奇怪千万からのお願い

このサイトの記事が面白かった、役に立ったと思って頂けたら、一つお願いがございます。
Amazonで何か買う予定があるとき、その前に下のボタンから入って頂いて買い物をしていただくと
サーバーの運営費と心霊スポットやパワースポットの取材費になります。

ここから入って買い物をすると、金額の数%が紹介料として私に入ります。
貴方様の支払いが増えることは一切ありません。買う物も何でも構いません。
記事をもっとたくさん増やしたいので、ご協力をお願いします。

当サイトではアマゾンアソシエイト以外のアフィリエイトは使用しません
(記事が見づらくなるから・・・)

樹海村 ― 犬鳴村・杉沢村に続く「実在しない隔絶集落」都市伝説、青木ヶ原樹海に眠る呪いの箱の正体

富士山の裾野。風もなく、音もなく、木々だけがどこまでも密生する原生林――青木ヶ原樹海。「自殺の名所」として世界的にまで知られてしまった。この場所には、古くから数えきれないほどの怪談や都市伝説が積み重なってきた。その集大成とも言うべき噂が「樹海村」だ。

樹海に迷い込んで、二度と出てこられなかった者たちがいる。いつしか寄り集まって暮らすようになった隔絶集落がある――そんな都市伝説だ。考えただけで背筋が冷える話じゃないか。

この噂は2021年、清水崇監督の手で映画『樹海村』として実写化された。「犬鳴村」に続く「実録!恐怖の村」シリーズ第2弾という触れ込みで、大きな話題を呼んだ。

語り継がれる話

語られるところによれば、青木ヶ原樹海の奥深くに小さな集落がある。地図には決して載っていない場所に、その集落がひっそりと存在するという。住人たちの多くは、かつて自ら命を絶とうとして樹海に足を踏み入れながら、なぜか死にきれなかった者たちだと語られる。

行き場を失い、樹海から出る道もわからなくなった彼ら彼女らがいる。やがて樹海の奥で寄り添うように暮らし始めた。外部との接触を一切絶った独自の共同体を形成するに至った――というのが噂の骨子だ。

この噂を裏付けるかのように語られるのが、樹海にまつわる数々の「異常現象」だ。とりわけ有名なのが「樹海に入るとコンパスが狂う」という話。樹海の地盤は、富士山の噴火による溶岩でできている。この溶岩には磁鉄鉱が多く含まれている。だから方位磁針が正常に機能しなくなる。

そんな「科学的っぽい」説明が、まことしやかに付け加えられる。ほんとうのところ、この磁鉄鉱の影響はごくわずかだ。コンパスがぐるぐると激しく回転するほどの磁気異常は起きない――というのが実情。

ところが、「樹海に入ったら方角を見失い、二度と出られなくなる」という恐怖の物語がある。この「コンパスが狂う」という噂は、その物語を補強する小道具として、現在に至るまで語られている。

樹海村の物語には、しばしば次のような「体験談」が添えられる。ある登山者、あるいは肝試しに訪れた若者のグループがいる。道に迷って樹海を彷徨っているうちに、木々の合間に古びた家屋の影を見つける。

近づいてみると、そこには確かに人の住んでいる気配がある。電気も通っていないはずなのに、灯りがともっている。恐る恐る声をかけると、中から出てきたのは、ひどく痩せこけた、目つきの鋭い老人だった。

老人は「ここから先には来るな」とだけ告げた。それから足早に若者たちを樹海の外へと導いていく。去り際に、「ここで見たことは、誰にも話すんじゃないぞ」と言い残す。

若者たちは震えながら樹海を後にする。ところが、後になって振り返っても、そこに集落があったことを示す痕跡は一切見つからなかった。そんな結末で語られる話が多い。

映画『樹海村』では、この樹海村の噂に、もう一つの著名なインターネット怪談「コトリバコ」の要素が組み合わされている。物語は、不登校の少女・天沢響とその姉・鳴が友人宅の引っ越しを手伝う場面で幕を開け、手伝いの最中に床下から奇妙な木箱を発見するところから始まる。

複雑に組まれたこの箱に触れた者たちには次々と不幸が降りかかっていく。響の祖母は急死し、友人は行方不明になり、精神科医は自ら命を絶ってしまう。やがて物語は、この呪いの箱の起源が樹海に捨てられた人々の怨念に由来することを示唆する。最後は樹海の奥に潜む霊的な脅威そのものへと収束していく。

いつから語られたのか

樹海村という都市伝説そのものの初出を厳密に特定することは難しい。ところが、その成立には明確な系譜がある。土台になっているのは、青木ヶ原樹海が古くから「自殺の名所」として認知されてきたという実在の事実だ。

松本清張の小説『波の塔』(1960年)で、樹海は自殺の舞台として描かれた。この描写が、負のイメージを全国的に広めた大きなきっかけだという。以後、樹海は繰り返し自殺の舞台としてメディアに取り上げられ続けた。

この手の話は、時代が変わっても色褪せないものらしい。2015年には、ガス・ヴァン・サント監督のハリウッド映画『追憶の森』でも題材にされた。そうやって、その悪名は国際的にも広がっていった。

