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銀河鉄道999「メーテルの裏切り」封印エピソード都市伝説を検証する――なぜ鉄郎は裏切られなかったのか

999号が終着駅に着いたとき、メーテルは豹変する――そんな話、聞いたことないだろうか

汽笛が銀河の闇に響く。いくつもの惑星を巡ってきた999号が、ついに終着駅、大アンドロメダの機械化母星にたどり着く。鉄郎はここまでの旅で何度もメーテルに命を救われてきた。もう母のような、それでいてどこか恋人のような感情すら抱いている。なのに、着いた瞬間にメーテルは変わる。「あなたを機械の身体に生まれ変わらせるために、私はずっとあなたを案内してきたのよ」。

冷たく言い放って、抵抗する鉄郎を機械化手術台に送り込む。

手術台に横たわる鉄郎。響く無機質な機械音。それを無表情で見下ろすメーテル。子供向けアニメでこんな裏切りとバッドエンドをやるなんて前代未聞だ、という話になって、「実は試作稿として存在したが、あまりに残酷だからお蔵入りになった」という噂が長年語られてきた。派生ではさらに尾ひれがつく。

「幻の脚本がファンクラブの会報に一部だけ載ったことがある」とか、「松本零士本人の直筆メモを残したノートが古書市場に一時期出回った」とか。もっともらしく聞こえるが、これは本当に実在したエピソードなんだろうか。

この噂、いつどこから始まったのか

正直に言うと、単一の出どころを特定するのは難しい。ただ、噂が生まれやすい土壌ははっきりしている。

『銀河鉄道999』のテレビアニメ版は1978年から1981年まで、113話という長期にわたって放送された。その終盤、だいたい第107話から第110話あたりで、衝撃の事実が明かされる。メーテルは機械帝国の女王プロメシュームの娘であり、鉄郎を機械化母星へ連れていく「案内人」としての役目を最初から負っていたのだ。

この展開があまりに強烈だったから、当時の子供たちの間では「メーテルって本当は敵なんじゃないか」「鉄郎、最後に裏切られて殺されるんじゃないか」という不安がリアルタイムで広がった。学校の教室でも、児童向け雑誌の読者コーナーでも、この手の噂が自然発生的に語られていたらしい。

この「本編が匂わせた不穏さ」が、90年代のパソコン通信、2000年代の2ちゃんねるのアニメ・特撮板、「アニメ 都市伝説」「封印されたエピソード」を扱う専用スレッドを経由して、少しずつ形を変えていく。最初はただの不安だったものが、いつのまにか「実際に裏切って機械化してしまうバージョンの脚本が存在した」という、より具体的で過激な物語に育っていった。

決定打になったのは、「アニメ封印エピソード大全」的なまとめサイトの存在だ。断片的な噂を一本のエピソードとして再構成し、タイトルまで与えて記事化してしまった。そうなるともう、あたかも昔から確立された都市伝説であるかのような体裁が完成する。原典となった掲示板の書き込みやレス番号を今から追跡するのはほぼ不可能なくらい、拡散と改変が進んでいる。

これ自体が、ネットロアという生き物の「口伝性」をよく表している。

一つの噂のはずが、実はいくつもバージョンがある

面白いのは、この都市伝説が一種類じゃないということだ。

もっとも古典的なのは、さっき紹介した「機械化改造版」。メーテルが鉄郎を騙し討ちのように機械化手術台へ送り込む結末である。

これとは別に、もっと心理的な恐怖に寄せた「記憶操作版」というのもある。こちらでは、メーテルは鉄郎を機械化するんじゃなく、彼の記憶そのものを消して、機械化母星で「メーテルの新しい従者」として一から育て直そうとしていた、という設定になる。

さらに陰惨な派生として「本当の母親殺し版」というのも一部のオカルト系まとめで見かける。鉄郎の実の母親を殺したのは、実はプロメシュームの命を受けたメーテルの過去の任務だった。鉄郎はそれを知らないまま、母を殺した相手と一緒に旅を続けていた――という復讐劇の要素まで足されている。

