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爆弾で頭ふっとび事件

これは事件名ではない

「爆弾で頭ふっとび事件」という呼び名は、警察や報道機関が使った正式名称と違う。札幌市中央区の山鼻地区で見たという道路規制と、翌日に職場で聞いた話。この二つを結びつけ、投稿者が付けた見出しである。

投稿によれば、それはある日の午後六時ごろのことで、中島公園から遠くない市電沿線の道路が黄色いテープで封鎖されていた。集まっていたのは警察車両。大型の作業車に見える車もあった。近くのコンビニエンスストアで尋ねてみた。「爆弾騒ぎ」だと聞いたという。

翌日、職場に話が回ってきた。若い男性が父親と口論した、という話だった。インターネットで入手した爆発物を自分へ向けて使ったらしい。父親の目の前で死亡したらしい。

ところが、投稿にはそれを確かめる手がかりが何ひとつ書かれていない。発生日、交差点名、警察署、新聞名、放送局、亡くなった人の氏名。

現場を自分の目で見たという部分と、職場で人づてに聞いたという部分とでは、証拠としての強さがまるで違う。道路規制や多数の警察車両をその目で見たとしても、規制の理由や、負傷者がどうなったのかまで見えたことにはならない。翌日の話は、すでに複数人を経た伝聞。

公開された新聞記事を当たった。警察発表も、裁判記録も調べた。この呼び名に一致する札幌の死亡事案は確認できない。だから、実在した爆発事件として経過を再現することもできない。

テープの内側で何が起きていたのか

不審物や爆発物が疑われる通報を受けた警察は、それが本物だと確定する前の段階から、広い範囲をまとめて規制する。人を遠ざける。交通を止める。専門部隊が安全を確認するまで、誰も近づけないようにするためだ。

警察庁が紹介している事例がある。不審物件を爆発物の疑いがあるものとして扱い、施設関係者と連携する。そこから立入規制に移る。避難誘導まで受け持つ。爆弾予告だけでも、危険物の検索、住民の避難、施設の閉鎖などが必要になる。

現場に大型車がいたという記憶も、爆発物処理用の車両だった可能性はある。ただ、消防の指揮車、照明車、道路管理車、報道車両など、外見だけでは爆発物処理の車両と区別のつかない車も多い。

黄色い規制線は、殺人や死亡の印を意味しない。ガス漏れ、不審な容器、火災、交通事故、建物からの落下物、捜査のために保存しておきたい区域など、いろんな場面で使われる。

目撃者の記憶が正しいとしても、そこから確実に言えることは限られる。「警察が周辺への立入りを制限する必要がある事案があった」程度だ。爆発が起きた、誰かが亡くなった、自死だったという結論は別の資料を要する。

「爆弾騒ぎ」という一言

店員が語ったのは「爆弾騒ぎ」の一言だった。警察の正式発表をそのまま伝えた言葉かどうかは分からない。客から聞いた話、表で作業する警察官の装備、交通規制の規模、そのあたりから推測した可能性もある。

現場周辺では、説明がない空白を人々が埋めようとする。警察が詳しく話さなければ、「危険物のようだ」が「爆弾が見つかった」になる。しまいには「爆発した」「人が死んだ」へ変わることもある。

裏を返せば、実際に深刻な事案が起きても、捜査中や家族への連絡前には説明されない。店員が知らなかったから軽い騒ぎだった、と決めることもできない。

短い一言は、現場の緊張を伝える一方で、事件の中身を確定させる証言にはならない。発言者が何を直接見たのか、誰から聞いたのか、いつ聞いたのかが分からないからだ。

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