可愛いのか気味悪いのか、謎のモンスター
大きな目とギザギザの歯、いたずらっぽい表情をもつ「ラブブ(LABUBU)」は、香港出身のデザイナー・カシン・ルンが2015年に生み出した「ザ・モンスターズ」シリーズのキャラクターだ。中国のトイメーカー・ポップマートとの提携により世界中で爆発的な人気を得た一方で、「呪いの人形」「持つと不幸が訪れる」という都市伝説的な噂も広がっている。
現代の消費文化がどのように新しい都市伝説を生み出すのかを考える上で、ラブブ現象は非常に示唆的な事例である。
ブラインドボックスと「盲盒」文化の心理学
ポップマートの販売を支えているのは、中国語で「盲盒(マンホー)」と呼ばれるブラインドボックスだ。中身は開けるまで分からない。欲しい物が出るかもしれないという期待が、ガチャと似た報酬系を刺激する仕組みだと説明される。さらに、誰が持っているか、どんなバッグに付けているかがSNSで価値を増幅する。海外セレブがラブブをバッグに下げた姿も、世界的なブームを押し広げたと報じられた。
日本での受容:港区・夜職界隈のステータスシンボル化
日本では2023年頃から注目が集まり、東京・港区や歌舞伎町の接客業界隈で目立つようになった。本物が高額で取引され、「客からのプレゼント」として持つことが経済力や人脈の印に見える一方、同じ熱気を感じない世代や地域もある。この温度差が、「流行は人工的に作られたのではないか」という疑いを呼び込んだ。
「呪いのラブブ」話と陰謀論の構造
2025年初頭には「ラブブを持つと不運が訪れる」という噂がX(旧Twitter)で広がった。ただし、はっきりした根拠は示されていない。不気味な表情の人形に「何か宿っていそう」と感じる古い恐怖と、悪い噂ほど拡散されやすいSNSの性質が重なった話と見たほうが自然だ。偽物を「盗聴器が入っているのでは」と分解する動画まで現れたが、中身はプラスチックだった。疑いながらも見てしまう。
その好奇心が噂を長持ちさせる。
転売・偽物・希少性演出という構造的問題
ポップマートの売上高は公表される一方、具体的な販売数は見えにくい。偽物も精巧になり、鑑定に迷う例があるという。メルカリやヤフオクでは転売品が目立ち、希少性を煽る売り方への反発も出た。販売の不透明さと偽物の氾濫が、「誰かが熱狂を仕掛けている」という陰謀めいた見方を育てている。
現代的な意味:都市伝説はもうネットだけで完結しない
昔の都市伝説は、学校や地域の人間関係、深夜ラジオなどを通じて広がった。ラブブの噂は少し違う。企業の販売戦略、セレブの投稿、転売価格、偽物への不安が同じ画面に並び、その場で「呪いの人形」の物語が作られていく。古い怪談の型が、SNSと消費文化の上で組み直された例として見ると分かりやすい。