この「自殺の名所」というイメージに、「犬鳴村」「杉沢村」という、より直接的な系譜が合流する。犬鳴村伝説は、福岡県に実在する犬鳴峠・旧犬鳴トンネルにまつわる噂を土台にしたものだ。旧犬鳴トンネルは1975年に新道が開通して以降、通行量が激減した。以後は心霊スポットとしての噂が先行して広まっていた場所だ。

しかも1988年には、実際にこの近辺で殺人事件が発生した。「恐怖のトンネル」というイメージが決定的なものとなった。ちなみに、きな臭い話はまだ続く。

この実在の負のイメージの上に、全くの創作が加わった。「トンネルの先には外部と接触を絶った村があり、日本国憲法も通じない」という話だ。この創作である都市伝説が、2000年代のインターネット上で構築されていった。

杉沢村伝説は、さらに先行するものだ。青森県で語られていた怪談が、1997年にウェブサイト「怪異・日本の七不思議」に投稿された。そこからインターネット上に、本格的に広まったらしい。

1999年には写真付きの記事も登場した。2000年8月には、フジテレビの人気番組『奇跡体験!アンビリバボー』で取り上げられ、これで全国区の知名度を獲得した。

杉沢村という地名自体は、実在する青森市内の「小杉集落」に由来するという。方言で「杉さ行く」が訛ったものらしい。ところが、伝説の核となっているのは「集落の全滅・大量殺人」という要素だ。

これは、1938年に岡山県で発生した実在の大量殺人事件「津山事件」を下敷きにしており、映画『野性の証明』(架空の集落「風道」が舞台)も影響を与えたという。199名の死者を出した実在の八甲田山雪中行軍遭難事件なども混ざり合い、複合的に形成されたという見方だ。

杉沢村伝説を語る記事の多くが、同じことを明記している。「杉沢村の伝説で語られるような大量殺人事件の記録は、青森県内では確認されていない」というのが実態だ。

杉沢村伝説とは、実在の地名、実在の陰惨な事件、実在しない創作の三つが継ぎ接ぎされて生まれたものだ。都市伝説が生成される仕組みを、教科書的に示す事例。

樹海村は、この犬鳴村・杉沢村という「実在しない隔絶集落」系都市伝説の系譜の上に立っている。そこに、青木ヶ原樹海という既存の「自殺の名所」イメージを重ね合わせることで成立した。いわば第三世代の都市伝説だ。

映画『樹海村』(2021年公開)は、この系譜を意識的に踏襲する形で制作された。東映が「犬鳴村」(2020年公開)に続く「実録!恐怖の村」シリーズ第2弾として制作したものだ。監督は『呪怨』シリーズなどで知られる清水崇が続投し、和製Jホラーの「村」ものというジャンルを確立させた。

コトリバコ融合バージョン

映画『樹海村』が採用した最大の派生要素が、前述の「コトリバコ」。コトリバコとは、これもまた2ちゃんねる発祥の著名な怪談だ。「複雑に組まれた小さな木箱の中に、子供の身体の一部を封入することで作られた呪いの箱」を指す。その箱が置かれた家の女性や子供に、深刻な内臓の損傷をもたらすという凄惨な設定を持つ。

本来、コトリバコと樹海村は別々に生まれた都市伝説だ。にもかかわらず、映画という媒体の中で意図的に融合された。そうして、「樹海に捨てられた者たちの怨念が箱に宿る」という新しいハイブリッド版の伝説が生まれた。この映画的な融合が、逆に「樹海村とコトリバコは元から関連する話だったのか」という誤解もインターネット上に生んでいる。

精進湖民宿村との混同バージョン

樹海村の噂の中には、「樹海の奥に実在する集落を見た」という体験談が一定数ある。これは、実在する「精進湖民宿村」という、16軒ほどの民宿からなる観光施設との混同ではないか。そういう指摘が出ている。

この民宿村は樹海の近辺に実在し、森林浴を楽しむ観光客向けの静かな施設だ。ところが、夜間に人気のない状態でこれを目撃した者がいる。脈絡のない不気味さから、「これが噂の樹海村ではないか」と早合点してしまう。そうして体験談として広めてしまうケースもあるらしい。夜に一人で古びた建物と出くわしたら、そりゃ勘違いもする。

新興宗教施設バージョン

樹海にまつわる派生的な噂の一つに、「樹海の奥に謎の新興宗教施設がある」というものがある。これは樹海村の隔絶集落説とは微妙に異なる系統の噂だ。ところが、しばしば混同して語られる。

オウム真理教は、過去に富士山麓に拠点(サティアン)を構えていた。これは実在の歴史的事実だ(1990年代)。この事実が、「樹海の奥に得体のしれない集団施設がある」という噂に強いリアリティを与えている。その側面は否定できない。

体験談・目撃談

ある登山愛好家は、若い頃に肝試し気分で単独で青木ヶ原樹海に足を踏み入れた経験をこう話している。あらかじめ遊歩道の存在は知っていたはずなのに、ふと気づくと道を外れてしまい、周囲はどこを見ても同じような木々ばかりで、方角がまったくつかめなくなったという。