もう一つ、興味深いのが「メーテル自己犠牲版」だ。これはもう都市伝説というより、ファンの二次創作に近い。メーテルは鉄郎を裏切るふりをして機械化母星の内部に潜入し、実際には母プロメシュームを止めるための偽装工作をしていた、という「実は裏切っていなかった」というどんでん返しが入る。実はこれ、本編の実際の展開とかなり近い構造を持っている。だからこそ妙に説得力があるんだよな。

「あの日、教室がざわついた」――語られてきた体験談

1980年代にリアルタイムで見ていたという人が、後年の懐古スレッドでこう語っている。「小学生の頃、メーテルがお母様と呼ぶシーンを見て、教室中がざわついたのを覚えている。次の日、クラスの誰かが『実は鉄郎、最後に機械にされて殺されるらしいぞ』と言い出して、それが本当かどうかみんなで大騒ぎになった。結局そんなことは起きなかったんだけど、あの時のクラス中の緊張感は今でも忘れられない」

90年代に古書店でアニメ雑誌のバックナンバーを漁っていたという人の話も面白い。「当時のファンクラブ会報のコピーだと称するものを一度見せてもらったことがある。中には確かに『メーテル、裏切りの真相』というタイトルの創作小説のようなものが載っていたが、これは明らかにファンによる二次創作で、公式のものではなかった。それでも当時は本気で信じている人が周りに何人もいた」

そして決定的なのが、松本零士のサイン会に参加したという人の証言だ。「勇気を出して『メーテルが裏切る話は本当にあったんですか』と聞いたら、松本先生は笑いながら『そんな話は描いたことがないよ、メーテルは最後まで鉄郎の味方だ』とだけ答えてくれた」。これは都市伝説をはっきり否定する数少ない一次証言として、ファンの間で何度も引用されてきた話だ。

掲示板や考察界隈では、こう語られてきた

5ちゃんねるの漫画版・アニメ版スレッドでは、この噂はしばしば「本編の設定を知っていればあり得ない話」と一蹴される。その一方で、「本編があまりにその一歩手前まで踏み込んでいたからこそ、これほど説得力のある都市伝説になったんだろう」という、わりと分析的な反応も根強く残っている。

考察系のブログやまとめサイトがよく引き合いに出すのが、機械化母星の設定そのものの陰惨さだ。生身の身体が抜け殻として無数に打ち捨てられている、という原作の描写である。「あの設定がある以上、裏切りエピソードがあってもおかしくないと思ってしまう」という感想が、繰り返し書き込まれてきた。

ニコニコ動画やYouTubeの考察系コンテンツでも、メーテルの正体をめぐる考察は定番中の定番で、そこから派生してこの都市伝説が紹介されることも多い。ただ、どの動画も最終的な結論は同じだ。「公式にはそのような結末は存在しない」。

この不穏さ、どこから来ているのか

この都市伝説の背景には、松本零士作品群にずっと流れている「機械化人間」というモチーフの根深さがある。『銀河鉄道999』の機械化母星は、身体を機械に置き換えれば永遠の命が手に入る代わりに、感情や人間性を失っていくという設定だ。当時としてはかなり哲学的で、同時にかなり陰惨なテーマを、子供向けアニメの真ん中に据えていた。これ自体が異例の作品だったと言っていい。

続編にあたる劇場版『さよなら銀河鉄道999』(1981年)でも、メーテル自身が機械化母星の新たな女王として君臨するかどうかという重い決断を迫られる展開が描かれる。これもまた、「メーテルはいつか鉄郎の敵になるのでは」という都市伝説的な想像力を刺激する、れっきとした実在の要素だ。

さらに、松本零士のもう一つの代表作『宇宙戦艦ヤマト』や『キャプテンハーロック』との世界観のつながりも見逃せない。松本ワールド全体には、「壮大で、同時にどこか喪失と裏切りに満ちた宇宙観」が一貫して流れている。これが『999』単体の都市伝説にも通底する不穏さの、隠れた源泉になっているんだと思う。

つまりこの噂は、完全な作り話というより、本編がもともと持っていた緊張感と陰影が、ファンの想像力を通してもう一段階濃く仕上げられたものだ。メーテルは最後まで鉄郎を裏切らなかった。だけど、あの機械化母星の設定が生々しく残っている限り、この手の噂はきっとこれからも語り継がれていくんだろう。

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