カクヨム掲載「心霊体験談短編集」の導入記事です。実話・体験談・聞き書きをもとに、読み物として脚色を加えた怪談として扱い、全文転載はせず冒頭のみ掲載しています。
この話について
東京都練馬区にある団地の四号棟、その四階に六号室はない。 避難経路図でもそうなっていたし、管理会社にも確認した。あとになって管理事務所に残っていた古い棟配置図まで見せてもらったが、四〇一から四〇五で終わりだった。昔はあったが潰した、という話でもない。 それでも俺は、四〇六に四度かかわった。 食べ物を持って上がったのは三…
冒頭抜粋
東京都練馬区にある団地の四号棟、その四階に六号室はない。
避難経路図でもそうなっていたし、管理会社にも確認した。あとになって管理事務所に残っていた古い棟配置図まで見せてもらったが、四〇一から四〇五で終わりだった。昔はあったが潰した、という話でもない。
それでも俺は、四〇六に四度かかわった。
食べ物を持って上がったのは三回だけなのに、レシートは四枚残った。
順番に書く。
最初は六月の終わりだった。夜の十一時を少し回っていた。雨が強く、配達アプリの地図がときどき固まるような晩で、駅前の定食屋から受けた袋はやけに軽かった。玉子がゆと味噌汁だけ。深夜にしても少ない。病人か年寄りだろう、とその時はそれで済ませた。
備考欄には、
《チャイム不可。二回だけノックしてください。下は見ないでください》
とあった。
神経質な客は珍しくない。子どもが寝ているとか、犬が吠えるとか、家族に知られたくないとか。そういうのに紛れているうちは、妙だと思っても、まだ怖がるほどではなかった。
引っかかったのは宛先だ。
団地の四号棟、四〇六。
四号棟の入口は暗かった。街灯が一本切れていて、階段だけが雨に白く浮いていた。古いコンクリートの匂いに、トタン屋根の錆びた匂いが混じっている。駐輪場のトタンが風に鳴っていて、人の住む棟にしては妙に静かだった。
四階まで上がる。
四〇一、四〇二、四〇三、四〇四、四〇五。
そこで終わりだった。
見落としだと思って廊下の端まで行き、戻り、もう一度たしかめた。やはりない。四〇五の先は壁で、そこだけ塗り直したみたいに色が違う。うっすら四角い跡が残り、真ん中より少し…


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