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世界の七不思議――なぜ「七つ」のリストは時代ごとに作り直されるのか

「七不思議」という発明

「世界の七不思議」という言葉を聞いて、多くの人はギザの大ピラミッドやバベルの塔的な空中庭園を思い浮かべるだろう。だが、この「七つのリスト」は最初から確定していたものではない。時代ごとに何度も編み直されてきた、いわば人類の「すごいものランキング」の系譜だ。

古代、中世、自然、水中。実に多様な「七不思議」バージョンが存在する。

起源は古代ギリシャの旅行ガイド

最初の「七不思議」の原型は、紀元前2世紀頃まで遡る。著したとされるのは、古代ギリシャの技術者であり数学者でもあった、ビザンティウムのフィロン。書名は『世界の七つの景観について』だ。

当時の地中海世界を旅する人々にとって、「一生に一度は見ておくべき驚異」をまとめた一冊。ガイドブック的な性格を持っていたと考えられている。

そこに選ばれたのは七つ。ギザの大ピラミッド、バビロンの空中庭園、オリンピアのゼウス像、ロードス島の巨人像(コロッサス)。残る三つが、ハリカルナッソスの霊廟、エフェソスのアルテミス神殿、アレクサンドリアの大灯台だ。

これらのうち、現存しているのはギザの大ピラミッドただ一つだ。他はいずれも地震や火災、戦乱によって失われている。

空中庭園に至っては、正直かなり怪しい。実在そのものを疑う研究者は多い。近年は、モデルはバビロンではなくアッシリアの都ニネヴェに実在した庭園ではないか、という説も浮上している。

なぜ「七」なのか

古代地中海世界では、「7」という数字は特別な意味を持っていた。当時知られていた惑星が7つで、太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星。音楽の音階も7つ、旧約聖書の天地創造は7日間だ。宇宙の秩序を表す完全数として、「7」は広く認識されていたのである。

フィロンが7つの建造物を選んだ背景も、単なる「すごいものベスト7」ではなかった。人間の技術力が神々の領域である宇宙的秩序に匹敵する。それを示そうとする意図があったと考えられている。

中世・新世界・自然界へと増殖するリスト

古代の七不思議が姿を消していく一方で、後の時代の人々は「新しい七不思議」を作り続けた。中世の七不思議に並ぶのは、ローマのコロッセオ、ピサの斜塔、万里の長城、アヤ・ソフィア大聖堂。さらにストーンヘンジ、アレクサンドリアの地下墓地(カタコンベ)、南京の陶塔(大報恩寺琉璃塔)である。

これらは古代ギリシャ・ローマ的な価値観だけにとどまらない。キリスト教世界とイスラム世界、さらに東アジアの建築文化までを包含している。「世界」という概念そのものが交易とともに拡大していったことを、このリストは映し出している。

さらに近代以降には、バリエーションが増えていく。自然の驚異を集めた「自然界の七不思議」には、エベレスト、ヴィクトリアの滝、グランド・キャニオンなどが並ぶ。「水中世界の七不思議」というバージョンも登場する。こちらはベリーズの堡礁、バイカル湖、グレート・バリア・リーフなどだ。

2007年の投票企画「新・世界七不思議」では、七つが新たに選出された。主導したのは、スイスの非営利団体だった。万里の長城、ペトラ遺跡、コロッセオ、チチェン・イッツァ。残る三つは、マチュ・ピチュ、タージ・マハル、クリスト・レデントル像(リオデジャネイロのキリスト像)だ。世界中から一億人以上が投票に参加したとされる。

リストが増え続ける理由

なぜ「七不思議」というフォーマットは、ここまで繰り返し再生産されるのか。ひとつには、リスト化という行為そのものが持つ強い訴求力がある。無限に広がる「世界のすごいもの」を、人間が一度に把握できる範囲、つまり7前後に整理し直す。それだけで、人々は世界の全体像を掴んだ気になれる。

もうひとつ、こんな側面もある。それぞれの時代・文化圏が「自分たちの価値観で選び直した驚異のリスト」を作る。そうやって、自らのアイデンティティや美意識を表現してきた。

古代ギリシャ人にとっての驚異と、中世キリスト教世界にとっての驚異。そして21世紀のグローバルな投票企画で選ばれる驚異。この三つが重ならないのは、当然といえば当然だ。

現存する唯一の「本物」

古代の七不思議のうち、ギザの大ピラミッドだけが4500年近い歳月を生き延び、今も実際に見ることができる。他の6つは伝説や史料の中にしか存在しない。この一つだけが、現実として屹立し続けている。

それこそが、人類が繰り返し「七不思議」というリストを作り直してきた最大の動機なのかもしれない。

「驚異は消えてしまう。だからこそ記録し、語り継がなければならない」。このシンプルな衝動が、フィロンの時代から現代のインターネット投票企画に至るまで、脈々と受け継がれているのである。

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