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2026-09

怪談

椅子を置く場所

庭に椅子を出す場所を、大家さんに訊いた。石灯籠へ明かりが入ると、平らな敷石で俺だけが坂へ立ったようになった。
怪談

服を返す日

辞めた店へ返す仕事着を洗い直した。乾燥機からこぼれた熱い砂に、小さな透明の殻が交じっていた。
怪談

顔を向けないで

初めての体験稽古で、何もせず相手を見ているよう言われた。彼女には、私が違う場所から覗いているように見えた。
怪談

磨いたところ

片方だけ白くなった靴を、両方きれいにしてほしかった。磨かれる右足を台に載せたまま、真紀は百貨店の前から自分によく似た靴音を聞いた。
怪談

花の前で

妻の眼鏡を受け取った帰り、知らない女の人の遺影を見て泣いた。なぜ懐かしいのか考えるうちに、隣の妻と過ごした場面だけが思い出せなくなった。
怪談

昼間に来た人

退職した高瀬は、旧友を昼に訪ねた。幼い頃に一度会った娘が、何度も来たはずだと言った。
怪談

戸を閉めずに

焼き鳥の皮を待っていた。柱の横で丸くなった煙は、扇風機を止めても崩れなかった。
怪談

まだ見ている

妹と出掛けた小さな美術館で、ポスターの女が顔を背けていた。近づくと、女は椅子を降り、流し台の陰へ隠れようとした。
怪談

そこから見ていて

運転を再開した友人の駐車練習に付き合った。向こうの列に、同じ傷のある車が停まっていた。
怪談

よく選んだ

一人で梨の摘み取りへ来た恵は、ようやく気に入った実を見つけた。割ってもらうと、その内側には夜の枝があった。