「地面がでこぼこの溶岩でできていて、足元も悪い。あの独特の静けさの中にいると、次第に自分がどちらから来たのかすらわからなくなっていく感覚に襲われた」と証言している。幸い数時間後に、遊歩道に戻ることができた。ところが、「あの時、もし誰かに出会っていたら、それが人間だったのか、噂の樹海村の住人だったのか、今でも自信を持って否定できない」と振り返っている。

別の体験談もある。樹海周辺で撮影していたテレビクルーのスタッフから、こんな話が伝わっている。「機材の電池が理由もなく急速に消耗した」「同行していたカメラマンが体調不良を訴えて撮影を中断した」。いわゆる「呪いのようなトラブル」を報告する事例が、しばしば語られる。

映画『樹海村』の撮影中にも、照明技師の男性が現場で倒れ、後に亡くなるという痛ましい出来事が実際に起きている。死因は脳出血による病死であることが公表されている。映画の呪いとは無関係であることも明確にされている。ところが、それでもなお一部のオカルト系掲示板では、「樹海村の呪いではないか」と結びつける憶測が飛び交った。

ほかにも、樹海内の巡回員(自殺志願者の保護・巡回にあたる実在のボランティアや警備員)を名乗る人物の証言もある。「バスから降りてくる人物の中には、自殺志願者特有の独特な行動や雰囲気がある。経験を積んだ人間には、一目でそれとわかる」という話がある。これは怪異譚とは違う。樹海が「自殺の名所」であるという厳然たる実態を裏付ける、より生々しい証言だ。

ネットでの広まり

2020年の映画『犬鳴村』のヒットを受けて、2021年には映画『樹海村』が公開された。その前後、SNS上で一気に「元ネタは何なのか」という考察が広まった。元ネタ探しが、ちょっとした祭りになっていたわけだ。

多くの考察系ブログやYouTubeチャンネルが、こんな指摘をしている。「樹海村自体は映画オリジナルの設定であり、実在する都市伝説として長く語られてきたわけではない」という趣旨だ。犬鳴村・杉沢村と比べると、樹海村は毛色が違う。「先に映画のタイトルとして提示され、それに合わせて都市伝説めいた噂が後追いで形成された、比較的新しいパターンの都市伝説」だ。そういう見方が定着している。

その一方で、青木ヶ原樹海そのものにまつわる噂もある。コンパスが狂う、遊歩道を外れると出られなくなる、動物の死骸や人の遺留品が多数放置されている――そんな噂だ。これらは、樹海村という映画が登場する以前から長年語られてきた、独立した都市伝説群。

考察界隈では、こんな現象が観察されている。これらの独立した樹海怪談群と、映画発の「樹海村」という設定が、時間の経過とともにあたかも一つの伝説であったかのように混同されていく。そうして再生産されていく過程そのものが、面白がって分析されている。

犬鳴村・樹海村・牛首村と続く「実録!恐怖の村」シリーズ全体には、こんな声もあった。「実在しない都市伝説をタイトルに冠することの是非」を問う声が、SNS上で一定数見られた。

そう考えると、この手のタイトル批判はどのシリーズにもついて回るものかもしれない。特に犬鳴村については、実在する犬鳴峠周辺の住民や関係者への風評被害を懸念する声が上がった。そのことも報じられている。都市伝説の映像化がもたらす社会的な影響についての議論も、この一連のシリーズを語る上で欠かせない論点だ。

実在する元ネタ・関連地名・関連事件

青木ヶ原樹海そのものは、山梨県富士河口湖町・鳴沢村にまたがって実在する広大な原生林だ。平安時代の貞観大噴火(864年―866年)の際の溶岩流の上に成立した森林。

「自殺の名所」としてのイメージは、前述の松本清張『波の塔』の影響を受けている。これに加え、実際に自殺者数が全国的に見ても多い地域であったという統計的事実にも裏付けられている。この点で、樹海の負のイメージは純粋な作り話とは違う。痛ましい現実の上に成立した都市伝説だという特殊性を持つ。

樹海内には「富岳風穴」「鳴沢氷穴」という実在の観光鍾乳洞・溶岩洞窟があり、全長2キロメートルにも及ぶ謎の石塁が実在することも知られている。この石塁の建造目的は、現在に至るまで未解明のままだ。これもまた、樹海にまつわる「謎」のイメージを補強する実在の要素。未解明のまま、というのがまたミステリー心をくすぐる。

犬鳴村伝説の元となった犬鳴峠・旧犬鳴トンネル(福岡県)は、実在する地名だ。杉沢村伝説の元となった小杉集落(青森県)も、同じく実在する地名。これらの土地に対する風評被害という現実的な問題も、都市伝説を取り扱う上で見過ごせない側面。津山事件(1938年、岡山県)も実在した凄惨な大量殺人事件であり、杉沢村伝説の形成に影響を与えたという。

これらの実在の地名や実在の事件が、フィクションである「隔絶集落」の物語と結びつけられていく。その過程こそが、犬鳴村・杉沢村・樹海村という一連の「恐怖の村」都市伝説を理解するうえで、最も重要な論点だ。

タイトルとURLをコピーしました