乗り出す行為はどんな理由であっても厳禁だ。
また、2026年現在、東沢大橋は令和7年9月11日から令和8年8月31日まで補修工事中であり、橋の外観の一部がシートで覆われている。訪問前に北杜市観光協会の公式情報を確認することを強く推奨する。
【周辺スポット】
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吐竜の滝:橋下流の川俣川渓谷沿いにある美しい滝。遊歩道が整備されている。
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八ヶ岳高原大橋:東沢大橋のすぐ近くにある「黄色い橋」。全長490m・高さ100m。こちらも夜になると雰囲気が一変する。
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すずらん池(北杜市小淵沢町):稲川淳二氏の体験談でも知られる心霊スポット。同日に回るのも一つのルート。
噂の総括と心霊スポットとしての評価
東沢大橋を心霊スポットとして評価するなら、
私の総合評価は「B+(要警戒)」だ。
観光地としての顔と、地獄谷という名の渓谷に架かる赤い橋という二面性。橋の欄干に繰り返し手向けられる花束。そして私自身が体験した、橋を渡る途中での女性の声。
これらを総合すると、「何かがある場所」であることは間違いないと思っている。ただし、何が起きるかは人によるし、昼と夜でまったく顔が変わる場所でもある。
怖いか怖くないかで言えば、怖い。
夜のライトに赤く浮かび上がる橋の姿は、初めて見た人間を確実にひるませる。そこに何も怪奇な噂がなかったとしても、あの見た目は十分すぎる威圧感がある。
そしてあの声が何だったのか、私はまだ答えを持っていない。
参考文献・情報源
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北杜市観光協会 公式サイト「東沢大橋(ひがしざわおおはし)」
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富士の国やまなしインフラガイド「東沢橋」(山梨県公式)
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山梨県公式観光情報「富士の国やまなし観光ネット」東沢大橋ページ
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ウワサの心霊話「東沢大橋」(sinreikousatu.jp)
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全国心霊マップ「東沢大橋 山梨県の心霊スポット」(ghostmap.jp)
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現地調査メモ(2022年11月・奇怪千万)
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note「奇怪千万」(https://note.com/kikai_senban)



