不動山トンネル

福島県

1. 導入

奇怪千万、今回の現場は福島県いわき市内郷。
不動山トンネル(ふどうやまトンネル)だ。
もとは炭鉱の石炭を運ぶために掘られた、鉄道のトンネルである。
炭鉱でにぎわった時代はとうに過ぎ、いまは静かに口を開けている。
照明はあり、通り抜けることもできる。
だが、ここは古くから心霊スポットとして語られてきた。
そして今回は、いつものように「異常は出なかった」とは書けない。
私はここで、説明のつかない体験をした。
まずはこのトンネルの素性から、順に切り分けていく。
私の体験は、後の章で正直に書く。

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2. 史料が語る不動山トンネル

まずトンネルの素性を押さえておく。
不動山トンネルは、道路のためではなく、鉄道のために開通したトンネルだ。
この一帯は、江戸時代から昭和にかけて栄えた炭鉱街だった。
内郷は、いわきの炭鉱を語るうえで欠かせない土地だ。
トンネルの西には石炭の積載場が設けられていた。
掘り出された石炭は、ここから綴駅、いまの内郷駅を経て、東京方面へと運ばれていったという。
つまりこのトンネルは、いわきの石炭が日本を支えた時代の、生き証人なのだ。

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もう一つ、押さえておきたいものがある。
近くには不動堂があり、そこへ至るつづら折りの道に、たくさんの地蔵尊が祀られている。
お堂の広場には、水子地蔵菩薩が安置されている。
このことから、つづら折りに並ぶ地蔵尊も、水子供養に由来するものと考えられている。
炭鉱の記憶と、水子を弔う霊場。
この二つが、不動山トンネルのすぐそばに重なっている。

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3. 噂が育つ土壌

噂の土壌は、はっきりしている。
まず炭鉱だ。
炭鉱は、常に事故と隣り合わせの場所だった。
落盤、ガス、出水。地の底で命を落とした人は、決して少なくない。
その石炭を運んだ鉄道トンネルに、死の影が差すのは自然なことだ。
次に、水子の霊場である。
近くの地蔵尊や水子地蔵は、幼くして亡くなった子を弔うために置かれた。
弔いの場は、どうしても心霊の噂を呼び寄せやすい。
そして、トンネルそのものの闇だ。
鉄道用に掘られた古いトンネルは、独特の重さがある。
さらに、肝試しに来た者がトンネル内で車を脱輪させ、持ち上げようとして指を潰すという事故も伝わっている。
炭鉱、水子供養、古いトンネルの闇。
噂が育つには、十分すぎる土壌だった。

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4. 現地調査

ここからは、私自身の体験を正直に書く。
訪れたのは二〇二三年の三月。夜の十一時を回っていた。
スーパーカブを停め、トンネルの前に立つ。
内郷の夜は、しんと静かだ。炭鉱でにぎわった頃の喧騒は、もうどこにもない。
カメラを回しながら、トンネルへ足を踏み入れた。
その瞬間だった。
空気が、すっと冷たくなった。
外との温度差ではない。肌に張りつくような、別種の冷たさだ。
トンネルの中には照明がある。だから足元の不安はない。
私はそのまま奥まで歩き、また戻る。往復するつもりだった。
ところが途中で、手に持っていたLEDライトが、ふっと消えた。
電池切れではない。後で確かめたが、何の異常もなかった。
照明があるので、暗闇に放り出されることはない。
だが、妙だった。
そして歩いている間、ずっと背後が気になって仕方がなかった。
誰かがいる。
振り返っても、誰もいない。
それでも、後ろから気配がついてくる。
言っておくが、私は心霊を頭から信じる人間ではない。中立派だ。
深夜に一人で数々の現場を歩いていても、たいていは何も起きない。
だが、たまにある。説明のつかない夜が。
この不動山トンネルは、その一つになった。
本当に妙だったのは、帰ってからだ。
撮った動画を見返して、私は固まった。
画面のなかの私は、トンネルの途中で立ち止まっている。
なのに、足音が入っている。
私のものではない、誰かの足音だ。
そしてその後ろで、女性のため息が、確かに聞こえた。
あれは霊なのか。それとも、別の何かなのか。
私には、まだ答えが出せない。

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5. 語られている怪異

不動山トンネルにまつわる噂を整理する。
一つ。トンネル内で人の気配を感じる。後ろから誰かがついてくる、というものだ。
二つ。説明のつかない音。足音や、女性の声、ため息が録音される、という話。これは私自身の体験とも重なる。
三つ。近くの水子霊場と結びつけて、子供の霊が語られることもある。
四つ。肝試しに来た者が脱輪し、車を持ち上げようとして指を潰したという、現実の事故。
怪異と現実の事故が、同じトンネルに同居している。

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6. 噂の出どころを追う

噂の核を整理する。
このトンネルには、大きな殺人や心中といった派手な事件の記録はない。
だが、土地そのものに死の記憶が積もっている。
一つは炭鉱だ。
地の底で働き、命を落とした人々の記憶が、この鉄道トンネルにはついて回る。
もう一つは水子の霊場だ。
幼くして逝った子を弔う地蔵が、すぐ近くに並んでいる。
この二つが、噂のもっとも深い土壌になっている。
そこへ、鉄道用の古いトンネルという薄暗い舞台が乗る。
私自身の体験も、この文脈のなかにある。
冷気、消えたライト、背後の気配、そして動画に残った足音とため息。
これらが何だったのか、私は断定しない。
だが、炭鉱と水子供養という土地の記憶を知ったうえで振り返ると、あの夜の重さが、少しだけ腑に落ちる気もする。

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7. 総合分析

整理する。
不動山トンネルが心霊スポットとして語られる理由は、層になっている。
土台にあるのは、炭鉱という土地の歴史だ。
石炭を運んだ鉄道トンネルには、地の底で死んだ人々の記憶がにじんでいる。
そこに、近くの水子霊場という弔いの場が重なる。
さらに、古い鉄道トンネルの闇と、肝試しでの現実の事故が噂を厚くした。
そして私自身、ここで説明のつかない体験をした。
冷気、消えたLED、背後の気配。
帰ってから動画に見つけた、他人の足音と、女性のため息。
私は中立派だ。これを霊だと断じるつもりはない。
だが、いないと言い切ることも、いまの私にはできない。
あれが霊なのか、別の何かなのか。
その答えを探しながら、私のスーパーカブで行く、一人の心霊スポット調査の旅は続く。

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8. 注意とアクセス

不動山トンネルは福島県いわき市内郷にある。
照明があり、通り抜けることはできる。
だが、もとは鉄道のトンネルで、古い構造物だ。
足元や壁の状態に注意し、無理な立ち入りはしないこと。
車で近づく場合は、狭い道や脱輪に十分気をつけてほしい。実際に事故も起きている。
深夜に騒げば、近隣の住宅の迷惑になる。
そして近くの不動堂、つづら折りの地蔵尊、水子地蔵は、幼い子を弔うための祈りの場だ。
炭鉱で命を落とした人々の記憶も、この土地には深く刻まれている。
面白半分で踏み荒らすような場所ではない。
弔いの場と土地の歴史に敬意を払い、静かに訪れてほしい。

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9. 引用・参考

shin-kichi.com/fudoyamatonneru/
tabi-and-everyday.com/archives/38358
wonja.jp/fukushima-shinrei/
いわき市 内郷 炭鉱史および綴駅(現・内郷駅)関連資料

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